[ 社会学部 教員インタビュー ]小林 智之准教授
社会心理学は興味深い研究が豊富で、
学ぶほどその魅力が深まる。
2025年4月に関西学院大学社会学部へ着任された小林智之准教授にインタビューを行い、先生の研究内容や関西学院大学社会学部の魅力などをお聞きしてきました。
—— はじめに自己紹介をお願いします!
小林智之(こばやしともゆき)と申します。社会心理学を専門に研究しています。
—— ご専門の社会心理学とはどういった学問なのでしょうか。
社会心理学とは、社会の中での人の行動や心の動きを研究する学問です。私の研究では、特に災害や感染症といった公衆衛生の危機が、人々の心や人間関係にどのような影響を与えるのかに注目しています。たとえば、福島第一原発事故後の地域コミュニティにおいて、避難者と地域住民の間に生じた葛藤や、それをどう乗り越えて共に生きていくかといった課題に取り組んできました。そこで観察された差別やスティグマ、対人トラブルなど、集団間に生じる対立の理解と解消も、重要なテーマのひとつです。
——社会心理学に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。社会心理学に興味をもったのは、その研究方法のおもしろさです。たとえば、ヘンリー・ダジフェルという社会心理学者は、古典的な研究にて、人が自分の所属する集団の仲間をひいきする傾向があることを示しました。このとき、ダジフェルは、参加者をどうでもいい絵の好みやランダムに2つの集団に分けて、そのひいきする傾向を観察しています。そして、そのひいき傾向が生じる条件に集団に所属したことによる特別な体験や仲間との思い出は必要なく、ただ所属することだけが条件であることを示しました。社会心理学を学ぶ中でそうした面白い研究がたくさんあることを知り、どんどん好きになっていきました。
—— 現在ご担当されている授業の内容や、授業を通して学生にどんなことを学んでほしいかを教えてください。
現在担当している授業のひとつに臨床社会心理学という講義があります。ここでは、ストレスや精神疾患などといったメンタルヘルスの問題が、身体の生物学的または医学的要因だけでなく、心理的要因や社会的要因から影響を受けることを解説して、社会学や社会心理学の観点から個人や社会に対してどのような貢献ができるのかを考えていきます。学問というのは、なにか問題に対して、その解決を考えるのに役立つものです。大学で学んだことが、今やその後の人生においても役立つものであることを知ってもらえるとうれしいです。
—— 小林先生が感じている関学社会学部の魅力などがあれば教えてください!
関西学院大学社会学部は、多様な領域を専門にする先生方が集まっていることが魅力だと思います。社会科学では領域によって研究手法が本当に様々です。多様な領域の先生に会えるということは、それだけ様々な研究手法を学ぶ機会があるということです。自身の知りたいことを率直に知ることができる方法が、ここでは見つけやすいと思います。
—— これから関西学院大学社会学部を目指す高校生などに伝えたいメッセージがあればお願いします!
これまで教科書などで載っている既存の知識を学んできたと思います。大学では、ただ知識を学ぶのではなく、今までにない新たな知識をみなさんが発見していくことに挑戦します。それが研究というものです。研究というと小難しく思いますが、そのとっかかりはなんでもいいです。私自身は、災害や感染症の流行といった大きな社会問題から、人と人との小さなすれ違いまで、さまざまなテーマに興味を持っています。なんで仲良くしたいのにうまく話せないんだろうとか、なんで痩せたいのにラーメンばかりたべちゃうんだろうとか、日々の何気ない疑問や悩みがすべて研究になります。みなさんが関西学院大学社会学部に来たら、日常や社会の中にある「問い」を深く掘り下げて、皆さんと一緒に考えていければと思います。
記事担当者の感想
- 社会心理学の視点から、災害や感染症が人々の心やコミュニティに与える影響を探る研究は非常に重要だと感じました。福島第一原発事故後の避難者と地域住民の関係に焦点を当て、対立や差別の解消に向けた探究が進められている点が印象的です。こうした研究が、人々が共に生きる社会づくりに役立つと感じました。
- ご紹介いただいたタジフェルの研究は、非常に興味深く、面白いと感じました。こうした「面白い」と感じることが、探究心を持ち続けるための原動力になるのだと、改めて感じました!