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2025.08.28

田中裕久・工学部教授の福島第一廃炉安全に資する触媒研究論文がInternational Journal of Hydrogen Energyに掲載されました

田中裕久・工学部教授の福島第一廃炉安全に資する触媒研究論文がInternational Journal of Hydrogen Energy(Volume 141)に掲載されました。この研究論文は、日本原子力研究開発機構、ダイハツ工業、ドイツForschungszentrum Jülich GmbH (FZJ)、と、田中裕久研究室が協力して取り組んできた共同研究成果となります。
福島第一原子力発電所(1F)では、地震とそれに続く津波により原子炉の冷却が不十分となり、水素爆発という大惨事に至りました。放射性廃棄物の除染や汚染水の拡散防止など、災害後処理は国家的な課題として継続して取り組んできました。残された大きな課題は、汚染水と高濃度放射性燃料デブリの後処理です。汚染水は多核種除去設備(ALPS)によって複数の放射性核種が除去されていますが、トリチウムを含む水は2023年8月から処理され、海洋放出されています。この汚染水は、事故が発生した原子炉の底に残る燃料デブリに雨水や地下水が接触することで、継続的に発生しています。
汚染水を増やさないための根本的な解決策として、原子炉から燃料デブリを取り出すことが不可欠です。福島第一原子力発電所には約880トンの燃料デブリが存在すると推定されており、この燃料デブリ全体を70~100kgずつに分割し、約1万個の燃料デブリ収納容器に密封し、福島第一原子力発電所敷地内に30~50年間保管する計画が発表されています。
ここでの大きな課題は、燃料デブリに含まれる高線量放射線量によって水が分解し、収納容器内で水素と酸素が発生することです。東京電力ホールディングス(TEPCO)の試算によると、容器内で発生する水素量は最大で1.1 L·h-1と推定されています。本論文は、密閉容器内で生成される水素の安全性に関する研究の概要を示し、水素を触媒反応により水に戻す「受動的水素再結合触媒(PAR)」の利点と限界、そして効果的な使用方法に関する包括的なガイドラインを提供するものです。
 
雑誌名:International Journal of Hydrogen Energy
論文タイトル:A proposal of hydrogen safety technology for decommissioning of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station
著者:Hirohisa Tanaka, Sogo Iwata, Tadasuke Yamamoto, Tomohito Nakayama, Shinya Uegaki, Tomoaki Kita, Atsuhiko Terada, Daiju Matsumura, Masashi Taniguchi, Ernst-Arndt Reinecke
DOI:https://doi.org/10.1016/j.ijhydene.2025.03.053
 
 
【資料】
A transparent catalytic reactor simulating a fuel debris storage canister

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工学部 教授
田中 裕久さん

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