人間福祉学部
K.G.

学生 自殺予防に関する理論と実践を積み重ね、夢は家庭裁判所調査官。

人間科学科 3年生
森田 はるのさん
掲載日:2026.02.25

大阪府池田市出身。幼い頃に大病をしたり、父親を亡くしたりしたことで死について考えるようになり、「死生学」を学べる人間福祉学部人間科学科に進学した。「人間福祉国内フィールドスタディ」や藤井美和教授のゼミなど実践と理論の両面から探究する傍ら、チャペルオルガニストや短期海外インターンシップなどにも積極的にチャレンジ。将来は家庭裁判所の調査官を目指している。

死ぬことは生きることとつながっていると感じた。

赤ちゃんの時の大病や幼少の頃の父の死などから、小学生の時は漠然と、中学・高校生になるにつれてより具体的に、死について考えるようになりました。また、「今生きている意味が分からない」「自分は役立たず」と口にする人間が身近にいたことで、高校生からは自殺とその予防にも関心を持ちました。大学で本格的に学びたいと思っていたところ、関西学院大学人間福祉学部に、死を含めてどう生きるかを考える「死生学」を専門とする藤井美和教授がいらっしゃると知り、進路を定めました。

入学後は、理論と実践の両面でさまざまな視点から学びを深め、死ぬことは生きることとつながっているのだと感じています。「生命倫理学」「悲嘆学」「グリーフケア論」など坂口幸弘教授の授業では掲示板を活用し、設定されたテーマについて学生がどんどん書き込んでいく形式で、自分とは異なる視点や考え方を発見する一方で、自分が大切だと考えている点が明らかになりました。また、市瀬晶子准教授の「対人援助コミュニケーション演習」では、人と対話している様子をビデオ撮影し、人の話を聞く姿勢や無意識の相づち、対話の方法など、普段は見ることがない自分の姿を確認、良い点や改善すべき点を見つけることができました。

一度感じた絶望は時間がたっても消えることはない。

実践的な学びのために履修したのが「人間福祉国内フィールドスタディ」です。2年生の春休みには、どういうネットワークを形成すれば自殺予防につながるのかを探ることを目標に、和歌山県白浜町を拠点とする特定非営利活動法人白浜レスキューネットワークで10日間、住み込みで実習しました。同町には自殺の名所とされる「三段壁」があり、そこでの人命救助をはじめ、保護した人たちの社会復帰のサポート、学童保育事業による自殺を選ばない世代の育成などに取り組む団体です。私は、保護され総菜・弁当店で職業訓練中の方と一緒にお弁当を配達したり、学童保育を手伝ったりし、合間にインタビューをさせていただきました。「白浜レスキューネットワークで過ごしていて、自分の考え方や価値観がどのように変化しましたか」と質問すると、多くの人が「変わっていない。心の底には死にたいという思いがある」と答え、「今、死にたいと言う人がいたらどうしますか」という問いには、「そばにいてあげる」「自分がしてもらったように、お金を手渡したい」などと話しました。死にたい気持ちと、自分も誰かを助けたいという思いの両方が心に存在しており、一度抱いた絶望感は時間がたっても完全には消えないんだなと思いました。目標に対する結論は出ませんでしたが、当事者が自分の中の死にたいという気持ちを受容してうまく付き合い、自分にはこういう役割があるから生きているのだと自覚していかない限り、いくら周りの人が生きていてほしいと願っても難しいことが分かりました。そんな人たちを、白浜レスキューネットワークのスタッフや地域の皆さんが常に気にかけ、積極的に関わりながらつながっていく様子を見られたのは大きな学びでした。

「生きる希望とは何か」を考えていきたい。

入学前の希望通り、藤井美和教授のゼミで学んでいます。命を捉える上で基礎となる理論を学んだ上で、7月からはゼミ生が2人1組になって2週連続で授業を担当し、1週目は発表、2週目はみんなでディスカッションをします。私たちのペアはそれぞれ自殺予防、子どもの命に関心があったので、「若者の自殺とその予防」をテーマに、書籍や自殺未遂者の手記、YouTube上の動画などを読み解き、自殺の定義は複雑であること、苦しい状況下で誰の助けも得られなかったことが死に至る大きなポイントであることなどを講義しました。2週目は、相談される・する側で組んでロールプレイをした後、寄り添うということ、生きる希望などに着目して話し合いました。最後に藤井教授から「そもそも生きる希望って何だと思いますか」と問いかけられましたが具体的な答えが浮かばず、まだまだ考える余地を残した講義となりました。また、なぜ自殺してはいけないのかと善悪で考えるのではなく、なぜそういう状況になっていくのかを深掘りした方がいいと助言いただき、私自身が心も体も健康だから「自殺はいけないこと」と捉えたのだと思い至り、興味関心がある分野でも無意識に自分の枠組みで考えているのだと気づかされました。

藤井教授はただ優しいだけではなく、課題には厳しいコメントを返してくださいますし、何かあれば「最近どうですか」「個別で話しませんか」と声をかけてくださるなど、私たち一人一人を気にかけ、しっかり見てくださっているのを感じます。素晴らしい先生と出会えて本当によかったと思っています。

チャペルオルガニストも留学も動ける時に積極的に。

高校時代にコロナ禍を経験したことで、動ける時に積極的に行動しようと気持ちが切り替わり、大学でも掲示や友達から情報を集めチャレンジしています。関西学院大学ならではの活動である学生チャペルオルガニストには、1年生の4月に応募しました。他の人に比べるとピアノ歴は3年ほどと浅いのですが、教会に通っていたのでオルガンや讃美歌に親しみがありました。1年間はオルガニストの先生に讃美歌や前奏、後奏などの指導を受け、2年生から担当する学部のチャペルアワーで週1回、奏楽しています。礼拝なので、完璧に弾くことよりも歌う人に合わせた演奏を心がけています。

また、1年生の春には「語学研修」でオーストラリアのパースに、3年生の夏には「短期海外インターンシップ」で1カ月間ベトナムに行きました。ベトナムでは日本人が運営する習い事教室で、現地の日本人やベトナム人の子どもたちに日本語の授業、ろうそくづくりやたこ焼きなどのワークショップの運営を行いました。その中で、物事を順序立てて進め、周りのスタッフにも働きかけてアレンジしながら期限内に終えるような仕事はうまくできる半面、集団での授業において個々の子どもたちの反応に逐一対応することなく、メリハリをつけて全体を引っ張っていくのは苦手だと分かりました。職場というこれまで経験したことがない環境に身を置き、子どもたちや上司・同僚との関係性の中で自分の向き、不向きを知ることができたので、これからのキャリアに生かしていくつもりです。

生死や人生についてオープンに議論できるのがうれしい。

授業で、行政機関やNPO法人、福祉施設などで働くゲストスピーカーの話を聞き、一般企業で利益を追求するよりも公の機関で貢献したいと思い公務員を目指すようになりました。3年生の春学期、掲示していた「家庭裁判所調査官について知ろう」というチラシを見て興味を持ったのが、国家公務員である家庭裁判所の調査官です。少年事件や家事事件において、当事者やその家族などから話を聞き取ったり、事実関係を調査したりして審判や調停に必要な報告書を作成します。授業や実習で自殺予防について考え、絶望や挫折から立ち直る難しさを学んできたので、その内容を頭に置いて、さまざまな問題に直面している人たちの助けになりたいと思っています。9月に神戸家庭裁判所のワークショップに参加したことで、目指す気持ちがより強くなりました。

普通に生活していると、死ぬことや生きること、自分の人生について口に出しづらい、話す機会が少ないように思います。でも人間福祉学部では、自分の経験や考えをオープンにできるのが魅力です。自分の考え、また考えがはっきり定まっていなくても死生学に対する興味関心をしっかり持ち、積極的に議論したいと思っている学生たちが集まっており、そういう仲間がいるのが、この学部に入って一番うれしかったポイントです。私のように、小さい時から死に対する思いを抱えてきた人はもちろんですが、「自分の人生って何だろう」とか「生きている意味って何だろう」といったことを深く考えていきたいと思っている人にもおすすめです。