Interviews 研究者 新たな分子で社会貢献を。化学の力で未来は変わる!
Introduction紹介文
有機化学の最前線で独自の研究を続ける理学部の村上教授。分子同士をつなぎ合わせることで新たな性質を持つ分子を生み出す研究に取り組み、創薬や農業を支える可能性を追求しています。化学の楽しさと社会への貢献を両立させる研究に情熱を注ぎながら、大切にしているのは人とのつながりだと語る村上教授。新しい化学の地平を切り拓く、その取り組みと姿勢を尋ねました。
自分だけの発見の瞬間を夢見た少年時代。
分子のつながりにワクワクした
研究者になろうと考えたのは小学校高学年の頃でした。理科の実験や観察が好きで、身の回りの物質の仕組みに興味津々。高校で有機化学に出会ったとき、薬やプラスチックなど日常を支える多くのものが化学でつくられていることを知って心が躍る感覚を覚えました。特に分子と分子を組み合わせ、新しい性質を生み出せることに感動。さらに、高校時代に日本人研究者のノーベル化学賞受賞のニュースを知り、世界の最前線で挑戦する研究者の姿に胸を打たれました。数学や物理も好きでしたが、創造力を生かす有機化学こそ自分に合う道。そう信じて以来、化学の面白さを追求する日々を送っています。自分だけの発見に触れる喜びが、研究の原動力になっています。
研究には、未知を切り拓く楽しさがある。
誰も知らないモノをつくる喜び
世界中で人々の暮らしを支える新たな分子を、新たな手法で
私の研究は、分子同士を反応させて新しい性質を持つ分子をつくり出すこと。特に医薬品や農薬に不可欠な窒素原子を含む分子に注目しています。
関学に着任してから取り組んだ研究では、第4級アンモニウム塩とアルケンという、従来は結合が難しいとされてきた2つの分子を精密につなぐ反応を発見しました。そしてこの反応によって、40種類以上の新分子を合成することに成功しています。現在はそれら一つひとつの性能について研究を進めているところ。共同研究によってすでに明らかになったものの中には、植物の塩害を克服する可能性を示すものや、乾燥耐性を高める分子があります。これらは、世界的な気候変動により食料安全保障の課題が増える中、また今後30年以内には世界の農地の約50%が塩害の被害を受けると予測する論文もある中で、農作物の成長を支え、人々の暮らしを守ることにつながる可能性を秘めています。特に塩害に強くする分子に関する研究は国際学術誌に掲載され、高い評価を受けました。
他の分子もまだまだ性能を調べているところで、これらの基礎研究が応用に生かされていくと、医薬品の開発を加速する可能性なども期待できます。
「予測と違う」も次へのヒント。
人と関わって研究は面白くなる
研究は孤独な作業と思われがちですが、実際は共同研究者や学生、国内外の研究仲間との議論、交流が不可欠です。ディスカッションを通じて新しい視点が生まれ、自分一人では成し得なかった発見につながることもたびたび。塩害に強くする分子の発見はその一例です。
また、実験では予測と異なる結果が出ることも少なくありません。しかし予測を超えた現象に出会った瞬間こそ、新しい知識の可能性が開けるのです。誰も知らない世界を自分の手で切り拓く喜び。研究の楽しさは、まさにそこにあります。
目標は、研究で生み出した分子が社会で役立つ様子を見届けること
関学には整った研究設備と優れた研究者が揃っていて、研究に興味がある学生にとってすごく良い環境です。私の研究室でも、学生一人ひとりが自分の興味を追求し、挑戦できるよう指導中。研究の面白さを実感しながら仲間とともに成長できる環境は、学びの喜びをより深めます。理系に興味がある人、本気で研究したい人、ぜひ一緒にやってみませんか。
私の大きな目標は、研究室で開発した分子を実際に社会で生かすことです。塩害に苦しむ農地に分子を届け、作物を守る技術を実現できれば、研究者としてこれ以上の喜びはありません。これからも多くの仲間と共に挑戦を続け、化学の力で人々の暮らしを支える新しい価値を生み出していく。それを私の使命として、これからも研究に励んでいきます。
自分の名前が冠されるような世界中で使われる反応を生み出したい
私の研究者としての夢の一つに、“世界中の化学者に使ってもらえる「人名反応」を発見すること”があります。人名反応とは、有機化学で発見された重要な反応にその開発者の名前が付けられるもので、例えば2010年にノーベル賞を受賞した鈴木章氏ならびに宮浦憲夫氏による「鈴木−宮浦カップリング反応」が代表例です。私も同様に、世界中の研究者が利用できるような有用な反応を発見したい。日々の研究の中で少しずつ可能性を探っています。