学生の大規模調査で「誰が公務員を志望するのか」を実証
― 性別・家庭環境・価値観が進路選択に与える影響を解明 ―
立命館大学(学長:仲谷 善雄)法学部の柳至教授、関西学院大学総合政策学部の久保慶明教授、筑波大学人文社会系の河合晃一准教授、大阪経済大学情報社会学部の秦正樹准教授らの研究グループは、複数大学の学生を対象とした大規模調査データを用いて、「誰が公務員を志望するのか」を実証的に分析しました。その結果、性別や親の職業といった社会経済的背景に加え、公に奉仕したいという価値観や安定志向が、公務員志望に関連していることが明らかになりました。本研究は、公務員志望者の減少が課題となる中、今後の人材確保に重要な示唆を与えるものです。
本件のポイント
- 複数大学の学生を対象とした大規模調査により、公務員志望の要因を網羅的に検証
- 女性、親が公務員、地方出身という属性をもつ学生が相対的に公務員を志望しやすいことを確認
- 公に奉仕したいという意欲や安定性志向が公務員志望度を高める一方、高収入志向は志望度を低下させることを実証
<研究成果の概要>
本研究は、2023年に実施した複数大学の学生を対象とする大規模意識調査を用いて、公務員志望を規定する要因を実証的に分析しました。性別や家庭環境に加え、公に奉仕したいという動機づけや職業観などの価値観が、公務員志望とどのように関係しているかを明らかにしています。本調査は、国家公務員総合職試験の合格者が多い大学を中心に、北海道から九州まで全国の学生を対象として実施された点に特徴があります。
<研究の背景>
近年、日本では国家・地方公務員ともに志望者数の減少が続いており、行政の担い手確保が大きな課題となっています。しかし、日本を対象として「誰が公務員を志望するのか」を体系的に検証した実証研究は限られており、特に複数大学を対象とした大規模調査データに基づく分析は行われてきませんでした。
<研究の内容>
本研究では、公務員志望の有無にかかわらず、進路未決定の大学生2,643名を対象とした大規模調査のデータを用い、最小二乗法による回帰分析により、公務員志望度に影響する要因を検証しました。分析の結果、女性、親の学歴が大学未満、親が公務員、非大都市圏出身の学生ほど公務員を志望しやすいことが分かりました。また、性格に関しては、パブリック・サービス・モチベーション※1が高い、職業の安定性を重視する、倫理観が高い、外向性や開放性※2が低いに当てはまる学生ほど公務員志望度が高い一方で、高収入を重視する学生は志望度が低下する傾向が確認されました。
<社会的な意義>
本研究は、公務員志望の背景にある家庭環境や価値観の違いを明らかにし、今後の人材確保のあり方に重要な示唆を与えるものです。親が公務員である学生ほど公務員を志望しやすいことから、公務員の仕事に関する情報が一部の層に偏っている可能性が示されており、より多様な学生に仕事内容や魅力を届ける取り組みが求められます。また、公務員の魅力は高収入よりも公共性や安定性によって支えられている一方、近年進められている若手国家公務員の処遇改善などを積極的に発信することも、幅広い人材の関心を高めるうえで有効です。さらに、公務員志望者には外向性や開放性が比較的低い傾向がみられましたが、実際の公務職場では多様な関係者との調整や柔軟な対応が求められています。本研究は、広報やインターンシップ等の取り組みを通じて、こうした仕事の実態を具体的に伝えることの重要性を示しています。
<研究者のコメント>
公務員志望者の減少が続く中で、どのような学生が公務に関心を持つのかをデータで示すことができました。本研究では、パネル調査を行っており、今後は誰が採用されて、誰が公務職場に定着するのかといった点も検証していく予定です。今回の結果が、より多様な人材が行政に参加するための広報や制度設計の検討材料になればと考えています。
<論文情報>
論文名 : 誰が公務員を志望するか:学生調査による属性と意識の検証
著 者 : 柳 至(立命館大学法学部)
久保 慶明(関西学院大学総合政策学部)
河合 晃一(筑波大学人文社会系)
秦 正樹(大阪経済大学情報社会学部)
発表雑誌: 日本労働研究雑誌
掲載日 : 2026年4月25日(土)
<用語説明>
※1 パブリック・サービス・モチベーション(PSM):公に奉仕したいという個人の動機づけ。
※2 外向性、開放性:外向性は人と積極的に関わろうとする性格、開放性は新しいことや変化を楽しめる性格を指します。