社会学研究科

共同研究会

社会学研究科では院生で構成される共同研究班が、以下の研究会・勉強会を開催しています。
ご興味がおありの方は、勉強会・研究会にご出席ください。
関西学院大学社会学研究科に所属されない方のご参加も歓迎いたします。

2024年度

第3回院生企画研究会

共同研究班『限界芸術の未来』を開催します。

【日時】
 2024年12月14日(土)  16:00-18:00
【場所】
 Standing Bar NEO(大阪府大阪市北区曽根崎2-14-10)
【講師】
 粟谷佳司氏(立命館大学衣笠総合研究機構客員研究員)

【概要】 
本年度のマルクス研究会では、現代的な限界芸術であるHip-Hopやインターネット音楽が強いられている制約について検討する。
鶴見俊介は限界芸術論において、芸術を「純粋芸術」「大衆芸術」「限界芸術」の3つに分類し、特に非専門家による表現としての限界芸術に注目した。そして、粟谷氏は著書において限界芸術としてのフォーク・ソングを分析した。本研究会では、現代的な限界芸術であるHip-Hopやインターネット音楽を分析対象として挙げる。これらのジャンルは当初、誰もが参加できる開放的な文化として発展し、その後商業化されて大衆芸術としての側面を強めていった。しかし、路上やクラブなどでは現在も限界芸術としての実践が継続されている。2000年代以降、音楽活動の場はデジタル空間へと移行し、特に2010年代にはYouTubeなどのプラットフォームに集約された。そこではAIによる権利管理が厳格化され、限界芸術の特徴である「サンプリング」や「替え歌」といった行為が制限されている。類似した形式を共有するVaporwaveなどの新しいインターネット音楽も登場したが、これらもプラットフォームによる規制に直面している。これらの文化は現実世界での活動やリアルメディアでの展開で回避を試みているものの、インターネットを主な活動基盤とする性質上、上記の根本的な困難に直面している。
当日は、限界芸術がこれまでにはない形で制約されている現代において、鶴見の限界芸術論はいかに適用できるのかに注目して議論を行う。


主催:マルクス研究会
共催:関西学院大学社会学研究科 大学院生サポートプログラム(GSSP)事業

第2回院生企画研究会

共同研究班『博物館から読み取れる文明』を開催します。

【日時】
 2024年12月2日(月)  18:00-20:00
【場所】
 オンライン(Zoom) 
【講師】
 韓 敏氏(国立民族学博物館 教授)

【概要】 
 日本国立民族学博物館は文科省所轄の学術研究機関の一つであり、世界の人々の暮らしや文化に触れることができる世界最大級の民族学博物館でもある。
 本講義は人類の諸文明や世界の諸民族の文化がどのように展示・研究・伝承されているのかを紹介する。以下の三つの側面を通して、国立民族学博物館が50年間にわたって、文化の多様性と文明共生の理念のもとに、フォーラム型ミュージアムを目指して歩み続ける過程とメカニズムを明らかにする。

具体的に
 1.人類学的フィールド調査に基づく世界諸民族の標本資料の収集と展示
 2.持続可能な研究システムの構築
 3.教育、伝承と社会連携

主催:「博物館から読み取れる文明」共同研究班
共催:関西学院大学社会学研究科 大学院生サポートプログラム(GSSP)事業

第1回院生企画研究会

共同研究会「文化遺産とその接続可能性」を開催しました。

【日時】
 2024年11月8日(木) 16:00-17:30
【場所】
 関⻄学院大学大阪梅田キャンパス1401号室
【講師】
 濱野 健氏(北九州市立大学文学部教授)

【概要】 
 本研究会では、Urryの「オフショア化」理論を用いて、日本の地方における製鉄所や工場、発電所などのオフショア的建築物の機能を分析することを目的とする。これらの建築物は交通の便や都市のリスク回避を優先し、地方の生産能力や歴史的文脈を無視して設置される。ここでは、資本家は自身/富を自由に移動可能な権力者であるが、労働者は自由に移動できず、これらの雇用に依存せざるを得ない。Urryは、モビリティ技術の発達がこれらの格差を拡大すると示唆している。濱野(2023)は、八幡製鉄所が世界遺産登録を契機に観光資源として翻訳され、様々なアクターを結びつける境界物となったと論じる。しかし、これは「オフショア化」理論に基づけば、製鉄所という本来土地の文脈になかったオフショア的建築物を、世界遺産というオフショアな枠組みを契機に、観光資源というオフショアなモノへ翻訳したと解釈できる。ここで製鉄所は、アクターを結びつける境界物である一方で、地方を脱領土化し再領土化するものとして機能し続けている。本研究会では、他の地方における事例とも比較しながら、オフショア的建築物の機能について理論的に考察する。

主催:ANTとモビリティの研究会
共催:関西学院大学社会学研究科 大学院生サポートプログラム(GSSP)事業

2023年度

研究会『「今、マルクスを読むということ」を考える』を開催します。

【日時】
 2023年12月16日(土) 14:00 – 16:00
【場所】
 オンライン(Zoom) 
【講師】
 石川洋行 氏(八洲学園大学他非常勤講師)
【参加方法】
以下のリンクから参加を受け付けております。
参加受付用リンク: https://forms.gle/GmhzHfVsMduDzzdHA
後日、ご登録いただいたメールアドレスにZoomのURLを記載したメールを送信させていただきます。

【概要】 
 停滞閉塞した社会、自己肯定感を削がれた人々、そして「みせかけ」溢れる消費社会。人々の多くが社会変革への意志を失ったかにみえる中、シニシズムに堕する事なく未来を見据えることは可能なのか。かつて「疎外/物象化」から経済関係のカラクリを説明したK・マルクス、そして進展する戦後消費社会を見つめ、ポストモダン記号論を鮮やかに社会学に輸入したJ・ボードリヤール。社会理論の二巨星を架橋し、とりわけ「余暇」からこの問題に切り込んだ古典『消費社会の神話と構造』を読み解くことで、思想史的視点も交えながら「理論との付き合い方」を考える。このことは必然的に、社会理論の意義と限界、そこに凝縮された歴史の証言、戦後日本社会への応用可能性も自ずと見えてくるだろう。多くが「無党派」を自認する現代に、社会運動は可能かという問題に、「消費社会と戦後日本」をテーマに研究を続ける発表者が応答する。

※本研究会の様子を、共同研究班のメンバーが後で研究会の内容を振り返る目的で録画させていただきます。 アーカイブとして録画の公開をすることはごさいません。予めご了承お願い申し上げます。


主催:「マルクス」研究会
共催:関西学院大学社会学研究科 大学院生サポートプログラム(GSSP)事業

研究会『ポストコロニアルな台湾と公/娼たちの闘い』を開催します。

 【日時】 
 2023年10月29日(日) 15:00-17:00
 【場所】
 オンライン(Zoomにて開催・参加者は申込要)
 【講師】 
福永玄弥氏(東京大学教養学部附属教養教育高度化機構Diversity&Inclusion部門准教授)
【参加方法】
以下のリンクから参加を受け付けております。
参加受付用リンク:  https://forms.gle/pxChbaz2L3ERP2fp8

【概要】 
東京大学教養学部附属教養教育高度化機構Diversity&Inclusion部門准教授の福永玄弥氏をお招きし、ご講演いただくことになった。福永氏はフェミニズム・クィア理論・東アジアの歴史を専門としており、インターセクショナリティの視点を重視して研究をしてこられた実績がある。今回の発表では、大日本帝国と中国国民党による「重層的な植民地主義」という観点から、戦後台湾で再構築された公娼制の歴史を批判的に考察しつつ、現代日本におけるアカデミアのあり方を再考する機会としたい。
問題の発端は、1997年9月4日、民主化を牽引する政治エリートとして脚光を浴びた陳水扁(民進党)台北市長が公娼制の廃止を宣言したことに始まる。それにより、市内で就労する128名の公娼が職場を追われた。失職した元公娼の女性たちは労働の継続を求めて台北市を相手に抗議運動を展開したが、当時のフェミニストは台北市の公娼制廃止を支持する立場を表明した。
当時の主流派フェミニストらは公共空間からの「ポルノ一掃」を進めていたからである。一方、公娼を支持して抗議運動に参与したクィア・フェミニストや労働運動団体は英語圏のフェミニスト言説を参照し「労働としてのセックスワーク(Sex Work is Work)」を主張した。SWASH(日本)を含む国外のセックスワーカー団体もこれを支持した。
しかし2001年には台北市の公娼制は廃止され、セックスワーカーたちは「地下」に潜り込み、危険で劣悪な環境で働くことを余儀なくされるようになった。
本報告では、以上の今日の問題の発端にある台湾の公娼制を帝国日本と中国国民党による「重層的な植民地主義」の歴史に位置づけつつ、公娼たちの労働権を求める闘争を狭義の「労働争議」、広義の「社会運動」と見做し、公娼らが闘っていた対象を明らかにする。そして、東アジアにおけるポスト/コロニアルな歴史的文脈に公娼たちの運動を位置づけて考察し、脱植民地主義のプロジェクトと性政治の関わりを検討することを試みる。
最後にふたたび研究班の趣旨に絡めていうのであれば、一見すると現代の日本を生きる人々と台北でのセックスワーカーによる抗議運動は無関係である。とはいえ、東アジアが共有する歴史からその関わりを見出すことができず「無関係」と見てしまうことは日本そして日本のフェミニズムにおける脱植民地化の議論がほとんど不在であることを抜きには考えられず、このようなインターセクショナルの観点の不在はアカデミアにおける諸問題とも重なるのである。

主催:「大学の革新とアカデミア再考」共同研究班

2022年度

共同研究班『文系大学院を考える-修了と初職獲得の関連から-』を開催しました。

 【日時】 
 2022年11月19日(土) 13:30-15:30
 【場所】
 オンライン
 【講師】 
平尾 智隆氏(摂南大学経済学部准教授)

 【概要】 
日本の大学は岐路に立っている。少子化がさらに進むと予測されている状況における大学の社会的役割は不透明といえよう。国公立、私立含め多くの大学は規制緩和以降(1990年代)、混沌を極めている。少子化の流れに逆行して、学部の新設、定員の増加、入試制度の拡充などに走っている。諸大学は研究機関としての大学という本質を見失っているように見える。そのような中で、社会における大学の役割はどうあるべきだろうか。 本研究会では大学において研究者養成、研究機関としての側面が強い「大学院」、特に今回は文系大学院を見ていきたい。そこで今回は平尾氏をお招きし、文系大学院(修士課程)について考えていく。平尾氏は教育経済学、労働経済学がご専門で、労働市場における教育効果や学歴ミスマッチ、キャリア教育などについて研究されている。本研究会では、「初職獲得における大学院学歴の効果」について講演いただく。文系大学院修了と初職獲得の関連から、大学側、労働市場側、在籍者・修了者など様々なアクターの現状も踏まえつつ、文系大学院の教育効果、教育内容、展望などについて考えるとともに議論していく予定である。

主催:「大学論を再考する」共同研究班
共催:関西学院大学社会学研究科 大学院生サポートプログラム(GSSP)事業