
研究者 グローバル社会で「他者」と共に生きる
「他者」とは誰のことだろう?
みなさんにとって「他者」とは誰でしょうか。外国人や文化の違う人、あるいは自分と意見の異なる人を思い浮かべるかもしれません。しかし、社会が急速に変化する今日、誰もが状況によっては「他者」になり得ます。私は、高齢者、障がい者、外国にルーツを持つ人々の社会参加や社会的包摂(ソーシャルインクルージョン)を主な研究テーマとし、多様な背景を持つ人々が共に生きる社会のあり方を探究してきました。研究を通して見えてくるのは、「違い」を排除する社会ではなく、多様性を前提に支え合う社会の重要性です。こうした研究成果をもとに、学生とともに現代社会における他者の問題を考えたいことが、教育の出発点になっています。
「ソーシャル」が意味するものは?
「ソーシャルビジネス」や「ソーシャルネットワーク」に代表されるように、「ソーシャル」という言葉が広がる背景には、人と人とのつながりや社会連帯(Social Solidarity)を重視する社会への変化があります。一方で、AI化や自動化、オンライン化が進むほど、孤独や将来への不安を感じる人が増えているのも現実です。私は研究と教育を通して、グローバル化と技術革新の中で「自己」と「他者」の関係がどのように変化しているのかを問い続けています。社会問題を遠い出来事としてではなく、自分の生活や将来と結びつけて考えられるよう、理論と現実社会をつなぐ授業を行っています。
社会とつながる授業と学び
大学での学びは、教室の中だけで完結するものではありません。私が担当する「グローバル化社会と福祉(Globalization and Social Welfare)」は英語で開講され、日本人学生と留学生が同じ教室で議論しながら、国際的な社会課題を専門的に学ぶ科目です。「ディアスポラ論」では移民や越境する人々の歴史と現代的課題を、「社会調査演習A(量的調査リサーチ)」ではデータを用いた社会調査の方法を学びます。さらに「社会起業外書講読(アカデミックリーディング)」や「社会起業インターンシップ」では、ソーシャルビジネスやNPOの実践を理論と結びつけながら理解します。こうした授業を通して、他者をめぐる社会課題を理論・調査・実践の三つの視点から総合的に理解する力を養うことを目標としています。
問い続けることが学びになる
ゼミや授業では、知識を覚えるだけでなく、社会現象を理論的に捉え、自分自身の問いを深めることを重視しています。グローバル社会の中で、自分はどのように他者と関わり、どのような社会をつくっていきたいのか。学生は文献研究、社会調査、現場経験を組み合わせながら、自分なりの問題意識を形にしていきます。将来どの分野に進んでも、多様な他者と協働し社会課題に向き合う力は不可欠です。大学で、その基礎となる思考力と実践力を共に育てていきましょう。
インターンシップで社会を知る
「社会起業インターンシップ」では、学生がNPOやソーシャルビジネスの現場に入り、社会課題解決の実践に触れながら学びます。外国にルーツを持つ子どもへの学習支援や地域コミュニティでの活動、社会課題に取り組む企業やNPOでの業務を通して、学生は社会問題を具体的な現実として理解していきます。現場での経験を大学に持ち帰り、理論的に振り返ることで、自分と社会との関係をより深く考える力が育ちます。社会に出る前にリアルな課題と出会う経験は、将来の進路選択にも大きな意味を持っています。