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藤井美和・人間福祉学部教授による講演会「生きる意味を問いなおす ―死生学の展開―」を開催

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2026年3月14日、西宮上ケ原キャンパスの関西学院会館にて、講演会「生きる意味を問いなおす ―死生学の展開―」を開催しました。
藤井美和・人間福祉学部教授は、死生学の世界的拠点であるAssociation for Death Education and Counseling(ADEC)から死生学の発展に顕著な業績を残した教育者に授与される学術教育者賞(Academic Educator Award)を日本人として初めて受賞。今回の講演はこれを記念したもので、会場には約300名が参加しました。

前半の講演会では、技術の進歩が死や悲嘆を遠ざけ、その結果、生きる意味に向き合う機会を放棄している現状や、生きる意味が見出せない根源的痛み(スピリチュアルペイン)は、「ありのまま」にこそ意味があるという価値の転換が必要であり、それは関わる人にも求められるということを、自身のエピソードとボストンでの研究を交えて説明しました。最後に、社会の価値観はその構成員である私たちが変わることでしか変化しないという考えに立って長年行ってきた死生学教育について、学生の価値観・死生観が受講後どのように変化したかを紹介しました。参加者は真剣なまなざしで時折メモを取りながら聴講していました。

後半のパネル・ディスカッションでは藤井ゼミの卒業生である宮﨑敦子氏(居宅介護支援事業所介護支援専門員)、長野知里氏(生命保険会社人材育成トレーナー)、安井優子氏(上智大学総合人間科学部特任助教)が登壇し、藤井教授との出会いと当時の学びが今どのように生きているのかを語りました。
宮崎氏は「ケアマネジャーという仕事柄、人生の終末期に関わらせていただくことが多い。そういった中で、当時の教えが現在の経験と重なり、実感として自分に蓄積している。」と話し、安井氏は「以前は『死』ですべてが終了するという価値観だったが、藤井先生から死生学を学んで、死んでもなお、亡き人との関係性はつながっている、目に見える世界だけが全てではないと教えられた。」と語りました。
長野氏は、「これまでの人生を振り返り困難に直面した時に立ち向かう種を藤井先生の死生学からもらった。今後も人生の岐路に立った時に振り返って自分の生き方を考える指針にしたい。」と伝えました。

最後に藤井教授は、「生きることは獲得していくことであり、自分を完全なものにしていくことという考え方が強いが、そうではないように思う。獲得することが人生のすべてではなく、手放すことで見えてくるものがある。そういったものの見方がこの時代には求められていく。」と締めくくりました。

藤井美和・人間福祉学部教授より今後の学術的展望

終末期ケア、自死、安楽死、自然災害、虐待、いじめ、トラウマなど、死と悲嘆に関わる事象は私たちの周りに溢れています。「いのち」の在り方は一つの学問体系だけで議論することはできません。死生学は学際学問。人間理解には、哲学、宗教、社会科学を含めた学際的なアプローチが必要です。研究者が自身の学問体系に固執せず、開かれた視野をもって議論し、それを実践に還元していくことが求められるでしょう。Harvard Universityの The Human Flourishing Programのような学際的研究基盤が構築されていくことの必要性を感じています。