Interviews 研究者 新たな発見を原動力に、英語の変遷を紐解く
Introduction紹介文
「古い英語が好き」という思いから、英語史の研究を始めた谷先生。語彙やフレーズの変遷を追う中で、特にイギリスの童謡「マザーグース」の英語に着目した研究を進めています。この童謡には日本人にも馴染みのある曲が含まれており、子ども向けの歌でありながら、古い英語の表現やリズムの工夫など、学術的にも興味深い要素が豊富です。英語の歴史や変遷をたどる題材としての面白さを語る谷先生に、研究の醍醐味や意義について伺いました。
二つの代表的な辞書から見るイギリス童謡「マザーグース」。この研究を通して、言語文化の深層を探る。
私の専門は「英語学・英語史」で、現在は『オックスフォード英語辞典(OED)』と『英語方言辞典(EDD)』の二つの辞書を比較し、イギリスの伝承童謡「マザーグース」がどのように扱われているかを研究しています。
どちらの辞書も、多くの引用例を用いて単語やフレーズを説明していますが、そのアプローチは対照的です。地域の生きた言葉や方言を収録するEDDには、マザーグースのフレーズが取り入れられており、非常に興味深い内容となっていますが、より学術的なOEDにはあまり掲載されていません。
しかし、マザーグースは日本人にとっての童謡のように、イギリスの人々にとって誰もが知る存在であり、言語文化の基盤とも言えます。これまでマザーグースの研究は民俗学的な側面に偏りがちでしたが、言葉そのものに着目した研究は十分とは言えません。こうした辞書における扱いの差を通して、辞書の編纂方法や歴史を紐解く辞書学の観点から研究を行うとともに、英語という言語文化の深層を探ることが、現在の私の研究課題です。
風刺やユーモアに富んだ親しみやすい作品を通して、学ぶ楽しさを味わう。
私がこの研究を始めたきっかけは、英語の文体への関心でした。英語は一枚岩ではなく、作家やジャンルによって様々なバリエーションを持ちます。その違いを研究する中で、古い英語の形を今に伝えるマザーグースに興味を抱きました。
マザーグースは、イギリスの子どもたちに親しまれる童謡である一方、現実離れした内容や皮肉めいた表現が多く、大人が読むとそのユーモアや風刺を通して、深く考えさせられる点が魅力です。単なる遊び歌や読み物という枠を超え、言葉の使い方や心地よいリズム、古い英語の表現など、学術的にも興味深い要素が豊富に含まれています。リズムや表現の工夫は子どもたちが楽しめるだけでなく、英語の文体や歴史を学ぶうえで重要な手がかりとなります。このように、親しみやすい素材から英語の歴史や変遷を紐解くことができる点が、この研究の大きな醍醐味です。
自ら問いを立て、答えを導く喜び。その積み重ねが、社会への価値につながる。
私にとって研究とは、自ら設定した「問い」に対して、自分なりの「答え」を探し出すプロセスです。ふとした瞬間に知識と現実が結びつき、新たな発見や気づきを得られるときこそ、最も楽しい瞬間だと感じます。
例えば、マザーグースの研究が直接的に社会に大きな価値をもたらすとは限りません。しかし、興味を持って深く探究する姿勢や、研究の成果が他の研究者に新たな視点や手がかりを提供することができれば、十分に意義があると考えています。
学生には、与えられた課題や研究をこなすのではなく、自ら疑問を見つけ、主体的に調べ、答えを導き出す体験を重ねてほしいと考えています。専門知識の習得だけでなく、自身で問いを立てて答えを探求する楽しさや、物事を深く考える姿勢こそが、研究活動を通じて育まれ、将来社会に還元できる価値だと信じています。
国内外の研究者をつなぎ、教育と研究の可能性を広げたい。
私の現在の目標は、海外との研究交流をさらに深めることです。私自身が海外で研究発表を行うことはもちろん、国内外の研究者同士のつながりを強め、ネットワークを広げていきたいと考えています。本学には「海外客員教員制度」があり、海外から教員を招いて教育や研究活動を行っています。こうした制度を積極的に活用し、学生も教員も研究の視野を広げられる環境をいっそう充実させていくことが目標です。