人間福祉学部
K.G.

卒業生 相手の背景を理解し相手の立場で考えることを大切に。

ネスレ日本株式会社
岡本きららさん
掲載日:2026.03.04
社会起業学科2023年卒業

滋賀県出身。中学生の頃から海外への関心が高く、高校生の時に研修で訪れたフィリピンのスラム街で貧困の実態を目にしたことからソーシャルビジネスへの興味が湧き、社会起業学科へ進学。入学後はジェンダー問題への興味も湧き、ゼミでは大学生の性暴力被害の調査・研究に力を注いだ。卒業後は外資系食品メーカーで、法人向けにコーヒーマシンの営業を担当している。

相手のニーズに沿った支援をすることが重要。

高校は京都市にある女子校のグローバル英語コースで、国際問題などを中心に学びました。研修で訪れたフィリピンのスラム街では、自分と同年代の子どもたちが教育を受けられない現実を目の当たりにし、この課題を解決したいと考えるようになりました。関西学院大学では人間福祉学部以外にも国際問題を扱う学部があり、どちらに進むか迷いましたが、オープンキャンパスで社会起業学科の先輩に相談したところ、「うちの学科ならあなたのやりたいことができるよ」と言われたことが決め手になりました。

1年生の時は他学部の授業もたくさん受けました。国際教育・協力センターの「世界市民論」の授業で途上国への国際協力の話を聞いて、「自分の目で現場を見てみたい」とインターネットで機会を探していたところ、国際協力機構(JICA)がフィリピンで展開している女性の自立支援活動のボランティアスタッフ募集が目に留まり、応募。春休みの約1カ月間参加しました。現地では子育てが一段落した30代、40代の女性たちの雇用創出のため、地域のプラスチックごみを集めてリユースし、雑貨を作る事業に携わりました。商品をPRするためのチラシを作ったり、販売ノウハウを教えるワークショップの運営を手伝ったりしました。活動の中で感じたのが、自分とは異なる文化や考え方を持つ人たちと一つのプロジェクトを進めることの難しさです。運営側は彼女たちのためにいろいろな企画を立てますが、誰一人参加してくれないこともありました。こちらの思いを押し付けるのではなく、相手の意向をくみ取る必要性を実感しました。

現地に行かないと得られないものがあると知った。

帰国後は世界中で新型コロナウイルス感染症がまん延し、海外へ渡航できなくなったこともあって国内の問題に目を向けるようになりました。フィリピンでのボランティア活動を通じて関心が高まったジェンダー問題でも、体だけでなく心を含めた性の多様な側面を視野に入れた「包括的性教育」の日本での実情に関心を持ちました。高校時代を女子校で過ごしたせいか、大学生になって急に「女性」を意識させられる機会が増えたことに違和感を覚えていたこともあったと思います。

3年生になると、オンラインではありましたが日本よりもジェンダー平等の意識が進んでいる台湾との交換留学に参加しました。3カ月間、国立台湾大学で主に英語で行われる授業を受講し、台湾のジェンダー論などを学びました。授業自体はいずれも興味深くて面白かったのですが、オンラインなので先生や他の学生たちと直接交流をすることができなかったため物足りず、実際に現地に行かないと得られないものがあると痛感しました。

ささいな言葉も性暴力になり得ることを伝えたい。

ゼミは国際・多文化ソーシャルワークや共生社会の実現などを専門とする武田丈教授の下で学びました。グループに分かれ、テーマを決めて調査・研究するというスタイルです。私は2人の仲間と共に、日本の「包括的性教育」をテーマに、大学生に対し性暴力被害に関するアンケート調査を行い、その結果と被害から身を守るための対策を盛り込んだ啓発用ハンドブックを作成しました。「性暴力」と聞くと犯罪になるようなことだけを想像されがちですが、体の特徴をからかうといった一見ささいなことも、立派な性暴力です。私自身、心の中では嫌だなと思いながらも場の空気をしらけさせないために我慢して受け流してきたことがありましたが、よく考えてみるとそれは自分を大切にしていないということだと気づきました。友人たちに聞いても同じような思いをした人が何人もいたので、アンケートで広く声を集めて実態を知ろうと考えたのです。

アンケートはウェブで学内の1年生~4年生134人に実施しました。同意のない性行為をはじめ、痴漢、盗撮、ストーカー行為、同意のないボディタッチ、身体的特徴への言葉による嫌がらせを受けたことがあるかと複数回答可能で問いかけたところ、いずれか一つでも経験したことのある人が半数以上いる実態が明らかになりました。加害者は「知らない人」が最多だったものの、「友人」というケースも多く、私たちは被害者にも加害者にもなり得るということを多くの人に知ってもらいたいとハンドブックにまとめました。

卒業論文で賞をいただき達成感が味わえた。

完成したハンドブックは学内で配布し、大学のホームページにも掲載されました。新聞やテレビでも取り上げられ、多くの人に身近な性暴力について考えてもらうきっかけになったと思います。調査の内容はメンバーのうち2人で卒業論文にまとめました。アンケートの結果をいかに分かりやすくグラフや表でビジュアル化するかに悩みましたが、武田教授からアドバイスをいただき最適な形を導き出せました。

さらに、この結果から一歩踏み込んで日本の今後の性教育のニーズも探りたいという思いが生まれたのでもう一本、一人で論文を書きました。追加で、大学生たちがこれまで受けてきた性教育について、学科の先生方の協力を得て授業後にアンケートを配布し、今後の包括的性教育の必要性についてまとめました。2本の論文執筆は大変かな、と思いましたが、興味のあるテーマだからか不思議と苦になることはなく、最後まで楽しみながら取り組むことができました。2本目の論文は学部の優秀な卒業論文に与えられる「あじさい賞」の優秀賞もいただき、達成感も味わうことができ、いい思い出となりました。

お客さまに寄り添いながら一緒に考える。

就職活動は、人とコミュニケーションを取ることが好きだったので営業職を中心に探しました。加えて食への関心が強いので、人を幸せにできる嗜好(しこう)品を扱うメーカーに絞り、世界を近くに感じられる外資系のネスレ日本株式会社に入社しました。現在は、サプライビジネス事業本部マシンビジネス営業部で法人向けのコーヒーマシンの営業や販売促進業務を担当しています。販売代理店と連携して販促プランを立て、さまざまな企業に対してオフィスにコーヒーマシンを置いて社員同士のコミュニケーションの場を設けることを提案することが仕事です。セールスをする上で大切にしているのは、押し売りはしないこと。フィリピンでのボランティア活動で学んだように、良かれと思ってこちらの思いを一方的にぶつけても、それを相手が望んでいるとは限りません。先方の社風などバックグラウンドを理解した上でコミュニケーションの中からニーズを引き出し、相手がしっかり納得できる形で導入いただくようにしています。後日、お客さまから「おいしいコーヒーでいい時間が過ごせています」と笑顔で言ってもらえると、私も幸せな気持ちになれます。これからもお客さまに寄り添いながらコーヒーを介したくつろげる空間やシーン創りを考え、多くの人の幸せにつながる仕事をしていけたらと思います。