企業法務に特化した授業
企業法務のスペシャリストへ―基礎から演習まで体系的に設計
関西学院大学法学部では企業の法務担当者を目指す学生にむけて、企業法務に特化した様々な授業を開講しています。
ビジネスに関する法律や企業法務の基礎から、実務経験の豊富な現役の法務担当者や弁護士が講師を務める発展的な演習まで体系的に設計しています。
各授業や実際に法務担当者として就職した先輩学生の声などを通じて、関西学院大学法学部の企業法務に特化した授業を紹介します。
企業法務とは
企業法務とは、契約審査や法的リスク管理、コンプライアンス対応など、企業が紛争を避けるための予防法務にかかわる取り組みや、国内外での新規事業進出・事業撤退などの経営判断を法務の立場からサポートする取り組み、あるいは実際に紛争になった場面での紛争解決や不祥事対応のための取り組みをいいます。契約書のリーガルチェック等の契約管理業務、労務関連業務、株主総会の対応業務、M&A(企業買収)やアライアンス(提携)関連業務、知的財産権の管理など知財関連業務、債権回収、コンプライアンス業務など様々な分野についての取り組みが企業法務と総称されます。
事業の推進と変革には企業法務の視点が不可欠です。企業法務の重要性・ニーズは高まっています。また近年、ビジネスと人権、人的資本管理、気候関連リスク、情報セキュリティ、DX化、サプライチェーンの点検など、企業はESG(Environment Social Governance)やサステナビリティに関する新たな課題への取り組みが求められており、企業法務関連業務は拡大傾向にあるといえます。

主な授業
ビジネスと法

実務家(弁護士)である講師が取り扱った事件等を題材として、生の事件に実務家がどのように対応しているのか、体験談を交えて講義します。実務家の講義を聞き、法律がより身近に感じる事で、法律家を目指すきっかけとなるような講義を行います。
企業法務入門

実際の企業活動において法律がどのように生かされているのかを概観。法律実務家の立場から、企業が直面する具体的な事案を通じて、紛争予防・紛争解決のために必要となる法的思考方法をわかりやすく解説します。
企業法務特修入門

企業法務の基礎力を身につけるため、企業法務で必要となる法分野を幅広く取り扱います。扱うテーマ・論点によって対話や議論を実施します。
企業法務特修実践演習A1

実際の企業活動において起こりうる法律上の問題について、具体例(判例で問題となった事例など)に基づき想定される法的リスクの把握と、それを踏まえた問題の解決方法の考察することにより、実践的な対応能力を身につけます。
公共政策実践演習A3

税理士による実務家講座。アントレプレナーシップを身に付け、社会でオンリーワンの存在になれるよう学びます。グループで新規ビジネスを起ち上げ、最終回ではビジネスコンテストを開催します。
グローバル法政実践演習A1

国際仲裁について多くの経験を有している担当教員が具体例に基づいて解説し、秋に発表される模擬仲裁の世界大会(Vis Moot) の問題を分析できる実力をつけていきます。教員と学生の双方向性を確保し、学生同士のコミュニケーションを高めていく授業です。
国際ビジネス法発展演習

企業において国際ビジネス法務の第一線で活躍している講師を招き、国際ビジネス法務に関する問題解決の基礎を身に付けます。法理論を法務上の実際の問題にいかに適用すべきかを考える力も養成します。
司法・ビジネス実践演習B4

企業法務をより身近に感じてもらえるよう、講師(弁護士)がそれぞれ専門とするテーマを取り上げ、実際に起こった紛争事例や時事問題等の検討を通して、企業法務に対して具体的なイメージを持ってもらえるような授業を行います。
司法・ビジネス実践演習B5

講師5人は現役の弁護士。取り上げるテーマは、会社法、企業法務、労働事件、家事事件(相続・離婚など)、消費者保護法、国際法務など、多岐に渡ります。テーマごとの基本的知識の習得と、具体的事案の背景事情やその解決方法に触れ、今後の社会生活に役立てます。
公共政策実践演習B3

春学期開講「公共政策実践演習A3」も担当する税理士による実務家講座。学生のうちに金融商品取引法等を学ぶ事は、将来の大きなアドバンテージになります。 漫画「インベスターZ」(三田紀房)を参考に体系的に学びます。
グローバル法政実践演習B1

模擬仲裁世界大会(Vis Moot)参加を目指し、国際商事紛争の解決プロセスを理解します。準備段階で国際英文契約の解釈、主張・反論書面作成、弁論等、実践的なスキルを学ぶことができます。大会の準備をする授業では質疑応答、グループ・ディスカッション、グループによる発表、講評等、双方向の授業を中心としています。
企業法務特修実践演習B1

授業前半では生成AIをめぐる法律上の課題として、著作権法との関係、肖像権・パブリシティ権との関係、AI倫理といった問題を取り上げます。後半では知的財産と企業活動の関係(知財法務)として、特許法、商標法、不正競争防止法などが果たしている役割・重要性を理解できるような事例を取り上げます。
履修モデル
特修コース

司法・ビジネスコース



先輩学生の声
シャープ株式会社 法務部
濵口菜月さん(2024年法学部卒業)
現在は主に契約審査業務を担当しており、各種契約に伴う法的リスクの分析、ビジネスの実態との整合性の確認など、多角的な視点から契約を検討しています。 当社の法務部では、事業部門との連携が強く、法務スタッフも様々な事業に初期の検討段階から関わることができるため、興味深さを感じています。
また、法律に限らず、事業内容の理解をはじめとした多岐にわたる知識が必要となるため、日々の学習の重要性を実感しています。英文契約の審査や海外拠点とのミーティングの機会もあり、グローバルに活躍することができる環境です。
ぜひ、将来の進路として企業の法務部門を検討してみてください。
東和薬品株式会社 法務部
岩﨑百香さん(2022年法学部卒業)
企業法務として法律相談対応や、契約書審査を行っています。ヒアリング能力や伝える力も必要ですが、企業法務では、様々な法律に精通する必要があります。
大学時代から幅広い分野に興味を持っておくことが将来の自分を助けてくれることになると思います。日々の学習と業務に関する試行錯誤の毎日ですが、学習した知識を実務に使用するときや依頼者に納得いただける回答ができたときは大きなやりがいを感じます。
東洋紡株式会社 法務・コンプライアンス部
酒谷由夏さん(2021年法学部卒業)
主に契約書の審査を行なっています。法務部門では法律の知識だけでなく、論理的な思考やヒアリング能力も求められます。英文契約を見る業務には英語力も必要です。
法務部門に配属されると勉強の日々ですが、そのぶん的確な答えを導き出せた時のやりがいは大きいです。企業活動を支える法律のスペシャリストになれるよう、頑張りましょう。
株式会社神戸製鋼所 総務・CSR部
小谷陽香さん(2012年法学部卒業/2014年法学研究科博士課程前期課程修了)
株主総会の運営や株式業務、適時開示に係る業務に携わっています。これらの業務は、株式会社の根幹にかかわる事項であることから、大きな責任感とやりがいを日々感じています。
大学では、基礎知識を学ぶことができるのはもちろん、ゼミ活動等を通じ、法的議論を具体的事例に当てはめて検証するという力を養うことができました。大学での学びは、今の業務に役立っていると感じています。
パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社在籍、パナソニックIPマネジメント株式会社出向
西村沙貴さん(2007年法学部卒業/2009年法学研究科博士課程前期課程修了)
パナソニックグループにおける商標の調査、権利化、契約、係争等の業務全般を行っています。 企業法務・企業知財は法的な知見だけでなく、事業を理解し、それを踏まえた上で業務を推進していくところに難しさと楽しさがあると思います。 困難な場面も多くありますが、それらを乗り越えて自分が携わった商標が使われた商品・サービスを日常で目にしたときに、達成感や喜びを感じます。 大学で学んだ法律知識や法的な思考力を生かし、商品やサービスを通じて世の中に貢献できる、企業に根ざした法務業務に興味のある皆さんにおすすめの仕事です。
株式会社クボタ コンプライアンス本部 法務部法務第一課
小崎慎太郎さん(2007年法学部卒業/2009年法学研究科博士課程前期課程修了)
国内外で取引を推進する際に必要となる法令調査や契約書の作成・審査業務、グローバルなコンプライアンス体制の整備・運営業務に主に携わっています。
企業買収等の重要案件やIoT製品開発・データ利活用等の新規案件にも専門家として関わることになるため、日々の勉強は必要ですが、大きなやりがいをもって業務に取り組むことができます。
大学や大学院で学んだことを仕事にも活かすことができるため、スペシャリストとしてのキャリアを目指す方には是非おすすめです。
パナソニック株式会社 リーガルセンター(兼)CVC推進室
園部友美さん(2005年法学部卒業、2007年法学研究科法学研究科博士課程前期課程修了)
国内及び海外での取引に関わる法務相談・契約、M&A、グループ内再編、スタートアップ投資、コンプライアンス、ガバナンス等に係る業務を行っています。
私がパナソニックの法務部門で働くことを選んだ理由は、「グローバルに幅広い分野」で「法律関係の仕事」をしてみたいと考えたからです。企業法務と聞くと、事務所でずっと契約を読んでいるような印象を持たれるかもしれませんが、実際は社内の関係部門、取引先、弁護士事務所と日々コミュニケーションを取り、連携しながら仕事をしています。また、出張で国内外を飛び回ることも多く、グローバルかつアクティブに仕事をしています。
ビジネスの場面では、六法や参考書に書いていないことがたくさん起こり、応用問題の連続です。その中でさまざまな法的分析を行いビジネスジャッジにつなげるのですが、そこで拠り所となっているのが大学時代に培った「法的思考」です。これからも、スクールモットーである“Mastery for Service”を胸に、関学と企業法務の仕事で学び培った専門性を生かし、会社と社会に貢献できるグローバル人材として成長し続けたいと思います。
関学には素晴らしい学習環境があり、そして法学部には多岐にわたる充実したカリキュラムが準備されています。私の在学時よりもさらに充実した講座や研修機会があり、「もう一度学生生活を送りたい」と思うほどですよ。
企業法務の仕事と魅力を知る機会
キャリアオリエンテーション
法学部は毎年、法律や政治に関わりが深い業界で活躍している卒業生が講師となり、仕事の内容や魅力、自身のキャリアなどをリアルに語るイベント「キャリアオリエンテーション」を開催しています。
テーマの一つに「企業法務の仕事と魅力」を設け、1年生次から企業法務に触れる機会を作っています。
