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2025.08.27

若林克法・工学部教授らによるJanus型TMDC単層における光誘起スピンホール電流の理論が米国物理学会誌 Physical Review B に掲載されました

関西学院大学工学部 若林克法教授と大学院理工学研究科の亀田智明氏(先進エネルギーナノ工学専攻博士課程)が、Janus型遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)単層における光照射による純粋なスピンホール電流生成の可能性を理論的に明らかにしました。この研究成果は、2025年5月27日付で米国物理学会誌 Physical Review B に掲載されました。

炭素系グラフェンに端を発する二次元物質研究は、近年、電子・スピン・バレー自由度を利用した新奇デバイス設計の舞台として急速に発展しています。その中でも、上下のカルコゲン原子を異種元素で置換した「Janus型TMDC」は、反転対称性と鏡映対称性を同時に破る独特な構造をもち、従来のTMDCにはない内部電場や強いRashba型スピン軌道相互作用(SOC)を有することが知られています。

本研究では、代表的Janus型物質である単層WSeTeを例に取り、有効強束縛模型に基づいて光照射下でのスピン依存光学伝導度を久保公式により数値的に算出しました。その結果、

  • Rashba型SOCにより面内方向のスピン分極が可能となり、純スピンホール電流の効率的な生成が実現すること、

  • 従来のIsing型SOCによる面外スピン分極と共存し、多様なスピン流制御が可能になること、

  • 生成されるスピンホール電流は温度に対して堅牢であり、室温でも十分に観測可能であること、
    を理論的に示しました。

これらの成果は、可視光照射によるスピン流ハーベスティングや面内スピン注入など、次世代光スピントロニクスデバイスの設計指針を与えるものと期待されます。

 

雑誌名 / Journal namePhysical Review B
論文タイトル / Article titleOptically induced spin Hall current in Janus transition metal dichalcogenides
著者 / Author(s): Tomoaki Kameda and Katsunori Wakabayashi
DOI10.1103/PhysRevB.111.195425

Researcher's Information 研究者情報

工学部 教授
若林 克法さん

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