大おお岡おか 栄え美み学(国際社会学)を問題関心の出発点として、カナダをフィールドに研究をスタートさせました。移民政策・難民政策の展開やシティズンシップ教育、それらをめぐる政治言説の分析などから、多文化社会の中の「内」と「外」、「構成員」と「非構成員」の線引き、包摂と排除の境界をあぶりだす分析を重ねてきました。同時に、移民自身のもつネットワークを社会関係資本として読み解き、それが社会適応プロセスやアイデンティティ形成、文化嗜好にどのような影響を与えるのか、に関する調査を行いました。その一方、ホスト社会の住民が移民(外国人)が社会にもたらす多様性に対しより寛容な態度を形成するには、どのようなネットワークが大切になるのか、多様性と社会関係資本の関係をデータ分析を通じて理解する研究も進めてきました。 現在はカナダにおける移民政策や移民による人口の多様化が社会の信頼や社会関係にどのような影響を与えるのかについての議論を整理しています。移民や難民の形成する社会関係資本がホスト社会への適応にどう影響するのか、という視点からの研究蓄積は少しづつ進んでいますが、よりマクロなコミュニティレベルに「多様性」がもたらす影響については、議論が分かれています。多文化社会における信頼構築やネットワーク形成の効果を学ぶことは、今後様々なレベルでの多様化が進む日本のコミュニティの未来像を検討するうえでも示唆に富むと考えています。 大学院ゼミの運営は、参加者が自分の問題関心に基づいて進めた調査の研究発表を行いながら進めます。その中で、各自が実践するインタビューデータの分析やフィールドワークについて相互に批評します。英語論文についても必要に応じて輪読し、英語で論文を執筆し、報告する機会をゼミ内で持ちたいと考えています。移住先」を目指すコスト削減とリスク管理」『移民政策研究』4, 2-13. Emi Ooka、2014,“Network Diversity and Attitude towards Minorities in Japan,” Kwansei Gakuin University Social Sciences Review 18, 35-51. 大岡栄美, 2016,「「安全」かつ「効率的」管理に向かうカナダの難民庇護政策 : ハーパー保守党政権による境界再編に関する一考察」, 『法学研究』89(2), 343-370.大岡 栄美、2016,「関西学院同窓生と連携したグローバルキャリア教育の開発」『関西学院大学高等教育研究』 (6), 17-28.29 研究・教育内容 移民の受け入れと社会統合の在り方について検討する移民の社会 代表的な著書・論文等大岡栄美, 2012, 「カナダにおける移民政策の再構築 : 「選ばれる専門分野・キーワード⃝関係性の社会学/社会関係資本論⃝移民の社会学⃝コミュニティ論准教授
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