保健だより(2014年12月)

こどものあじ、大人の味

2014年12月22日 ~園医・芦田先生から~

 早いもので今年も師走を迎えました。年々歳々時間の過ぎるのが早くなっていく気がします。おそらく自分の年齢が上がっていっていることが関係しているのでしょう。残りの自分の人生がどれくらいなのか、そんなことを考えているとあっという間の12ヵ月です。
 ちょっと湿っぽい話になってしまいましたので、本題に戻しましょう。

 これから年末、年始にかけて、いろいろなごちそうが待っています。クリスマスはチキンにケーキ、お正月はおせち料理が代表的なものでしょう。クリスマスに鍋物を食べるお家はあまり多くなさそうです。やはり、キリスト教と水炊きはちょっと異質ですよね。そして年が明けるとおせち料理です。ごまめ、かずのこ、かまぼこ、こんにゃく、くわい、ブリの照り焼き、ゆずがま、それに野菜の炊き合わせ、そうそう栗きんとんを忘れてはいけません。おせち料理をつまみながらちびちびお酒をいただく幸せ、それを想像するだけで思わず笑みが浮かんでしまいます。
そんなおせち料理ですが、こどもの頃はそれほど好きではありませんでした。自分の好きな献立は入っておらず、毎回毎回同じ重箱が出てくる(こどもは元来飽きやすいものです)ことにうんざりした覚えがあります。TVで「おせちもいいけどカレーもね」なんて言うカレーのCMが流れるのを横目で見ながら、おせちが出なくなる3が日を心待ちにしたものでした。
 でも、小学4年生の頃からおせち料理のおいしさがわかるようになりました。ごまめのかみごたえと苦み、大根の中から滲みだしてくるほんわかとした甘味、毎年食べ続けることで、そんなちょっとしたことに気づく味覚が育っていきました。もし「こどもが食べられないのなら、もうおせち料理はやめておこう」となっていたら、私はおせち料理独特の味わいを知ることなく大人になっていたでしょうし、大人になってからもおせち料理のことを好きになれなかったかもしれません。

 最近若い人のビール離れが話題になっています。ビール独特の苦みが敬遠されているからです。苦いものを味わうことも経験なのに、そんな経験をこどもの頃にしていないから、味覚がいつまでたっても育っていかないのです。ワサビの辛味についても同じようなことが言われています。

 こどもの好みに合わせて料理を作ることも大事なことです。でも、こどもの好きなものばかりを与えるのではなく、あえて好みでないものを献立の中に組み入れて、味覚の発達を促すことも必要だと思います。長い目で見ると、そのような意図を持った食事を供することも親の務めではないでしょうか。
 

芦田 乃介 (関西学院 聖和幼稚園園医)