あたたかな まなざしを「娘が幼稚園児だったころ」(2016年7月)

娘が幼稚園児だったころ

 先日、保護者会講演会で井原忠郷先生のお話を聞き、娘の幼稚園時代を妻の育児日記を見ながら思い出してみました。

 ある朝のこと。長女の叫び声が聞こえ驚いて駆け寄ると、床一面に小さな虫が……。何とそれは数えきれない程のカマキリの赤ちゃんでした。二女が姉の机の下でそっと育てていたカマキリの卵(らん)鞘(しょう)(卵)から幼虫が孵化したのです。「しまった!忘れていた」唖然とする妻と長女とは正反対に「かわいい~産まれたんだね」と大喜びの二女。それからは、逃げ足の速いカマキリの赤ちゃんを必死に追いかけていました。200匹はいたであろうカマキリを何とか庭に逃がしてあげ、ほっとした後、笑いが止まらなかった4人でした。
 娘たちの好奇心に日々驚かされつつも、人の心を和ませる虫たちと出会う度に目を輝かせていく姿を嬉しく見守っていました。

 夏休みになると、網と虫籠を片手に公園へ。ラジオ体操後のセミ取りのスタートです。夕方、土から出てきたクマゼミの幼虫をそっとカーテンにのせ、私と一緒に美しい羽化の様子を目をこすりながら観察した事もありました。
 前年の夏より育てていたカブトムシが成虫になると、娘は昆虫ゼリーをあげて世話をしていました。羽根を広げるカブトムシを見て「空が飛びたいの?」と話しかける娘の姿が。狭い飼育ケースの中で体をぶつけ飛べない様子に、これではいけないと思ったようです。どうすればいいかと考えた後、山へキャンプに行った際に逃がしてあげることにしました。それからは、娘は捕まえたカブトムシは一日で逃がし、家で育てる事をしなくなりました。

 垣根に入ったボールを探していたはずが虫の卵探しに、なんてこともよくありました。テントウムシの卵を見つけ、幼虫、蛹に…。やがて黄色の羽根が出てきて赤色に変わって…と驚きの連続。その後も何度も公園で見つけては家で育て、自分の掌から大空へ飛び立つテントウムシに「元気でね~また遊びに来てね~」と見送ることを繰り返していました。

 虫、花、動物たちと多く触れ合う中で、その不思議な姿や生きざまを目の当たりにして、感動を覚えずにはいられない毎日だった事でしょう。私も妻も先のことを思いめぐらし不安や心配でいっぱいになってしまうこともありましたが、あるがままの姿を受けとめてあげたいと思っていました。
 小さな虫の命に心を留め、懸命に育て見守り、心を通い合わせることのできる世界の中にいた娘も今は高校生。これからもたくさんの夢を育んでいってほしいと願っています。
 

(アウトドア派園長:あかぎ としゆき)