聖書植物 -吉岡記念館ベルスクエア

[ 編集者:吉岡記念館       2010年8月1日 更新  ]

ギンバイカ -Myrtus communis-

聖ギンバイカ

植栽場所:      吉岡記念館南東側ほか周囲
学名標記:      Myrtus communis
聖書等による標記: 『ミルトス』

 ミルトスは、フトモモ科ギンバイカ属の常緑灌木で、日本では普通ギンバイカ(銀梅花)と言います。ミルトスはラテン語の音写で、ヘブライ語ではハダスと言います。エステルは別名をハダサと言いますが(エステル2:7)、これはミルトスの意味です。ミルトスは低木で、成長しても2mくらいですが、条件がよければ10mほどの高さになることもあります。葉は3~5cmくらいの濃い緑色で、夏には白い美しい花が咲きます。花の後には黒みがかった青色の実がなります。これは香りが高く、生のままで、また乾燥させて食用とし、また香水用にも使われます。また、これは鎮痛剤としても使われました。

 ユダヤ人は今日でも仮庵祭の時にこの木の枝を用います(ネヘミヤ8:15)。聖書ではこれは、神の寛大さの表象ともされました。ユダヤには、アダムが楽園を追われたとき、食物の長として小麦を、果物の長としてなつめやしを、香る花の長としてミルトスを携えることを許されたという伝説があります。ギリシア人は、この木が常緑のゆえに愛と不死の表象とし、ローマ人はこれを月桂樹と合わせて勝利者の冠としました。(『関西学院チャペル週報』より)

ゲッケイジュ  -Laurus nobilis-

聖ゲッケイジュ

植栽場所:      吉岡記念館東側
学名標記:      Laurus nobilis
聖書等による標記: 『ゲッケイジュ』

 南欧原産のクノスキ科ゲッケイジュ属の常緑中高木。学名は、Laurus nobilisで、Laurusは「緑」、nobilisは「高貴な」の意。ヘブライ語はオーレンで、聖書ではイザヤ書44:14に出てきます。ただし新共同訳では「樅の木」、口語訳では「香柏」と、新改訳と岩波訳では「月桂樹」と訳され、英語でもpineとかlaurelなどと訳され、同定が難しいものです。

 月桂樹はイスラエルに自生し、カルメル山やガリラヤに多く見ることができます。大きなものは3mにも及び、葉は長楕円形でなめらかで革質をなします。雌雄異株で、雌株は開花後10月頃に黒紫の実がつき、大きなものはオリーブの実くらいになります。

 上品な木として庭園樹に多く用いられ、そのひこばえから出た長枝を用いて月桂冠が作られ、マラソンの勝利者にかぶせたのは有名です。それは、その葉の香ばしさと常緑性が繁栄のしるしと考えられたからでしょう。葉はベイリーフと言い、スパイスとして煮込み料理やピクルスなどに用い、しぼった月桂油は整髪料やソースの香料とされます。また、葉や果実は薬用として健胃や利尿、またリウマチなどに使われます。(『関西学院チャペル週報』より)

サフラン -Crocus sativus-

聖サフラン

植栽場所:      吉岡記念館東側
学名標記:      Crocus sativus
聖書等による標記: 『サフラン』

 アヤメ科サフラン属の球根植物で、クロッカスの一種です。学名をCurocus sativusと言います。ヘブライ語ではカルコムと言い、聖書には雅歌4:14に1回出るだけです。そこでは、ナルドやシナモンなどと共に「すばらしい香り草」の1つとして言われています。アラビア語ではザファランと言い(「黄色」という意味)、英語のsaffronの語源になっています。花茎は10cm内外で、11月ころ茎頂に香りの良い約3cmの淡紫色の美しい花をつけます。葉は線形で長さ20~30cmになります。花柱の上半部を採集し乾燥したものもサフランと言い、カロチノイド系色素のクロチンを含み、料理の色づけに使用されます。薬用としても鎮静、鎮痛、通過剤として用いられます。サフランを1g得るためには150個の花を採集しなければならず、非常に高価です。

 古代人は、劇場の床に、サフランをぶどう酒と混ぜて敷き、また結婚式に広く使われたと言われています。また、香水としても使われ、客を家に迎え入れるときに、その衣服に振りかけた、と言われています。
 日本でも秋咲きの観賞植物として栽培され、鮮やかな赤い花柱は3本に分かれています。(『関西学院チャペル週報』より)


ザクロ -Punica granatum-

聖ザクロ

植栽場所:      吉岡記念館東側
学名標記:      Punica granatum
聖書等による標記: 『ザクロ』

 吉岡記念館の周りに植えられている植物の2回目はざくろです。これはザクロ科の落葉灌木で、樹高3~5m、5月頃に開花し、花弁は6つ、赤色の筒状の萼があり、枝には普通とげがあります。果実は球状で、熟すと裂けて赤い種子が現れます。果実は新鮮なまま食用にしたり、菓子やワインにもし、果皮は乾かして薬用に使われました。また、花は赤い染料の原料ともされました。

 聖書では、ざくろはエジプトの優れた果実のひとつに数えられ(民数記20:5)、モーセに遣わされてカナンの地を偵察した斥候はぶどう、いちじくと共にざくろを携えて帰り(民数記13:23)、カナンの産物に数えられ(申命記8:8)、イスラエルを祝福する7つの産物のひとつとされました。ざくろは多数の種子を持つことから肥沃や繁栄の象徴とされ、その理由からソロモンの神殿や大祭司の衣服の装飾とされました(列王記上7:42、出エジプト記28:34)。また、その赤い花は美しい女性を表現するのに用いられました(雅歌4:3)。

 新約聖書にはざくろは言及されていませんが、イエスも出入りしたとされているカファルナウムのシナゴーグ跡には、ざくろのレリーフが見つかっています。(『関西学院チャペル週報』より)

シラカシ -Quercus myrsinaefolia-

聖シラカシ

植栽場所:      ランバス記念礼拝堂東側
学名標記:      Quercus myrsinaefolia
聖書等による標記: 『カシ(オーク)』

 ブナ科コナラ属の樹木で、樹高が10~13mに及びます。旧約聖書で「カシ」の意味で使われているヘブライ語は、エーローン、アッローン、エーラー、アッラーなど多様ですが、パレスチナにはカシが数種類あり、イスラエル人はこれらの木を表すのに数種の語を使用していました。アブラハムがメソポタミアからカナンに移動し、シケムに到着したとき、モレの樫の木のところで祭壇を築いたとありますが(創12:6 - 7)、これはセイチガシ(Quercus calliprinos)と言われる常緑の樫の木と思われます。また、その後天幕を移して、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところにも祭壇を築きましたが(13:18)、今でもヘブロンの町外れのギリシア正教の教会の庭にセイチガシの大木が保存されていて、「アブラハムの樫の木」と呼ばれています。一本立ちのものは、聖所や墓地の目標とされました(ホセ4:13,創35:8)。材質は堅く、彫刻、船のオールなどに使用されました(イザ44:14,エゼ27:6)。

 花は3~4月に開花し、果実は12月頃に熟します。たくさんの雄花を尾状花序につけ、まばらに上に穂状花序についている雌花の下に垂れ下がっています。葉は卵形から長楕円形で、縁は歯状です。吉岡記念館横の「ベルスクェア」に植えられているのは、シラカシとボウガシです。(『関西学院チャペル週報』より)

テッポウユリ -Lilium longiflorum-

聖テッポウユリ

植栽場所:      吉岡記念館東側
学名標記:      Lilium longiflorum
聖書等による標記: 『野の花(ユリ)』

 イエスが山上の説教で、栄華を極めたソロモンとの対照で言われた「野の花」(マタイ6:29)は、ギリシア語ではクリノンです。これは、旧約聖書において「ゆり」と訳されているシュウシャン(ショーシャンナー)の七十人訳の訳語です。山上の説教は、新改訳では「野のゆり」と訳され、英語の訳でも多くはlilies of the fieldと訳されています。しかし、このクリノンは実際のゆりよりも広い範囲の植物を指し、アネモネのことであるというのが有力な説です。

 アネモネは、キンボウゲ科イチリンソウ属の多年生草本で茎高15~30cmで、4~5月頃赤色、ピンクなどいろいろの色の花をつけます。花は直径4~8cmで、花びらの基は黒っぽく、周りは白くなっています。パレスチナの至る所に生育し、平原に多く、特にガリラヤ湖畔に美しく咲きます。花は朝開き、夕方近くなると閉じてしまいます。
 ゆりは、ユリ科ユリ属の多年草で、旧約聖書では美や繁栄の象徴として出てきます(雅歌2:1,4:5,ホセア14:6など)。これはマドンナ・リリーと言われるもので、白い花をつけ、キリスト教では純潔の象徴とされ、受胎告知によく描かれています。

 なお、吉岡記念館横の「ベルスクエア」に植えられている「野の花」は、アネモネとカサブランカ、テッポウユリです。(『関西学院チャペル週報』より)

ヘデラ・ヘリックス -Hedera helix-

聖ヘデラリックス

植栽場所:      ランバス記念礼拝堂南側
学名標記:      Hedera helix
聖書等による標記: 『西洋ツタ』

 ウコギ科キヅタ属のつる性常緑植物で、学名をHedera helix(セイヨウキヅタ)と言います。ギリシア語ではキッソスと言い、聖書においてはただ1箇所マカバイ記二6:7に出てきます。そこには「毎月、王の誕生日には、いけにえの内蔵を食べることを、有無を言わせず強制され、ディオニソスの祭りがくると、つたの冠をかぶり、ディオニソスのために行列に参加することを強制された。」とあり、異教礼拝を強いられたユダヤの民は、豊饒と酒の神ディオニソス(バッカス)ゆかりのつたを冠にさせられたというのです。

 さらに、パウロが「朽ちる冠」と言っているのは(-コリント
9:25)、このつたで作られたものが意図されているようです。古代ギリシアの大競技祭において、競技者たちはつたで作られた冠を求めて競い合いましたが、パウロはこの冠を朽ちる冠とし、「朽ちない冠」を得るようにすることを勧めました。

 イスラエルでは現在ガリラヤ上部、サマリアの一部に見られますが、余り多くない植物です。
 垣根や家の装飾に栽培されています。常緑ですので、霊魂の不滅の象徴ともされました。(『関西学院チャペル週報』より)

ミモザ -Acacia dealbata-

聖フサアカシア

植栽場所:      吉岡記念館西側
学名標記:      Acacia dealbata
聖書等による標記: 『アカシア』

 マメ科アカシア属の木で、非常に多くの種類があり、普通直径40~50cm,樹高5~10mに至ります。鋭いとげがあり,自らを防御しています。シナイ半島やエジプト、死海やその南方の荒れ野に生育し、乾燥した荒れ野に枝を広げ,旅行者には憩いの木陰を与えてくれます。葉は羽状複葉で,春先に黄色い花をつけ芳香を放ちます。丸まったねじれた鞘の中に丸い種子があります。街路樹などで一般にアカシアと呼ばれているものは別の種類でニセアカシヤ(ハリエンジュ)と言います。

 材はオレンジ色で,堅く重く,病虫害に強く腐朽しないので、幕屋や契約の箱の材料とされました(出25:5,10)。エジプトでは、アカシヤは永世の象徴とされ、ミイラの棺にも用いられました。

 旧約聖書には28回ほど言及されますが、単数(シッター)で出るのは1回のみで(イザヤ41:19)、あとはすべて複数(シティム)です。シティムは地名でも出ますが(ヨシュア2:1)、アカシヤの生育と関連があったのでしょう。

 木から出るガムは水にとかして目の病などの薬用に、乾燥して粉末にした木の皮は傷の消毒薬に、種子はそのまままたは粉にして下痢止めにされました。(『関西学院チャペル週報』より)

モミノキ -Abies firma-

聖モミノキ

植栽場所:      吉岡記念館北側
学名標記:      Abies firma
聖書等による標記: 『モミノキ』

 エゼキエル書31:8において新共同訳聖書で「樅」と訳されている語は、ヘブライ語でベローシュですが、この語は他の所では大体「糸杉」と訳されています(王上5:22,詩104:17,雅1:17,イザ14:8,41:19,エゼ27:6,ホセ14:9など)。新改訳聖書では多くは「もみの木」と訳されています。日本で「樅」というとクリスマスツリーに用いられるマツ科の常緑高木をさすが(吉岡記念館横の「ベルスクウェア」に植えられているのもこれ)、聖書に出るのはこれとは別の種類の糸杉のようです。

 糸杉は、ヒノキ科イトスギ属の針葉樹で、南ヨーロッパ原産です。学名をCupressussempervirensと言いますが、キプロス島の名はこの木の名をとってつけられました。樹高15~18mに達し、筆を立てたように先細りに空に伸びる姿は美しいものです。果実は小さな球形をしており、乾くと亀甲形の亀裂を生じます。材質は堅く、船材(エゼ27:5)や神殿の床(王上6:15)などに用いられました。

 エジプトではこれが棺材として用いられました。またこの木の樹形から、多産の象徴となり(ホセ14:9)、美しさのたとえとされました(雅1:17)。この枝からはイトスギ油が採取され、香料や咳止めに用いられています。(『関西学院チャペル週報』より)

ヤナギハッカ -Hyssopus officinalis-

聖ヒソップ

植栽場所:      吉岡記念館東側
学名標記:      Hyssopus officinalis
聖書等による標記: 『ヒソプ』

 シソ科ハナハッカ属の多年草です。イスラエルの山野の至る所に自生し、5~10月に小さな淡紫色の唇状の花をつけます。ヘブライ語ではエーゾーブと言い、エジプト脱出の時に、犠牲の血をこれに浸して、鴨居と入り口の二本の柱に塗ったとされています(出12:22)。またソロモンは、「レバノン杉から石垣に生えるヒソプにまで」樹木について語った、と言われています(王上5:13)。またこれは、清めの儀式にも用いられました(レビ14:4,詩51:8)。また、ヨハネ福音書19:29では、イエスが十字架上で息を引き取られる前に、人々が酔いぶどう酒を含ませた海綿をヒソプにつけて、イエスに差し出した、と言われています。
 これは、花と葉に芳香があり、副食物や薬用ともされます。清めの儀式に用いられたことから清いことの象徴ともされます。

 現在ヒソプと呼ばれているハーブは、ヨーロッパで栽培されているものでヤナギハッカと言われるものですが(ベルスクエアに植えられているのもこれ)、聖書に出るのはこれとは別の種類の学名をMajorana syriacaというものです。(『関西学院チャペル週報』より)