社会学研究科のススメ_電子書籍版
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関せき 嘉よし寛ひろて、理論研究を中心に、一般の人びとの「社会参加」のあり方について研究してきました。社会運動論や都市論、空間論などの文献を読みながら、資本主義システムと私たちの生活世界の関係(たとえば、生活世界の植民地化)について考える中で、ボランティアや市民運動に関心を持つようになりました。 このような研究対象に関心を持つようになったのは、やはり、大学院生時代に起きた阪神・淡路大震災が大きく影響しています。ここ20年ほどは災害復興での住民の動きや学生などのボランティアの関わりを中心に研究しています。 2011年3月に発生した東日本大震災では、直後から被災地にほかの研究者や学生たちと一緒に入り、ボランティア活動や地域の人びととの交流などをおこなっています。調査遂行のために被災地に入るというよりは、支援活動や交流活動を通じて問いを発見し、それについて地元の方々や研究者と議論しながら研究を進めるという研究スタイルを取っています。現場では、第三者として参与観察するというよりも、自分もその現場での一メンバーとして積極的に関わり、現場の変容を促そうとします。そして、その変容自体も研究の対象としています。 たとえば、東日本大震災から通い続けていた被災経験のある方との話しで、被災という体験が、自明性の解体に当たるということに気づきました。そこから、私たちは自明性の再構築に向けて、外部者がいかに関われるのか、なぜ外部者が関わるのかということについて、実践の中で考え、実践を変容させていっています。 このように、研究そのものは時間をかけて行っています。大切にしていることは、現場での声の多様性に目を向けるということです。とりわけ、全体社会システムにおいては看過されがちな現象に現代社会を理解する鍵があると考えています。そのためには、個々人や諸集団のミクロな動きと社会のマクロな動きとのつながりを忘れないということが大切だと考えています。 また、最近はこのような災害復興に関わる研究だけではなく、まちづくりにも関心を持っています。個人化した現代における共同性の創出において、イベントや若者が果たす役割について実際のまちづくり活動に関わりながら、考えています。そこでは、住民と外部支援者を媒介する存在や場の必要性に注目しています。 方法論としての参与観察、フィールドワークとともに、理論的には最近はケアの倫理や現象学的社会学にも関心を持っています。これらの理論は人と人とが関わることで生じる空間を説明する重要な論点を提供してくれると考えます。 大学院のゼミでは、災害やボランティアなどに通じる、支援や社会参加などをキーワードにしています。受講生それぞれがもっている関心を共有し、いろいろな観点から研究を仕上げていくことを主眼に置いています。関 嘉寛(2016)「なぜ、遠くから学生は野田村に行くのか―学生関 嘉寛(2015)「なぜ、東北に行くのか : 震災を社会学するとは?」『ソシオロジ』, 59(3), 91-97関 嘉寛(2013)「安全・安心の科学:科学知とローカルな知との関 嘉寛(2013)「東日本大震災における市民の力と復興―阪神淡関 嘉寛(2008)「復興支援のこれまでとこれから」菅磨志保山関 嘉寛(2008)「災害ボランティアやNPOがそこにいること」菅関 嘉寛(2008)『ボランティアから広がる公共空間』(梓出版社)況についてはFacebookの「関学関ゼミ9th」などを参照してください。心-周辺の分断から考える」『フォーラム現代社会学』(関西社会学会), 15, 92-105ボランティアを「語り」から考える」飯・関 編著『たちあがるのだ―北リアス・岩手県九戸郡野田村のQOLを重視した災害』(弘前大学出版会), 第4章共生的な関係」西山哲郎 編著 『科学化する日常生活』世界思想社, 第6章路大震災/新潟県中越地震後のボランティア活動―」舩橋晴俊・田中重好・正村俊之 編著『東日本大震災と社会学―提起された〈問い〉をめぐって―』ミネルヴァ書房,第3章下祐介・渥美公秀・『災害ボランティア論入門』弘文堂, p.204-p.210磨志保・山下祐介・渥美公秀『災害ボランティア論入門』弘文堂, p.242-p.24933 研究・教育内容 大学院時代は、フランクフルト学派などの批判理論をベースとし 代表的な著書・論文等関 嘉寛(2016)「東日本大震災における復興とボランティア : 中 研究紹介のホームページなど追加情報大学院に向けてのHPなどは特にないですが、学部の教育・研究状専門分野・キーワード⃝ボランティア⃝災害・防災⃝まちづくり⃝外部者支援⃝参与観察教授

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