K.G.

超小型衛星「VERTECS」の軌道投入・運用地上局との通信に成功
~可視光波長で宇宙背景放射を観測し、天体形成史の解明に挑むVERTECSの挑戦~

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国立大学法人九州工業大学(以下、九州工業大学)、関西学院大学、学校法人五島育英会東京都市大学(以下、東京都市大学)ら研究チームは、宇宙可視光背景放射観測のための衛星「Visible Extragalactic background RadiaTion Exploration by CubeSat(VERTECS:ヴァーテックス)」を開発してきました。VERTECSは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)新事業促進部が実施する「産学官による輸送・超小型衛星ミッション拡充プログラム(JAXA-SMASH)」の超小型衛星ミッション公募#1において衛星開発フェーズとして採択されたものです。

本衛星は、6Uサイズ(100mm x 226mm x 340mm)の超小型衛星に可視光観測用望遠鏡を搭載し、宇宙初期から現在までに放射された光の総量である「宇宙背景放射」を観測することで、天体形成史の解明に挑むものです。

このたび、2026年6月12日9時53分59秒(日本標準時、24時間表記)に種子島宇宙センターからH3ロケット6号機(30形態試験機)の打上げが行われ、本衛星は所定の軌道に無事投入され、その後、運用地上局との通信に成功しました。現在、衛星機能を順次確認しているところです。今後は、初期運用(クリティカルフェーズ)を経て、観測ミッションの実施を進め、科学成果の創出を進めてまいります。

 

超小型衛星「VERTECS」
「VERTECS」 ロゴマーク
九州工業大学での初期運用確認の様子
参画機関

本プロジェクトは、以下の産学官連携により実施します。

JAXA-SMASH
参画機関
九州工業大学 / JAXA宇宙科学研究所(ISAS)/ 関西学院大学 / 東京都市大学 / 金沢大学 / 東京科学大学 / 福井大学 / 株式会社コシナ / セーレン株式会社 / 株式会社イメージ・テック
国際共同研究機関 國立清華大学(台湾)/ 國立中興大学(台湾)
各機関代表者からのコメント
1.九州工業大学(代表機関)

代表者名:佐野 圭(大学院工学研究院宇宙システム工学研究系 助教)
無事に衛星の打上げ、軌道投入、地上との通信が確認でき、改めて関係の皆様のご尽力に感謝いたします。VERTECSは、九州工業大学では初となる天文衛星です。今後、継続して天文観測を行い、観測データ解析を進めていく予定です。引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

2.関西学院大学

代表者名:松浦 周二(理学部 物理・宇宙学科 教授)
本学では科学ミッションを達成するための観測装置の開発を主導しました。今後は初期運用を経て、観測装置の試験へと続きます。学生たちと心を込めて仕上げた装置が続々と観測画像を送り出し、これまでにない広さで4色の天空地図を描くことを想像すると、心が躍ります。

3.東京都市大学

代表者名:中川 貴雄(総合研究所 特任教授)
VERTECSからの観測データを目にすることを心待ちにしています。本学のメンバーは、VERTECS衛星の構想段階から参加し、衛星開発の様々な局面で大きな貢献をしてきました。さらに、今後、衛星初期運用活動をリードするとともに、観測データの多くを、本学・世田谷キャンパスに設置した専用アンテナで受信する予定です。

(参考)

◇VERTECSについて
https://vertecs-project.com/ja/home-jp/
◇九州工業大学で超小型衛星「VERTECS」お披露目会を開催(2026.5.14開催)
https://www.kyutech.ac.jp/whats-new/press/entry-12116.html

宇宙可視光背景放射観測のための衛星プロジェクト「VERTECS」概要

Visible Extragalactic background RadiaTion Exploration by CubeSatの略称から “VERTECS” と名付けられた本プロジェクトは、宇宙可視光背景放射観測を目的とする天文衛星プロジェクトです。JAXA新事業促進部が実施する「産学官による輸送・超小型衛星ミッション拡充プログラム(JAXA-SMASH)」の初回案件として採択され、2022年度から開発を行っています。本プロジェクトでは、6Uサイズ(100mm x 226mm x 340mm)の超小型衛星に、可視光観測用の望遠鏡を搭載し、宇宙初期から現在までに放射された光の総計である宇宙背景放射を観測することで、天体形成史の解明を目指します。

本衛星の開発は、総勢80名を超える研究者・学生が企業と共同で行いました。本プロジェクトは、JAXA-SMASHにおいて、九州工業大学を代表機関として、JAXA宇宙科学研究所(ISAS)、関西学院大学、東京都市大学、金沢大学、東京科学大学、福井大学、株式会社コシナ、セーレン株式会社、株式会社イメージ・テックが参画しています。また、国際共同研究として、九州工業大学が台湾の國立清華大学および國立中興大学と連携し、地上ソフトウェア等の研究開発を実施しています。本衛星の望遠鏡観測装置は、宇宙可視光背景放射の観測に特化した広視野光学系と低暗電流の検出器部分から構成されています。バス部は、九州工業大学が開発してきた超小型衛星バスに基づくオンボードコンピュータに加えて、展開太陽電池パドルを含む電源系に、統合型姿勢制御ユニットおよび高速通信機を搭載し、本衛星の天文観測に要求される高精度な姿勢制御と、大容量観測画像データの地上へのダウンリンクを実現します。完成した超小型衛星は、JAXAがVERTECS向けに調達したSpace BD株式会社による「H3ロケット相乗り打上げサービス」により、H3ロケット6号機(30形態試験機)に搭載されて打上げられ、地球を回る軌道に投入されました。

本プロジェクトでは、宇宙可視光背景放射に関する科学成果を創出するとともに、本プロジェクトで得られた知識と経験が、今後の天文学や宇宙科学などの先端的な超小型衛星ミッションにつながることを望んでいます。さらに、本プロジェクトで得られる成果の将来的な社会実装・事業化を見据え、九州工業大学発のベンチャー企業としてキックスペーステクノロジーズ株式会社を設立しており、超小型衛星開発に基づく事業化の実践例となることを期待しています。

目的
  • 可視光における宇宙背景放射の観測による天体形成史の解明
  • 最先端天文ミッションの実施による理学・工学の両面に通じた人材の育成
  • VERTECSの高精度姿勢制御バスに基づく超小型衛星ワンストップサービスの事業化
    (キックスペーステクノロジーズ株式会社)
  • VERTECSの可視光望遠鏡開発に基づくCubeSat用地球観測望遠鏡の事業化
    (株式会社コシナ)
プロジェクト名 Visible Extragalactic background RadiaTion Exploration by CubeSat (略称 “VERTECS”)
参画機関 JAXA-SMASH 参画機関 1. 九州工業大学 2. JAXA宇宙科学研究所(ISAS) 3. 関西学院大学 4. 東京都市大学 5. 金沢大学 6. 東京科学大学 7. 福井大学 8. 株式会社コシナ 9. セーレン株式会社 10. 株式会社イメージ・テック
国際共同研究機関 1. 國立清華大学(台湾) 2. 國立中興大学(台湾)
打上げ 時 間 2026年6月12日9時53分59秒(日本標準時、24時間表記)
ロケット H3ロケット6号機(30形態試験機)
衛星仕様 質量 [kg] 8.4
寸法 [mm] 100 x 226 x 340
衛星外観  
軌道 太陽同期軌道
ミッション概要 VERTECSの観測対象である宇宙背景放射は、宇宙初期から現在までに放出されたあらゆる放射の足し合わせであり、天体形成史を解明するために重要な観測量です。これまでのVERTECS以前の観測によって、近赤外線の宇宙背景放射は既知の銀河の積算光より数倍も明るく、未知の天体の存在が示唆されています。その天体の候補として、原始ブラックホール等の宇宙初期天体や、近傍宇宙の銀河ハロー浮遊星モデルなどが考案されています。これらの天体の放射スペクトルは可視光波長で大きく異なることが予想されています。そこでVERTECSでは、可視光での多波長観測を実施し、宇宙背景放射の超過成分の起源解明を目指します。
衛星システム概要 ミッション部 ・望遠鏡 - 焦点距離70mm、F/2レンズ光学系 - 4波長バンド(450nm、550nm、650nm、750nm)、 各バンド視野3度×3度 ・検出器 - 900万画素CMOSセンサー - 画像処理FPGA、制御用CPU
バス部 ・オンボードコンピュータ ・電源系 - バッテリー(リチウムイオン電池) - 展開太陽電池パドル ・通信系 - Sバンド受信機 - Sバンド送信機 - Xバンド送信機 ・姿勢制御系 - 統合型姿勢制御ユニット