浦上千藍紗・生命環境学部 環境応用化学科 専任講師が日本カロテノイド研究会で「奨励賞」を受賞
浦上千藍紗専任講師(生命環境学部 環境応用化学科 橋本秀樹研究室)が、2026年9月26日から9月27日にかけて京都大学で開催された第38回カロテノイド研究談話会において、「日本カロテノイド研究会 奨励賞」を受賞しました。
「日本カロテノイド研究会 奨励賞」は、日本カロテノイド研究会の活性化を目指す事業の一環として設けられた賞で、カロテノイドおよびレチノイドに関連する研究に取り組み、将来の発展が期待される若手研究者個人に授与されるものです。
受賞した研究の概要は以下のとおりです。
【タイトル】
カロテノイドの構造・電子状態と光機能の相関に関する分光学的研究
【著者】
浦上 千藍紗
【概要】
本研究の第一の特色は、カロテノイドの分子構造と周辺環境との相互作用を、分光学に立脚して精密に読み解く方法論を切り拓いた点にある。共鳴ラマン顕微分光法を用いて、生体組織におけるカロテノイドの浸透挙動を非侵襲的に追跡し、その動態を世界に先駆けて定量的に明らかにした。さらに、ラマンスペクトルに内包される分子構造および局所環境の情報を確率モデルによって解析し、定常吸収スペクトルを統一的に再現する手法を確立した。これは、カロテノイドと溶媒・タンパク質環境との相互作用を分子レベルで評価する新たな分析概念を提示したものである。現在は、HPLCとラマン分光法を直結した分析系の構築を進め、複雑な構造異性体を分離と同時に同定するための新たな研究基盤へと発展させている。
第二の特色は、紅色光合成細菌の光合成色素タンパク質複合体を対象として、カロテノイドの構造と光機能の関係を、単なる相関の記述にとどめず、因果関係として直接検証した点にある。同氏は、カロテノイド欠損変異株を利用した再構成系を駆使し、複合体に組み込むカロテノイドの分子構造を制御可能な実験変数へと転換した。LH1複合体では、カロテノイドの分子内電荷移動状態を介することにより、天然系を凌駕する高効率の励起エネルギー移動が実現し得ることを示した。また、LH2複合体へのカロテノイドおよびBChlの段階的再構成を通して、従来十分に理解されていなかったBChlモノマーを介するエネルギー移動経路を明らかにした。加えて、LH1複合体における新たな光保護過程を見いだすとともに、反応中心に結合する15-cisカロテノイドの特異な立体構造の機能的意義にも迫り、カロテノイドが光合成機能を規定する分子機構の理解を大きく前進させた。
これら一連の成果は、カロテノイドを単なる補助色素として捉える従来の枠組みを超え、分子構造、電子状態、周辺環境および色素間相互作用を統合することによって、光捕集と光保護という一見相反する機能がいかに選択的かつ精緻に制御されるかを明らかにしたものである。基礎分光学、分析化学および光合成科学を横断する同氏の研究は、カロテノイド科学に新たな方法論と研究指針をもたらしており、学術的独創性と波及効果の双方において高く評価される。
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