K.G.
2026.05.22 [ニュース]

公開フォーラム「ヴォーリズが結ぶ、滋賀と関学の架け橋―滋賀のヴォーリズ建築遺産 保存の現場を語る」を開催

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2026年5月16日、西宮上ケ原キャンパスにおいて、公開フォーラム「ヴォーリズが結ぶ、滋賀と関学の架け橋―滋賀のヴォーリズ建築遺産 保存の現場を語る」を開催しました。フォーラムでは滋賀県内で建築保存に携わる実践者3名による講演と、本学研究者を加えての対談が行われ、ヴォーリズファンや卒業生、地域の方々など約130名が参加しました。

「稚木の会」代表の土山道夫氏は旧水口図書館の歴史と活用について紹介しました。旧水口図書館は1928年に竣工し、1970年まで水口町立図書館として使用されました。2001年に保存活用のために国の登録文化財建造物として登録され、その後、当時の材料やデザインを生かしながら耐震構造に補強され、2004年より一般公開されています。稚木の会は、設計者のヴォーリズ氏、寄贈者の井上好三郎氏、児童文学者の巌谷小波氏の偉業に敬意を表するとともに、一般利用者の施設活用を促進するためにレコードコンサートやブックカフェなどの様々なイベントを開催しています。

続いて、「ヴォーリズ今津郵便局の会」顧問の大石義一氏が登壇しました。今津郵便局は1934年に建築され、「地元の命」の郵便局として1978年まで稼働しました。その後は倉庫としての使用にとどまり老朽化が進む一方でしたが、2013年に地元住民のボランティアによる清掃・補修作業が行われました。2014年に大石氏らが「ヴォーリズ今津郵便局の会」を発足させると、同施設のある「ヴォーリズ通り」から街のにぎわいづくりを創出しようと、これまで様々な企画を実施しました。現在は活動の中心を次世代へとバトンタッチしており、大石氏は「カフェルームなどの若い世代のアイデアにより、新たな人の交流が始まっている」と話しました。

講演の最後にはNPO法人「ヴォーリズ遺産を守る市民の会」代表の辻友子氏が登壇し、ヴォーリズ記念病院旧本館(ツッカーハウス)保存に携わった人々の奮闘を紹介しました。ツッカーハウスは当時不治の病だった結核を撲滅したいというヴォーリズの想いのもと、結核療養所として1918年に設立されました。療養所としての役割を終えて老朽化が進んでいたことから保存は難しいとの判断があり、2005年に取り壊しの決定がなされました。これを受け、ヴォーリズ学園の教職員、卒業生が主体となり「ツッカーハウス・大王松を守る会」を発足すると、瓦洗いなどの活動がスタート。辻氏は「施工会社などの協力者がヴォーリズの建築を学び研究しながら修復を行ってくれた」と、保存・修復活動に携わった人々への感謝を述べました。

3名による講演ののち、関西学院大学ヴォーリズ研究センター長の角野幸博・名誉教授も交えた対談が行われました。
角野名誉教授がヴォーリズ建築の魅力についてあらためて質問すると、大石氏はヴォーリズ建築の通風と採光の設計に触れ、「そこで過ごす人の心と体の健康を大切にする設計思想が最大の魅力」と答えました。また、建物を次世代へ継承するためには「定期的にメンテナンスを行い、人が建物と関わりを持ち続けることが大切」と辻氏がコメントすると、角野名誉教授は、旧水口図書館が閉鎖から56年が経過し、当初の目的での使用期間よりも長くなっていることを指摘。「建物の価値はもともとの用途で決まるのではない。むしろ、それからの価値を積み重ねていけるかが重要」と話しました。
建物を未来へ継承する意義を語り合い、フォーラムは盛況のうちに終了しました。