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Interviews 研究者 特色ある日本独自の組織マネジメントで世界を驚かせたい

森谷 周一准教授
掲載日:2025.08.18
商学部

Introduction紹介文

「関学生時代には、仲間との学びに部活動にと充実した日々を送りました」と話す森谷先生。研究者を志し、商学の博士学位を取得してからは経営学において人材マネジメント領域を扱う人的資源管理論をテーマとし、研究を進めてきました。現在は英国マンチェスター大学のビジネススクールで2年間の留学にも挑戦中。その成果を含め、研究の中身や楽しさについて伺いました。

企業やそこで働く人々にリアルタイムで響く重要な課題に取り組み、寄り添う。

組織のマネジメントは難しいからこそ興味深い。部活動での経験則から見出した研究テーマ。

研究者になると決めたのは大学4年生の頃。みんなと同じように就職活動をしていたものの、流れに身を任せる自分に違和感を抱いていました。そんな時に当時のゼミの指導教授が「研究者になる道もあるよ」と誘ってくださり、考えもしない選択肢でしたが、自分なりの道が歩めそうだと大学院進学を選択。研究分野は「ミドルマネジメント(中間管理職)」と「戦略的人的資源管理」に焦点を当て、特に「企業で働く人々のやる気を引き出しながら、一人ひとりが能力を最大限に発揮できるようにするにはどうすれば良いか」というテーマで研究を進めています。

 

伝統ある企業を育んできた日本型の雇用制度、 そこにある隠れた強みを明らかにしたい。

私が現在追究しているテーマは、「日本企業の伝統的な仕組みには、まだ顕在化していない強みがあるのではないか」というものです。最近、日本の企業や経済に関するニュースには暗い話題が多く、中にはその原因が終身雇用や年功序列といった日本特有の人事・給与制度にあるとする声も多く聞くようになりました。確かに今の日本は人々の働き方が転換点を迎え、中には欧米のように各人の業務を限定するジョブ型の働き方を取り入れるなど企業も試行錯誤を重ねています。しかし、日本企業の伝統的な“組織が人を育てる”といった長期的な人材育成には、業務の区切りが曖昧な中で培われてきた人同士のつながり、言葉にしなくても通じ合えるような信頼関係など、数値化できない強固な社内ネットワークがあります。これらを経営層や人事部がうまく活かすことで、日本の企業は時代の変化に合わせてイノベーションを起こし、独自の新しい価値を創造する力をもてるのではないだろうかと考えています。

研究室にて学生と膝を突き合わせて議論している写真。意欲ある学生の素晴らしいプレゼンを聞くと、ついこちらも熱くなってしまいます。

企業の協力なくしてはできない実証データ収集のために、 時には経営トップに手紙で直訴。

最後の決め手は研究者としての本気。熱量で企業トップの心を動かす。

研究を進める中で難しいのは、調査が難しいケースがままあることです。経営学の主流とされる実証研究には2つのアプローチがあり、1つは数値的なデータを用いて理論を検証する「量的研究」で、もう1つは事例等を通じて、詳細かつ広範に組織内で生じる複雑な現象を分析することに重点を置く「質的研究」です。私の手法は質的研究ですが、1つの論文を書くのに複数の企業、数十人におよぶさまざまな職種の方から話を伺う必要があるのですが、テーマが人事や雇用といったセンシティブな情報を含むこともあって、なかなか許可をいただけないことがあります。このハードルを超えるには、時には直筆の手紙で経営層の方に向けて訴えかけます。これまでも私の研究と現代の企業が抱える課題がいかに共鳴するかをアピールすることで、実務の世界との接点を獲得・維持してきました。その結果得られたデータや情報は、より信頼性や適切性が担保された実証データとして、研究成果を生み出す重要なベースとなっています。

元気な日本を取り戻すアプローチ!英国留学での研究成果を英語の論文にして、世界への発信を目指す。

私は現在、英国マンチェスター大学のビジネススクールに留学しています。目的は研究者としてのレベルアップと、取り組んでいる日本企業の特色や独自のメカニズムが世界的に見てどこに魅力があり、どんな問題点があるのかを比較検証することです。私は1987年生まれですが、物心ついてから今まで日本経済やそれを支える日本企業が活気づいた状態にあるのを経験したことがなく、現状に寂しさを感じてきました。日本経済が再び輝きを取り戻すためには企業が自身の強みや真価に気付き、上昇に向けて歩み出さなくてはなりません。その一助となれるよう、学者としての視点から日本企業の魅力や強みを発信していきたいと考えています。今後の目標は、40歳までに研究内容を書籍にまとめ、それを名刺代わりに日本の実務界に発信すること。そして遠くない未来、企業さんと一緒に課題を考えるような活動をできるようになりたいです。

留学先のマンチェスター大学ビジネススクール(Alliance Manchester Business School)のロビーにて。日本とは全く違った環境での生活は楽しいことばかりではありませんでしたが、人生を彩るいいスパイスになったと思います。

私にとってのミカンセイノカノウセイ

部活動で4年間指導していただいたコーチ、苦楽を共にしたチームメイトとの写真。師と呼べる人と大学時代に出会えたことは生涯の財産です。私も学生にとってよき師でありたいと思っています。

頑張る学生たちの姿に刺激され、改めて体力づくりに励んでいます。

関西学院高等部・大学での合計7年間、アメリカンフットボール部のいち部員として日々練習に明け暮れていました。いま教員の立場となり、アメフト部員の皆さんの姿を一番近くで見られることがうれしく、いつも元気をもらっています。最近は私も頑張る学生たちに負けないくらい元気に、そして長く研究活動を続けられるよう、体力づくりに取り組み始めました。時間をつくってはジムに通い筋トレに励んでいます!