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Interviews 研究者 法が制度としてだけでなく、人々の力として活きる社会をつくる。

橋場 典子教授
掲載日:2026.03.03
法学部

Introduction紹介文

法学というと、法律そのものを体系的に学ぶというイメージが一般的かもしれません。その一方で橋場先生は、法と社会の結びつきに焦点を当てた研究を続けています。その原点となったのは、社会の中で感じた違和感や疑問。身近な問題をきっかけに、「法とは何か」「どのようにあるべきか」を考えるようになり、法と社会の関係を探る研究へと歩みを進められました。橋場先生が現在取り組んでいる研究や、学生の皆さんにもぜひ考えていただきたいテーマについてお話をお伺いました。

「法」とは何のためにあるのか。身近な社会問題から、法と社会の関係を探る研究に挑む。

「法学」と聞くと、憲法や刑法といった法律そのものを学ぶイメージがあるかもしれません。一方で私の研究では、そうした実定法学とは少し異なる視点から、法が社会の中でどのように使われ、人々の暮らしとどのように結びついているのかを探究しています。
この分野に関心を持ったきっかけは、中学生の時に参加した大学のオープンキャンパスでの講義でした。テーマは「逸失利益算定における男女差」。交通事故などで将来得られたはずの収入を指す逸失利益の算定において、女児と男児で金額に差があるという事例が紹介されました。この事実は当時の私に大きな衝撃を与えました。それを機に平等とは何か、人権とは何か、そしてそれらを支えるはずの「法」とは何か、という根本的な問いが次々に浮かび上がりました。こうした法そのものへの疑問こそが、法と社会の関係について関心を抱いた原点です。

国際学会発表

法で掲げられた「平等」や「自由」を実現させるために、法活用の実態と向き合い続ける。

現在取り組んでいるテーマは「法活用と法存在の乖離」です。近代法では「平等」や「自由」といった理念が掲げられていますが、現実の社会では必ずしもその通りに実現しているとは限りません。また、何か問題を抱えていて実際に法を活用しようとしても、費用や情報不足、地域の法資源、心理的な負担など、さまざまな壁が立ちはだかります。
私は、こうした壁をどのように乗り越え、法の理念を現実社会の中で活かすことができるのかを探っています。法の理念を絵に描いた餅に終わらせないためにはどうすればよいか、というのが私の研究の核です。
そのために統計を用いた定量的研究に加え、弁護士が少ない地域や、支援へのアクセスが困難な人々の実態を探るためのフィールドワークも行っています。このように理論的・実証的な手法を通じて、「法」の捉え方をめぐる実態の解明を進めています。

NY調査時

「法」の存在意義を問い直すことから、私たちが望む社会と未来を見つめる。

法の理念が現実社会でどのように機能しているのか、していないのかを考えることは、法が何のために存在しているのかを見つめ直すことにもつながります。「法」と一言で言っても、時代や国が違えば、その存在理由や役割は大きく異なります。さらに、法があっても実際にそれを活用できるかどうかは、人や環境によって大きな差があります。こうした状況を踏まえ、そもそも「法とは何か」「どのようにあるべきか」を問い直すことが、私の研究の中心です。
法学と聞くと難しい印象を受けるかもしれません。しかし、日々の生活の中でふと感じる疑問が、法とつながっている可能性があります。社会に目を向けた時に感じる小さな違和感や疑問こそ、法や社会の仕組みを考える貴重な入り口になります。そして法を考えるということは、私たち一人ひとりがどのような社会を望み、どんな未来をつくりたいのかを考えることにもつながります。
これからも、法の本質やそのあるべき姿を、学生の皆さんと共に問い続けていきたいと考えています。

イギリス最高裁判所(The Supreme Court)

私にとってのミカンセイノカノウセイ

学会奨励賞受賞

技術の発展が、法をより身近なものへと変えていく。
広がりつつある法活用の新しい可能性を探る。

私の研究テーマの一つである「法活用」は、近年の情報技術の発展によって大きな影響を受けています。例えば個人で問題が起こった際に、すぐに弁護士のところに相談するという行動は、ハードルが高く感じられるかもしれません。そこで近年では、オンラインでの相談サービスや、法的な情報に気軽にアクセスできる仕組みが注目されています。さらに将来的には、AIが法活用を補助する可能性についても議論されています。技術と法活用の関係を注意深く見つめながら、より多くの人が必要なときに法を利用できる社会の実現を目指し、研究を続けています。