
学生 貧困問題の解決は食の支援から。 ルワンダでの学びを将来につなげたい。
大阪府出身。高校生の時から貧困や飢餓の問題に興味があり、解決に向けた継続的な支援の方法をビジネスの視点で学べる人間福祉学部社会起業学科に進学した。入学後は、「社会起業フィールドワーク(海外)」で訪れたアフリカ・ルワンダで食事支援の大切さに気づき、ゼミ活動や課外活動につなげている。同時に日本への愛着も再認識し、国内で食の分野から社会貢献できる企業への就職を目指している。
教育よりもその日を生きるための食事がまず必要。
出身高校は3年間フランス語が必修で、フランスはもちろん、アフリカのフランス語圏の国々についても学んだことから、貧困、飢餓などの社会問題をビジネスとして解決する方法を探るために社会起業学科に入学しました。印象深いのは「社会起業フィールドワーク(海外)」での2週間の経験です。1年生の終わりにアフリカのルワンダを訪ね、妊産婦ケアに取り組む施設や義足を製作するNPOなどを巡りました。ジェノサイド(大量虐殺)の被害女性と、加害者を夫に持つ女性たちが和解と共生を目指して活動する工房では一緒に布製品を作り、コーヒー農園では「ここをもっと知ってもらうためには」と相談されてSNSによる発信や日本に帰ってからの継続的な支援策を提案しました。現地を自らの目で見て、どうすれば解決できるのかという学びを深める機会となりました。
ルワンダでは、足がない子どもの姿に衝撃を受けました。貧しい家庭では、周囲の同情を引くために親が自分の子の手足を切って物乞いさせると聞いてはいましたが、実際に目にするとは思いませんでした。貧しい親に手や足を切られた子どもたちは、成長できたとしてもやっぱり貧しいだろうし、その子どもや、そのまた子どもも貧困から抜け出すことはきっと難しいだろうと考えると、負の連鎖が生まれているのを感じました。世間では、貧困問題の解決には教育が大切だといいますが、その日一日を生きるために精いっぱいの子どもたちに本当に必要なのは、教育よりもまず食べ物であり、教育にたどり着くまでの食事支援が求められていると思い至りました。
フィールドワークの学びがゼミ活動につながっている。
ルワンダでのフィールドワークにおいて、食事支援の大切さに気付いたことや、コーヒー農園や布製品の工房で見聞きしたことは、現在のゼミ活動や課外活動につながっています。今春から、フィリピンをフィールドにストリートチルドレンの保護や女性団体の支援などに取り組まれている武田丈教授のゼミで学んでいます。2年生時の武田教授の「国際協力演習」で誰も排除しない話し合いの方法など実際に肌で感じられる学びを経験したこと、フィリピンでの活動を含むゼミの内容に魅力を感じたことが理由です。7月に現地を訪れる予定で、現在はゼミ生11人が3つのグループに分かれて話し合いの最中です。私たちはストリートチルドレンを保護する団体を対象に、2つの生活支援に取り組みます。一つが食事支援で、関学生がよく利用する食堂「東京庵」の協力のもと、会計の際に任意で募金箱にお金を入れてもらい、その寄付金でストリートチルドレンに食事を提供しようと考えています。もう一つが、食べたお菓子の空き袋を活用し、一緒にコインケースを製作して売る活動です。自分が作った品物を販売してお金を稼げば食べ物を得られること、作業自体が職業になり得ることを伝えたいと思っています。
武田教授は、「自分たちがやりたいことをやりなさい。それを全力でバックアップします」という姿勢で、学生第一に考えてくださいます。質問や相談に対しては、「こういうのもあるよ」と私たちにはなかった知識を与えていただき、そこから先はまた自分たちで考えていきます。正解を出すのではなく、ヒントをくださる先生です。
国や地域に特化した支援の方法があることに気づいた。
高校までと違い、大学では、必修科目以外は自分が学びたい授業を受けることができ、授業以外の時間をどのように使うかも自由です。社会に出るとそうはいかず、大学の4年間は自分のためだけに使えるとても貴重な時間だと考えています。どの授業にも、受講する以上は何かを学ばなければもったいないという気持ちで臨んでおり、面白くないと思ったものは一つもありません。
入学後すぐの授業で特に興味深かったのは「社会起業入門演習」です。社会起業学科の先生方がオムニバス形式で順番に登壇され、社会問題全体に興味があるけれども何を中心に学ぶかはこれから考えたいという学生にとっては社会起業学科入門編ともいえます。私自身、スポーツを通した課題解決など考えたこともなかったので驚きましたし、それまでの貧困・飢餓問題へまっしぐらの姿勢から、少し視野を広げることも考えるようになりました。また、大阪市西成区の日雇い労働者が多い地区で研究活動をされている白波瀬達也教授の「社会問題論」は国内の貧困問題をテーマにしており、途上国だけを見ていても駄目で、比較できる知識がなければ根拠を持って支援行動に移せないと気づかされた授業です。西成区では、常用雇用ではない人たちが毎朝大勢集まり、その日の仕事を得るという状況でした。先進国には先進国の問題があり、その地域ならではの支援の方法があることを知りました。日本と海外の途上国、両方の問題について学び、違いを知ったからこそ、その国その地域に特化した支援をしなければならないという思いを強くしました。
物語に乗せてルワンダのコーヒーのファンを増やす。
1年生の夏に「社会起業フィールドワーク(海外)」の説明会があり、前年度に参加した先輩たちが現地のコーヒー農園とつながり、ルワンダのコーヒーを広め収入の向上につなげるために学生団体「DAGU Coffee」を立ち上げて活動していることを知って、早速仲間に入りました。現地の農園で直接購入した豆を国内で地域のマルシェなどに出店して販売するというもので、背景にある物語、例えば農園の生産者の思いや豆が子どもたちの教育費など暮らしを支えていること、ジェノサイドなどルワンダの歴史、さらに私たちの団体の活動についても伝えています。一人でも多くの人に、コーヒー豆だけでなく生産者の農園を含めたルワンダのファンになっていただけるよう、さまざまなストーリーをのせて届けています。
対面でのやりとりでは、私の伝え方が悪いと、コーヒーがおいしくてもファンにはなってもらえません。興味を持っていただけるような伝え方をすることが大事だと学びました。私たちがルワンダを訪れたという事実に意味があると思うので、そこで自分が何を見て、どう感じたのかを第三者の視点から伝えることによって、「ルワンダって意外に遠くないな」と親近感を持ったり、「豆を買うことが生産者のため、人のためになっているんだ」と気づいたりしてもらえます。また、対面コミュニケーションを大切にする一方で、SNSの活用にも努めており、現地でインタビューしてきた生産者の姿を発信したり、私たちの活動の報告や今後の予定をアピールしたりと、オンライン上でのストーリーの発信にも取り組んでいます。
食品関係の企業で途上国と国内の両方に貢献したい。
将来は、海外支援に力を入れている国内の企業で働きたいと考えています。「教育につなげるためには、まず食べ物が必要」という気持ちはぶれずにあるので、食品関係の分野で、途上国の給食支援や飢餓撲滅支援に取り組んだり、途上国からフェアトレードで輸入した品物を加工・販売したりしている企業を中心に就職活動中です。日本の企業に決めたのは、海外の環境や文化に身を置くと、「ここは見習わないといけない」「こういう所は日本の方が優れている」と母国を見直すきっかけになり、その時に、私はやっぱり日本が好きだと改めて思ったからです。また、単に海外を支援するだけではなく、食品を国内で販売することによって日本の誰かの食卓を豊かに彩ったり、食べる楽しみを増やしたりすることができ、海外と日本の両方に貢献できるかもしれないとも思いつきました。
武田教授が「社会起業入門演習」の授業の中で、「会社の利益のためだけに働いてそれで満足ですか。お金を稼ぐのなら、貧しい人のため、誰かのために働きたいと思いませんか」と問いかけられたのがとても心に残っています。単に企業の利益のためだけではなく、私の幸せも、他の誰かの幸せも大切にした働き方という視点を持って、企業選びの際には企業理念をしっかりと調べ、内容に共感できるかどうかを一つのポイントとしています。授業でそういうところまでしっかり学べたことも、本当に幸せだと思います。