西立野修平ゼミがインド研修を実施しました。
8月18日~25日にかけて、西立野修平ゼミが、インドにおける日本の政府開発援助について学ぶため、JICAインド事務所とデリー上水道改善事業施設(JICAの有償資金協力事業)を訪問しました。また、デリー近郊の世界遺産を巡り、インドの歴史や文化を学びました。
以下は参加した学生によるレポートです。
<1日目>
デリーにあるJICAのインド事務所を訪問しました。JICAの方々からはデリー高速輸送システム事業と上下水道についてのお話を聞きました。
デリー高速輸送システム事業は通称デリーメトロといい、デリーメトロ公社と行っているものです。インドでは、深刻な大気汚染と交通渋滞が問題となっており、交通渋滞による経済損失だけでも年に220億ドルにものぼります。しかし、交通渋滞の緩和に必要な資金は政府や州ではまかなうことは厳しいため、JICAはデリーメトロの78%を支援しています。デリーメトロによって交通渋滞の緩和はもちろん、女性専用車両が作られたことにより、女性の安全な通勤によって女性雇用が促進され、女性の社会進出に大きく貢献したそうです。
実際に私たちもメトロに乗ってみましたが、車内は静かであり、ごみも落ちていませんでした。
上下水道ではヤムナ川というガンジス川の支流についてお話を聞きました。ヤムナ川の上流では日本の川と汚染レベルに大きな差はありませんでした。しかし、デリーに入るところで一気に汚くなっており、ヤムナ川の汚染の8割はデリー由来であることを知りました。JICAはこの問題に対して、円借款で下水処理場の整備やコンサルティングサービスに取り組みました。また、川が汚染されることを防ぐために、住民への啓発・広報活動もしています。
私たちが視察させていただいたオクラ下水処理場では日本と遜色ない技術が使われているそうです。
またJICAの方々に私たちの研究を発表する貴重な機会を頂きました。発表時間短縮やそれぞれの分析結果の深堀などまだまだ課題が残っているので引き続き、邁進していきます。

<2日目>
この日はデリー近郊にあるオクラ浄水場に視察に行きました。
ここはアジア有数の規模を誇る浄水施設で、インド市民の生活を支える重要なインフラ施設の一つであることを実感しました。その中でも特に印象に残ったのは大きな沈殿池です。川から取り入れた原水はここで大きなゴミや泥を取り除かれ、その後、ろ過や消毒を経て飲料水として送り出されているということを視察を通して理解することができました。
また、現場では最新の機械設備と同時に、人の目と手による監視や点検も欠かせず、都市の急速な発展に伴い水需要は増加しており、施設の効率化や安定的な運営が大きな課題だということもわかりました。
私たちは今回の視察を通じて、普段は当然のように蛇口から出てくる水が、どれほど多くの工程を経て届けられているかを改めて実感することができました。浄水場は都市の生命線であり、インフラ整備の重要性を肌で感じる貴重な機会となりました。

<3日目>
この日は一日自由行動で、歴史的建造物やマーケットを訪れたり、休養をとったりと、それぞれ思い思いに過ごしました。私は以下のような一日を過ごしました。
午前中は、植民地時代に建設された大統領邸とナショナルミュージアムを訪問しました。大統領邸は東京ドーム約48個分の広さを誇り、当時首相が会議に使用していた部屋や、賓客をもてなすための部屋などを見学することができました。建物は床から天井まで洗練されたデザインが施され、壁画も数多く残されており、当時の文化や価値観を感じ取ることができました。
午後は現地の知人と合流し、まずは「グルドワラ・バングラ・サーヒブ」というシーク教の礼拝所を訪問しました。頭を覆う・裸足で入るといったルールがあり、実際に現地の信仰者に混じって礼拝を体験しました。写真で見るだけではわからない、独特の荘厳な空気感を肌で感じられたのは貴重な経験でした。
その後、階段井戸「チャンド・バオリ」とデリーにある「ディリーハット」を訪れました。ここは有料の野外マーケットで、各地のクラフト製品や伝統料理が並び、活気ある雰囲気に包まれていました。買い物や食事を楽しみながら、現地の生活文化に触れることができました。

<4日目>
この日はバスを貸し切り、現地のガイドの方とともにニューデリーの主要な史跡を5箇所順番に巡りました。
まず最初に訪れたジャーマー・マスジドでは、宗教的な理由から肌を隠すためのローブのような上着を貸し出され、実際に羽織って見学しました。インド最大級のモスクの壮大さと合わせて、宗教が人々の生活に深く根付いていることを肌で感じました。
次に訪れたラール・キラー(赤い城)では、本物の大砲を見ることができ、ムガル帝国の軍事的な側面にも触れることができました。さらに、フマユーン廟では左右対称の美しい建築に魅了され、静かな雰囲気の中で後のタージ・マハルへとつながる歴史を学ぶことができました。
その後向かったクトゥブ・ミナールはとにかく圧倒的に大きく、首が痛くなるほど見上げながら、その存在感に驚かされました。最後にインド門については車窓からの見学となりましたが、ホテルから近かったため滞在中に何度も目にすることができ、ニューデリーの街を象徴する存在として印象に残りました。
こうしてガイドの方からそれぞれの歴史的背景や建築の特徴について説明を受けながら見学することで、単に景色を楽しむだけでなく、その土地が持つ歴史や文化への理解が深まり、一層見応えのある体験となりました。

<5日目>
今日はTaj MahalとArgra Fortへ行きました。
Taj Mahalではシンメトリーで壮大な建築物を見ることができました。外壁には細かく丁寧に幾何学模様が描かれており、日本とはまた違った世界遺産を楽しむことができました。Taj Mahalの中ではガイドさん?が中のお墓の説明をしてくれたのですがなんとチップを要求されてしまい驚きました。
Argra Fortは当時のムガル帝国とイギリスとの戦いにおいて建てられた建物であり、現在もArgra Fortの75%はインドの軍隊が使用しているそうです。またArgra Fortは当時のムガル帝国の王様の家族が住んでいた場所でもあり、現地のガイドの方が細かく説明してくださったおかげでアグラ城についてたくさん学ぶことができました。Taj Mahalとアグラ城合わせて5時間程の滞在でしたが、本当にあっという間でした。

<まとめ>
最後に、今回のインド研修を通じて私が感じたことをまとめさせていただきます。インドは皆さんご存じの通り、世界一の人口を抱え、目覚ましい経済発展を遂げている一方で、貧困や衛生問題といった多くの課題も抱えています。実際に訪れると、多くの人が「人生観が変わった」と口にしますが、私もその一人です。では、インドの何が私の人生観を変えたのかを自分なりに整理してみました。
1つ目:「先入観に囚われないこと」
インドの町並みは決してきれいとは言えず、空気も日本と比べれば悪い。交通渋滞は日常で、ホームレスも少なくありません。食べ物や狂犬病にも注意が必要です。けれども、実際に暮らしてみると「案外ここでも生活できるかもしれない」と思わせてくれます。最初は怖かった野良犬も可愛く見えてきますし、気を付ければ体調を崩すこともありません。日本の恵まれた環境を当然と考えていた自分に、固定観念を外す大切さを教えてくれました。
2つ目:「細かいことを気にしすぎないこと」
道路では割り込みは当たり前、衛生状態が気になる食べ物もたくさんあります。それでもインドでは、そうしたことを気に病む必要はありません。少しくらい割り込まれても受け入れる心の余裕や、多少お腹を壊しても「それも経験」と思える気持ちが、今を楽しむことにつながると気づきました。
3つ目:「日常の裏側にある現実を知る大切さ」
インドでの楽しい体験に心を奪われがちですが、その陰で日々を必死に生きる人々がいることも忘れてはいけません。街中で物乞いをする子供たちに何度も声をかけられました。特に、デリーの中心街でTシャツ一枚の幼い女の子が、私の持つペットボトルを指さして「欲しい」と訴えてきた場面は忘れられません。その時は他の人と同じように無視しましたが、今思えば水を渡してあげれば良かったと後悔しています。日本にいては実感しづらい現実を、肌で感じることができました。
最後に、このような貴重な機会を与えてくださったJICAの皆様、観光や移動をサポートしてくださった現地ガイドの方々、そして引率をしていただいた西立野先生に、心より感謝申し上げます。今回の経験を大切にし、今後の学びと成長につなげていきたいと思います。