Interviews 研究者 AI時代に求められる会計士の力を、どう育成するか
Introduction紹介文
菅原先生の専門は、会計士をどのように育成するかを研究する「会計教育」。近年では、会計の業務はAIに取って代わられると言われています。しかし、会計士に求められるのは知識や実務だけではありません。経営者と対話し、相手の判断を支える対人スキルや感情スキルも不可欠です。先生は、会計の現場で求められる力を育成するために、実践型の演習を取り入れながら、新たな教育方法を開発し続けています。菅原先生の研究と、その先にあるゴールについて伺いました。
AIの普及が進む時代に、会計の専門家には何が求められるのか。その答えを、次世代の会計士育成から探る。
私の専門は「会計教育」です。会計学というと、数字を扱う分野であることから難しい印象を持たれやすく、関心を持つ学生が限られているのが現状です。さらに近年では、会計士の仕事はAIに取って代わられると言われています。実際に、記帳代行や財務諸表の作成など、業務の一部はAIによる自動化が進んでいます。
しかし、AIの登場によって会計の専門家が不要になるわけではありません 。業務の一部が自動化される一方で、人にしか担えない役割や判断の重要性が高まっています。
会計業務がAIに置き換えられつつある状況は、見方を変えれば新たな可能性が広がる好機とも捉えられるでしょう。IT技術を活用することで、従来とは異なる会計業務の在り方を構築することが可能となります。私の教育では、会計士に求められる共感力や判断力といった人ならではの力を育てると同時に、それを支えるIT活用のスキルを備えた人材の育成を目指しています。
学ぶのは知識だけではない。実践を通して「判断する力」「伝える力」を育てる。
AIが実務の一部を担えるようになる中で、会計士に求められる力は「対人スキル」や「感情スキル」です 。経営者と対話し、相手を思いやり、理解したりする力や、判断を支える力が欠かせません。それらの力を養うため、私の授業ではPBL(課題解決型学習)など、従来の会計教育ではあまり行われてこなかった手法を取り入れています。
具体的な取り組みの一つは、学生が自動車会社の経営者になりきり、レゴ・ブロックを用いて車を製造・販売するシミュレーション・ゲームの導入です。コストや需要を考慮しながら、自身がどのような意思決定を行い、その判断がどのような結果につながったのかを体験してもらいます。様々な状況を総合的に捉え、自分なりの考えを形にするプロセスを通して、実践的な判断力を養うことが目的です。またこのゲームはチームでプレーするので、相手と意見が食い違う中で折り合いをつけて進めなければなりません。授業によっては、留学生と日本人学生を交えてゲームを実施する機会を設けることもあり、文化的な違いの中で、自身の考えを英語を使って言葉にして伝える力を育てています。
このような取り組みを通して、経営や会計を学ぶ学生が自らの意見を持ち、それを相手の気持ちを考えながら適切に伝えられ、実行していける力を身に付けることを目指しています。
会計は世界で通じる共通言語。学びを通して広がる可能性を伝えたい。
会計は、英語やITと並ぶ「ビジネスの三種の神器」の一つとされています。どの国にも企業が存在する以上、会計は不可欠な要素であり、財務諸表を通じて企業活動を記録・公表する仕組みは、いわば世界共通の「言語」と言えるでしょう。国や文化、制度が異なっていても、数字や会計基準を通じて企業の状況を客観的に把握し、共通の土台で議論や意思決定ができる点に、会計の大きな強みがあります。
習得には一定の努力や時間を要しますが、一度身につければ、国境を越えて活用できる強力な武器になります。関心を持たれにくい分野だからこそ、会計が本来持つ魅力を伝え、興味を抱く学生を一人でも増やしていくことが重要です。様々な会計教育の方法を試行錯誤しながら、将来を担う会計の専門家につなげていきたいと考えています。
国内に留まらない選択肢を示し、グローバルに活躍する人材を育てていきたい。
現在挑戦していることは、グローバルに活躍できる人材の育成です。本学では多くの学生が留学を経験するものの、卒業後は日本国内で進路を選ぶケースが多いのが現状です。しかし、それだけでは惜しいと感じます。海外での就職や進学、起業など、多様な道に挑戦する学生が増えてほしいと考えています。 そのため現在は、グローバルPBLをはじめとした取り組みを通じて、外国人学生と共に答えのない課題に向き合う機会を設けています。異なる価値観や考え方に触れながら課題に向き合う経験を重ねることで、将来的に国外でも活躍できる人材を育てていきたいです。