[ 国際学部 ]学部長メッセージ

国際学部長 宮田 由紀夫

国際学部長

関西学院大学国際学部は2010年4月に設立された新しい学部です。しかし、国際性を重視した教育・研究は関西学院の歴史のなかに息づいています。1889年に関西学院を創設したW. R. ランバスは医療宣教師として多くの国をめぐり生涯を医療・伝道・教育に捧げ、まさに「世界市民(World Citizen)」として活躍されました。ここでいう「世界市民」とは国や地域にかかわらずすべての人の生活を向上させるために主体的に責任をもって考え行動できる人を意味しています。関西学院大学は、世界市民の育成という伝統の更なる具現化のために11番目の学部として国際学部を設立しました。

国際学部の目指すものは、「国際性の涵養」です。関西学院のスクールモットーである“Mastery for Service (奉仕のための練達)”を世界を舞台に展開できる人材を育てることを目標にしています。単に国際事情に詳しいだけでなく、様々な隣人・社会を理解し、抱える問題に共感できる温かい心や倫理観と、その解決のための冷静な頭脳の両方を身に着けた人材の輩出です。具体的には「問題解決能力」「多文化共生能力」、「倫理的価値観」「言語コミュニケーション能力」といった資質・技能の修得が求められます。

国際学部ではカリキュラムの体系として学問分野としては、「文化・言語」「社会・ガバナンス」「経済・経営」の3つの領域を、学びの対象としては、(国際連携機関のことなどを学ぶ)「グローバル共通科目群」「北米研究科目群」「アジア研究科目群」「ヨーロッパ研究科目群」を設けています。経済学や工学と異なり、国際学という学問体系は明確に確立されていません。学びの軸足という意味で、3つの領域と4つの研究科目群の中で自分がどこを重視するかを考えて学んで頂きたいと思っています。とくに3年生からは全員がゼミに所属して、少人数で教育を受け、4年生では卒業論文を作成します。ゼミのテーマはこの12のカテゴリーのどこかにあてはまりますから、自分が興味を持った分野での学びを深めてください。一方で特定の領域や科目群に特化して履修する必要はありませんから、垣根を越えての幅広く履修することも可能です。

そして、3つの「領域」はすべてが関連しています。海外とビジネスを行う上では法律、政治制度、言語や文化の理解は不可欠ですし、途上国支援のための非営利組織に携わっても、経済・経営分野の知識を生かしてコストを抑制しなければ組織としての活動は継続できません。また、この「領域」が示すように国際学部は基本的に人文・社会科学の視点で学びを構築します。急速に進歩する科学・技術を世界の隣人・社会にどう活かすかについて人文・社会科学の知識は極めて重要なのです。

4年間で学ぶ国・地域の数は限られています。しかし、国際学部での学びを通してさきほどあげた4つの資質・技能を修得して頂ければ、他の国・地域にも応用することが可能です。商社に勤めるようになり、未知の国に赴任しても国際学部で学んだことが役に立つはずです。 関西学院は創立150周年に当たる2039年の関西学院のあるべき姿を見据え、長期的目標である“Kwansei Grand Challenge 2039”を作成しました。その中では、卒業生が「真に豊かな人生」を送れることを全学的な目標とし、そのための第1歩として「質の高い就労」を達成することを目指しています。国際学部としてもこの目標を達成すべく努めています。「質の高い就労」というのは、何も大企業、知名度の高い企業に就職することだけではありません。学生のみなさんが希望する企業・職種に就いて社会人生活をスタートさせるということです。

しかし、就職は長い人生の中で一つのステップにすぎません。重要なことは生涯にわたっての学習です。実用的な知識は確かに就職には役に立つかもしれませんが、そのような知識は陳腐化も早いものです。皆さんは生涯にわたり学び、新たな知識・技能を習得しなければなりません。生涯を通しての学びを可能にするのが、知識を得ることが楽しい、学ぶことが苦にならないという知的好奇心です。国際学部での4年間の学びの機会を通して、国際的な問題に関する知的好奇心を高めてください。

冒頭に書きましたが、国際学部はまだ新しい学部です。国際学部の教職員は全力で学生の皆さんの学びを支えていきますが、学生の皆さんも自分たちが国際学部の伝統を作っていくのだ、という意識をもっていただきたいと考えています。古い話で恐縮ですが、1961年のアメリカ・ケネディ大統領の就任演説に次の一説があります。

“Not ask what your country can do for you. Ask what you can do for your country.”
“your country”を国際学部に置き換えてください。