2025.07.02.
米国協定大学と国際シンポジウム「日米関係と新しい国際秩序の行方」を共催
6月13日(金)に、西宮上ケ原キャンパスの関西学院会館にて、南メソジスト大学タワーセンターと国際シンポジウム「日米関係と新しい国際秩序の行方」を共催しました。会場には100名以上が来場し、オンラインからは約60名が参加しました。
テキサス州ダラス市にある南メソジスト大学(以下、SMU)は、1979年から協定を締結するなど本学にとって最も古い海外協定校です。交換留学生の受入・派遣のほか、短期プログラム「KGU Summer School」を共同運営しています。
日米関税交渉の節目で開催された本シンポジウムでは、第一次トランプ政権における日米両国交渉代表であったマイケル・ビーマン氏(南メソジスト大学卒業生・1987年度本学交換学生・元米国通商代表補)と渋谷 和久氏(本学総合政策学部教授・元内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官)を含む両国・両大学の各分野の専門家が登壇し、「安全保障」「国際秩序と日米関係」「経済問題」「ロシア・ウクライナ戦争」の4つのテーマについて、基調講演とパネル・ディスカッションを行いました。
パネル・ディスカッションの第1部では、神余 隆博氏(本学学長特別顧問、本学院前理事)がモデレータを務め、ダイアナ・ニュートン氏(SMUタワーセンター上級研究員)、ジェイ・ヤング氏(SMUタワーセンターColin Powell Teaching Fellow、ダラス外交評議会会長)、井口 治夫氏(本学国際学部教授)が登壇し、外交・アメリカ国内政策・軍事政策の各面から議論し、「短期的にも長期的にも、日米同盟の強化が重要である」ことを再確認しました。第2部では、ジェームズ・ホリフィールド氏(SMU タワーセンター所長)、カー・ゼン氏(マサチューセッツ大学アマースト校 政治学部教授)および渋谷 和久氏がパネリストとして登壇し、マティアス・へニングス氏(本学国際教育・協力センター准教授)がモデレータを務めました。「新時代の日米経済関係」をテーマに、社会学・経済学などのアプローチから議論し、「日本が国際社会のルールの維持と再構築において果たす役割は重要である」という結論に至りました。
左から井口 治夫氏、ダイアナ・ニュートン氏、ジェイ・ヤング氏
左からジェームズ・ホリフィールド氏、カー・ゼン氏、渋谷 和久氏
マイケル・ビーマン氏
基調講演の第1部では、マイケル・ビーマン氏が「新たな国際秩序と日米関係の未来」をテーマに講演を行いました。ビーマン氏は、オバマ、トランプ、バイデンの3政権で4人の通商代表を補佐した経験を持ち、第一次トランプ政権では日米関税交渉を担当していました。講演の冒頭では、ビーマン氏が1987年に交換学生として本学で学んだ時代の思い出を語りました。そのうえで、約40年の日米通商の歴史を振り返り、「日米の長きにわたる深い関係により、日本は他国よりはるかに日米関係と世界情勢の改善に貢献できる」と語りました。講演後には、参加者から多くの質問が寄せられました。「日米貿易関係を改善するために日本は何をすればよいのか」という質問に対し、「政府間の関係性だけではなく、これまで培ってきた地域間の関係と、両国の一人ひとりの絆をより大切にすべき」とメッセージを伝えました。
左から武内 宏樹氏、国末 憲人氏、ディスカッサントを務めたダニエル・オロフスキー氏
基調講演の第2部では、国末 憲人氏(東京大学 特任教授、元朝日新聞ヨーロッパ総局長)が、自身が記者時代に現地で見た光景から、ウクライナ戦争について講演を行いました。国末氏はこれまで数十回にわたりウクライナを訪問し、ウクライナ戦争勃発後にもロシアに占領されていた11都市を巡り、現地の様子および人々の取材を行いました。講演資料では、貴重な写真や被害を受けた現地の人々のエピソードを多数紹介し、戦争の残酷さを参加者に強く印象付けました。国末氏は、「ロシアによるウクライナ侵攻は、人道主義的な災難であり、道徳と価値観の転覆である」と指摘したうえ、「ウクライナの人々が必要なのはただの平和だけではなく、正義に基づいた平和だ」と語りました。
シンポジウムの最後に、武内 宏樹氏(SMUタワーセンター サン・アンド・スター日本・東アジアプログラム部長)が本シンポジウムの意義を再度強調したうえで、「世界はこれからも大きく変わっていくからこそ、自身が慣れた場所を出て、世界に飛び出して学ぶことが大事」と若い世代へのメッセージを送りました。多くの講演とディスカッションが行われた本シンポジウムでは、登壇者のバックグラウンドや視点は異なるものの、「日米関係の強化と新しい国際秩序の構築において、日本が担うべき役割が大事」という点において意見が一致しました。本シンポジウムは、登壇者および参加者にとって、戦後からの歴史を振り返り、現在の世界情勢を再確認したうえで、新たな時代におけるより良い日米関係と国際秩序を展望する有意義な機会となりました。