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「創発的研究支援事業」採択者特別鼎談
発見の先には何がある? 分からないから研究はおもしろい!

既存の枠に捉われない、自由で挑戦的な研究が、今改めて社会全体を動かす原動力として期待されています。そのような研究を国が長期(原則7年間)にわたって支援する「創発的研究支援事業」。現在、関西学院大学にはこのプロジェクトに採択されている若手研究者(大学教員)が3名在籍しています。世界最先端の研究に向き合う彼らは、何を見据え、どんな問いを追い続けているのか。「研究のおもしろさと関西学院大学の研究力」をひもとくクロストークをお届けします。

創発的研究支援事業について|JST(科学技術振興機構)

左から三宅 崇仁准教授・村上 慧教授・佐藤 浩平准教授

三宅 崇仁 生命環境学部 生命医科学科 准教授

専門は神経化学、温度生物学。現在はヒトに備わる生化学反応の制御に着目し、温度(体温)が生体にとって必要な理由の解明に挑んでいる。

三宅准教授のインタビュー記事はこちら

村上 慧 理学部 化学科 教授

専門は有機化学。分子の化学反応の中でも、特に医薬品や農薬に多く含まれる窒素原子に注目し、新しい性質をもつ分子の創出を試みている。

村上教授のインタビュー記事はこちら

佐藤 浩平 理学部 化学科 准教授

専門は超分子化学・生体関連化学。幅広い好奇心を武器に、さまざまなテーマの研究に挑戦中。目標は生物のように代謝したり増えたりする人工物を作り出すこと。

佐藤准教授のインタビュー記事はこちら

未知へのわくわくを胸に、創発的研究に挑む。

―「破壊的イノベーションを生み出す可能性を秘めている」と評価された研究課題が採択される創発的研究支援事業ですが、先生たちが採択されている研究テーマを教えてください。

三宅:
私の研究テーマは「脳の神経細胞がどのように働いているかを明らかにすること」です。
神経細胞の研究自体は100年以上の歴史がありますが、近年の技術革新によって、これまで見えなかった細胞の活動や機能が理解できるようになってきました。それでも精神疾患や神経変性疾患など、脳に関わる病気は今なお治療が難しい。そこで私は、未解明の神経細胞の活動を捉えたり、その機能を評価したりできる新しい仕組みをつくることから、この課題の解決に貢献しようとしています。
これまで研究対象として定番だったタンパク質だけでなく、核酸や細胞内環境にも注目することで、脳機能が破綻するメカニズムに迫りたいと考えています。

村上:
私は有機化学の立場から「世界で誰もつくったことのない分子の合成」に挑戦しています。
具体的には、窒素を含む分子で構成するアンモニウム塩――電気的にプラスの電荷を持つ分子群――の簡単な合成方法を確立しようとしています。
これまで世の中でつくられてきた有機分子の多くは電気的に中性で、私の研究テーマは過去に全く調べられていない物質群の創成です。研究が実現したとして、どんな機能を持つのか、何に使えるのかは正直まだ分かりません。でも、分からないからこそ挑戦する価値がある。未知の分子構造を生み出し、その性質を一つひとつ明らかにしていく研究です。

佐藤:
私も村上先生と同じく有機化学が専門ですが、研究の対象はごく身近なプラスチック=合成高分子です。プラスチックって身のまわりにあふれるほど便利に使われている一方、実はその精密な構造は分かっていません。現代の科学技術をもってしても、本当はどういう形をしているのかは解析できていないのです。そこで私は「プラスチックの真の構造を明らかにすること」に挑んでいます。もしこれを解明して、その情報をもとに新しいプラスチックを設計できれば、世の中の材料がすべて置き換わることだってあり得ると考えています。

三宅:
私は学生時代に有機化学を学んでいたので、お二人のお話は親しみが湧きます。ただ分子の「存在そのもの」に疑問を持つ視点は自分にはなかったので、おもしろいですね。

佐藤:
生き物の体も分子の集合体だと考えると、三宅先生の研究も有機化学に通じる部分がありますね。私からすると、脳の神経細胞というとても複雑な分子の相互作用を解き明かそうとするなんてすごいと思います。

―創発的研究支援事業への応募動機はどういったものだったのでしょうか。

村上:
「新しいものを追求してほしい」というコンセプトがはっきりしていて、研究者がやりたいことを自由に考えられる点に魅力を感じました。

三宅:
既存の枠にとらわれず、テーマ次第では新しい研究分野そのものを切り拓ける。そんな挑戦を後押ししてもらえる点で、研究者にとってすごくうれしい制度だと思います。

佐藤:
私は日頃は興味のおもむくままに研究テーマを設定しています。そんな中でこの創発的研究支援事業は「産業を一変し、社会に還元できるような研究とは何か」を改めて考えるよいきっかけになりました。採択されたことで研究者としての手応えも感じています。

―それぞれの研究成果が社会にどういった変革をもたらすか、そのゴールが見えていれば教えてください。

村上:
研究成果が社会へどのような姿で還元されるかは……未知数ですね。
創発的研究支援事業では「破壊的イノベーションにつながるシーズ(種)の創出を目指す」と示されているとおり、研究者は特定の未来を想定するというよりも“未来に広がる知の種”の創出を目標に研究を進めています。
私の研究だと、新たに合成するアンモニウム塩は「こういうふうに使えそうだな」と漠然とした予想はあるものの、逆に全く予想もつかなかったような用途を見つけ出したい思いも強い。そしてそれこそが創発的研究の醍醐味でしょう。
予想できないからこそおもしろい、そう感じながら研究を進めています。

三宅:
ゴールは見えない。私も同様ですし、それでいいんだと思います。
成果の先にどんな未来が待っているのか分からないという未知数の可能性こそが、研究を続ける原動力にもなりますよね。

佐藤:
想像できる時点で、もう既存の研究の延長線だとも言えますよね。
新しい物質をつくることの喜びって、世の中に今までなかった新しい現象を巻き起こすことなんです。発見の一つひとつは点であっても、いつか点が線になった時に予想もできない創造が生まれる。 そういった積み重ねが、某国民的アニメの猫型ロボットの『ひみつ道具』みたいなものにつながるのではないでしょうか。

設備も寛容さも、指導環境も。本気で研究に向き合える環境がここにある。

―研究者の目から見て、関西学院大学における研究環境の強みとはどういったところでしょうか。

三宅:
基本的な話で言えば、研究室に十分なスペースがあり、研究者も学生も無理なく作業ができるところですね。場所や設備の取り合いで気を使うといった話は耳にしたことがなく、実はこれってかなり恵まれた環境だと思います。
また個人的に感動したことを挙げれば、私は動物実験を伴う研究スタイルですが、着任当初は生命環境学部の中に同じスタイルの研究者は誰もいませんでした。抵抗がある方もいるのではないか……と少し心配したのですが、大学スタッフや周囲の研究者の方たちは私の研究に理解を示してくれた。新しい挑戦を支えてくれる文化があると感じます。

村上:
私は35歳で関西学院大学に来ましたが、決め手になったのは、第一線で活躍されてきた先生方が多く、若い世代にもチャンスを与えてくれる環境でした。
もともと有機化学における関西学院大学の研究力の高さは国内の研究者の間ではよく知られていて、これまで数々の優れた研究成果が発表されていますが、実際に着任してみて設備面でも恵まれていることを実感しました。
たとえば昨年、非常に高額な測定機器である400MHzのNMR装置を大学のサポートで新たに2台も導入できました。この件だけでも研究者を手厚く支えようという姿勢が伝わってきます。

三宅:
生命環境学部でもそうです。生物系では顕微鏡の性能が研究精度を左右しますが、本学には質の高いレーザー顕微鏡が複数あります。また私の専門外にはなりますが、ラマン顕微鏡や特殊な質量分析装置などなかなか見ない設備もそろっていて、他大学ではできない作業が可能だと聞いています。あまり知られていないようですが、こういった設備の充実度はもっとアピールしていい点だと思いますね。

佐藤:
関西学院大学は研究者を受け止める空気感も寛容だと思います。
一般的に研究者の30代・40代はまだ若手で、独立して自分の研究を思いどおりに進められる環境は決して多くありません。しかし歴史的な発見をひもといてみれば、研究者が若い時期の活動に由来していることが多い。そこへいくと、関西学院大学では世代を問わず研究者が「知りたい」「やりたい」を遠慮なく追求できるサポート体制があります。その点も研究を志す人にとっては大きな価値ではないでしょうか。

村上:
学生が研究室の垣根を越えて行き来している様子をよく見ますし、理学部では研究室対抗のソフトボール大会もある。研究環境に限りませんが、オープンな雰囲気と風通しの良さは本学の大きな特徴だと思います。

佐藤:
私の研究は多岐にわたるので、以前は「その研究は何の役に立つの?」と聞かれることもあったのですが、本学に来てからはそれがなくなりました。どんなテーマでもまずおもしろがってもらえる。研究の芽を大切にしてくれる環境は、研究者を志す学生にとっても大きなアドバンテージになると思います。

村上:
若いうちから本格的な研究に挑戦でき、分野を越えて議論できる仲間がいる。関西学院大学は、研究のスタート地点として非常に恵まれた場所ですね。

理系・文系を問わず「研究に触れること」の価値は高い。興味があるなら果敢に挑戦してほしい

―これから進路を考える皆さんに向けて、先生たちが考える「研究することの魅力」を教えてください。

村上:
日常生活の中で「自分が世界一だ」と実感できる経験って、なかなかないと思います。でも大学で研究をしていると、それが本当に起こる。
研究者は世界で誰もやっていないことを追いかける存在なので、ふとした時、世界中で自分しか知らない現象に出会うことがあります。その瞬間は本当にエキサイティング。興味を突き詰めたい人、ワクワクしたい人にとって、研究は最高の舞台です。

佐藤:
研究の楽しさは、自分の世界がひっくり返るような経験ができることです。
たとえば、中学や高校では教科書に沿って学びますが、実は教科書の内容がすべて正しいとは限りません。最先端の研究では、教科書を書き換えるような発見に出会うことがあります。自分の手で「常識」を更新する感覚は、研究ならではの醍醐味。関西学院大学には意欲的な研究者が多く、学生のうちからそうした現場に触れられる環境があります。

三宅:
私は、研究者を目指さない人にも、ぜひ学生時代に研究活動を主体的に経験してほしいと思っています。
研究では発見があったときに情報源をたどり、自分の頭で考え、筋道を立てて結論を導きます。情報があふれる現代社会では、何を信じるかを判断する力はとても重要。その力が自然と身につくのが研究という作業であり、身についた力は社会で強く生きていくための基盤を支えると考えるからです。

佐藤:
実際、研究職ではなく一般企業に就職した学生も、研究をがんばった人は評価が高いですね。壁にぶつかっても粘り強く考え抜く力は、どんな仕事でも強みになります。

村上:
課題に真剣に向き合い、日々の積み重ねを大切にする姿勢は、そのまま社会での姿勢につながるということですよね。
将来の進路が決まっていなくても、研究に少しでも興味があるなら、ぜひ一緒に「未知の発見」に向けて踏み出しませんか。

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