[ 編集者:産業研究所    2020年7月30日 更新 ]

2020年1月27日-28日  EU合宿 「ヨーロッパの都市部と地方の近代化-ドイツとフィンランドの事例-」

テーマ: ヨーロッパの地方と都市部の活性化                 
実施日: 2020年1月27日(月)-28日(火)
場 所: 関西学院千刈キャンプ
引率者: ホルガー・ブングシェ国際学部教授、
             アンナ・シュラーデ産業研究所准教授
参加者: 11名

                   

<1日目>
講 義1 (13:10-14:10): アンナ・シュラーデ准教授 - 「地域活性化:ヨーロッパと日本の比較」
 この講義ではまず、世界の主要先進国における人口動態の傾向を幅広く比較してから、今世紀末までに予測されている日本の人口動態の変化について焦点をあてました。日本のほとんどすべての地域、町や都市で深刻な人口減少が起こると予想されるため、人口減少対策となる持続可能な社会基盤やサービスの構築が国や県など自治体の課題となっています。ヨーロッパと丹波篠山地域の事例から読み取れることは、人口の少ない地域でも、優れた対策(その多くはシンプルなものですが)をとることによって持続可能な質の高いサービスの提供が可能であるということです。  

                        

講 義2 (16:30-17:30): ホルガー・ブングシェ教授 - 「再生可能エネルギー:新しい地域産業発展の可能性」
 はじめに、「ドイツのエネルギー転換」についての紹介がありました。これは、第一ステップとして2021年までに原子力発電から撤退すること、第二ステップとして化石燃料、特に石炭からのエネルギー生産を2035年頃までに終わらせる政策です。続いて、この「ドイツのエネルギー転換」やEUの気候変動対策の背景にあるものと対照する形で、ドイツの“リビングラボ”というコンセプトの紹介がありました。これは、実際の生活の中で経済的、社会的な実験をするという比較的新しい手法です。
この講義では、特に、リビングラボ 「再生エネルギー実験所 アンハルト」 とその取り組みについて詳細な説明がありました。化石燃料から再生可能エネルギーへの転換をするだけでなく、地域でのエネルギー生産の価値創造・価値連鎖の実現を目指すもので、1990年代からの深刻な社会的・経済的構造変化に見舞われた地域の経済と産業活動を活性化させる波及効果を生み出す可能性があります。

               

<2日目>
講 義3 (9:10-10:10): ホルガー・ブングシェ教授 - 「欧州文化首都 - 地域発展とヨーロッパ統合を促進させる独特なプログラム」
 地域発展のためにEUが導入している様々な対策の概説の後、1985年に始まったプログラム「欧州文化首都」についての紹介がありました。今ではEUで最も人気のあるプログラムの一つとなったこのプログラムでは、毎年EU加盟国の2ヵ国から多くの都市や町が立候補して「欧州文化首都」の称号を競い合います。5年間の申請手続き期間を経て、「欧州文化首都」の称号が与えられます。講義の最後には、2025年の「欧州文化首都」に最近申請したドイツの都市、ニュルンベルクの誘致提案書の紹介がありました。
この講義の後、学生たちはグループワークの結果を15分ずつ発表しました。

 2つの講義に加え、地域発展とヨーロッパの統合を促す独特なEUプログラム 「欧州文化首都」 に触れた3つ目の講義の概要を基に、学生たちは、3つのグループに分かれてグループワークを行いました。1つ目のグループは、地域経済と産業の発展について、2つ目のグループは、社会政策を軸に地域をより魅力的にするにはどうしたらよいかについて、3つ目のグループは地域を発展させるための文化活動や観光業について、議論しました。

オプショナルツアー (12:30-):
【訪問先1】 丹波篠山市役所を訪問、丹波篠山の地域開発についてプレゼンテーション
 丹波篠山市役所創造都市課のご担当者から30分間のプレゼンテーションがあり、丹波篠山市の人口と経済発展の詳細データ、直面している課題、持続可能な社会的・経済的地域発展を実現するために創造都市課が取り組んでいる様々な対策、等について説明いただきました。プレゼンテーション後に、学生は質問をしたり、合宿の中で議論したことを共有することができました。

【訪問先2】 市民団体 「食の未来塾(未来の食を考える学習グループ)」 を訪問
 この団体は、約40名のメンバーから成り、その多くは、丹波篠山市に(I、J、Uターンなどで)戻ってきた人々で、地元の健康食品の生産、販売をされています。メンバーの方々7名に、どのようなきっかけで丹波篠山市に移り住んだのか、そして、特にどのような製品を生産しているのか、についてお話いただきました。団体の目的は、主に地元の農産物を使った伝統的な健康食品を丹波篠山ブランドとして確立していくことです。学生たちは、1時間以上にわたり、メンバーの方々が抱える様々な困難や食品販売を成功させるために乗り越えなければならないことなどについて学びました。これはシニアメンバーの多くとって、年金以外の小さな収入源となっています。
 

ポスター EU合宿 「ヨーロッパの都市部と地方の近代化-ドイツとフィンランドの事例-」