芥川賞作家の松永 K 三蔵さんが学生にAI時代の生き方を語る
2026年7月3日、卒業生で芥川賞作家の松永 K 三蔵さんが、学生と教職員に向けた講演会を西宮上ケ原キャンパスの大学図書館で開催し、会場にはおよそ80人が集まりました。
大学図書館では、学生に本への興味を持ってもらうことを目的に「Library Seminar」を実施していて、今回は本学の文学部出身で、第 171 回芥川龍之介賞を『バリ山行』で受賞した作家の松永 K 三蔵さんが登壇しました。
「わからないままで生きること。」と題された講演会では、AIの進展により「答え」が容易に得られる現代において、純文学の意味や意義、そして「知性」とは何かについて、松永さんが自身の学生時代の体験などを踏まえて話しました。
松永さんは、内定がない状況で卒業した後、福祉や不動産関係の企業で働いていた経験を紹介し、「大変な時もあったが、いつかは小説のネタになると思うと、楽しんで過ごすことが出来た」と、昔からの夢であった“小説家”が自身を支えていたと話していました。
また、松永さんはAIへの考え方について、AIにメジャーリーガーになる確率を聞いた場合、“一般的に0.03%”という回答が出ることを例に挙げ、「これは、母数を“1”としているから出る数値です。仮に、大谷翔平選手がAIに聞いてとして、この答えが現実的でしょうか?」と会場に投げかけました。その上で、「AIに芥川賞を取る確率を聞くと、同じように低い。私は、低いから諦めるのではなく、書きたいから書いてきました。そういうデータは関係なく、自分は未知数です。基準値を“1”ではなく“変数”で考えることが重要ではないでしょうか」と、AIが当たり前に使われる時代における生き方を語りました。
続いて質疑応答が行われ、作家志望で台湾からの交換留学生である文学部1年生の学生から、「自分の知性と感性を磨くために、今からでも努力出来ることは何か?」という質問が出されました。これに対して松永さんは、「逆に本ばかり読まなくてもいい。体験すること、触れること、感じることが大事です。小説はあくまでも表現したいことの過程であり、文字にならないことに対して力点を置いてほしい。体験からくる感動があれば、言葉は自然に出てくると思います」とアドバイスを送っていました。
また、将来はエンタメ関係の仕事を志望している社会学部2年生の学生から、「いろんな悩みと正面から向き合う辛さを、どうやって作品に還元しているのか?」と聞かれた松永さんは、「悩みや辛さは、貴重なものなので大事にしてほしい。どうしても苦しい時は、自分のありのままの思いを手書きでノートに書いてみてください。誰にも見せないようにして、吐き出す、創作じゃない自分だけのものをつくる、そういうもので楽にはなる。そこに自分のオリジナリティが見つかる可能性がある」と話していました。