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2025.11.29

岡田克彦・経営戦略研究科教授が「大規模言語モデルで有価証券報告書を分析し、株式市場の情報効率性を検証した研究」で『PeerJ Computer Science誌』に掲載されました

岡田克彦・経営戦略研究科教授が大規模言語モデルを用いた日本企業の有価証券報告書のセンチメント分析により、AIが将来の株式リターンを予測できるシグナルを抽出可能であることを発見し、その研究成果が2025年11月18日、『PeerJ Computer Science』に掲載されました。

岡田教授の研究は、博士後期課程の中筋萌氏、商学部の月岡靖智教授、大阪産業大学工学部の山﨑高広教授との共同研究で、ChatGPT、Claude、Geminiといった最先端の大規模言語モデル(LLM)を用いて、東京証券取引所上場企業の有価証券報告書(2014年〜2023年、11,135社・年、7,000万語超)から経営者のセンチメント(心理的傾向)を抽出し、将来の株式リターンとの関係を分析したものです。従来の辞書ベースの手法ではセンチメントと株式リターンの間に有意な関係が見られなかったのに対し、LLMが抽出したセンチメントは将来リターンと有意な負の相関を示しました。これは、市場が楽観的な開示情報に過剰反応し、後に修正されることを示唆しており、公開情報がすべて株価に織り込まれているとする効率的市場仮説への挑戦となります。

この研究成果は、投資判断や企業分析におけるAI活用の可能性を示すものであり、今後は他国市場への適用可能性の検証や、AI普及に伴う予測シグナルの変化についての研究が期待されます。

 

雑誌名:『PeerJ Computer Science』
論文タイトル:From words to returns: sentiment analysis of Japanese 10-K reports using advanced large language models
著者:Katsuhiko Okada, Moe Nakasuji, Yasutomo Tsukioka, Takahiro Yamasaki
DOI:10.7717/peerj-cs.3349

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経営戦略研究科 教授
岡田 克彦さん

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