研究紹介のホームページなど追加情報 そのほか、阪神淡路大震災や東日本大震災など、災害被災地での記憶継承の問題について何度か発言してきました。新聞などに掲載記事があるので、検索するとみられると思います。今いま井い 信のぶ雄お28今井信雄 近刊、「記憶のかたち―災害の「まえ」と「あと」をつないで伝える」、吉野英岐・加藤眞義編『シリーズ東日本大震災 第3巻 震災と復興―新しい東北をめざして』有斐閣今井信雄2015、「『記憶を伝える』とはどうゆうことか?」山口大学 時間学研究所(編)『時間学の構築Ⅰ 防災と時間』恒星社厚生閣今井信雄2014、「災害の記憶―写真・保存・時間」、荻野昌弘・蘭信三(編)『3.11以前の社会学―阪神・淡路大震災から東日本大震災へ』生活書院今井信雄2013、「敗戦国の都市空間を把握する―群馬県における軍用地の跡地利用」荻野昌弘(編)『叢書 戦争が生み出す社会Ⅰ 戦後社会の変動と記憶』新曜社今井信雄2013、「震災を忘れているのは誰か―被災遺物の保存の社会学」関西社会学会(編)『フォーラム現代社会学』第12号、松香堂書店Nobuo Imai, 2012, Death, Modernity and Monuments: The Realities Expressed in the Monuments of the Hanshin-Awaji Earthquake, International Journal of Japanese Sociology, vol. 21, The Japan Sociological Society, Willey-Blackwell今井信雄2009、「死者と記憶―震災を想起させる時間、空間、そして映像について」大野道邦・小川伸彦(編)『文化の社会学―記憶・メディア・身体』文理閣今井信雄2008、「地域の暮らしと観光文化」、津久井良光・原田寛今井信雄2008、「記憶と社会 M.アルバクス『集合的記憶』」井上俊・伊藤公雄(編)『社会学ベーシックス 第1巻 自己・他者・関係』世界思想社今井信雄2007、「ある地方都市の噂―不確かな隣人とモータリゼーションの社会学」、日仏社会学会(編)『日仏社会学会年報』第17号会学』(仮題)昭和堂明(編)『観光政策へのアプローチ』鷹書房弓プレス 研究・教育内容 社会的な「記憶」について研究している。社会学で「記憶」と言えば、M・アルヴァックスの「集合的記憶」の考え方がよく知られているが、アルヴァックスの集合的記憶論の要点は、われわれの「記憶」というものが「現在」の時点で常につくられ、集団の中で集合的に思い出される、ということにある。しかし、(医学的なアプローチを除き)「記憶」は、それ自体として分析したり考察するのは難しい。なぜなら「記憶」は、ある出来事や物事を思い出したときにはじめて事後的に「記憶」していた、ということが証明されるからである。 そこで、社会学における記憶研究は、記憶そのものではなく想起のあり方の研究となる。過去をどのように「記憶」し「想起」するのか、ということである。もう少しいえば、社会や人々が「過去」をどのように流用し、表象し、「現在」の一部としているかということになる。 そのように「記憶」を捉えると、扱う対象はかなり広くなっていくが、私自身は、大学院生時代に修士論文で、伝統的祭祀の観光化の研究と阪神淡路大震災の慰霊碑による追悼・記念の研究を始めたことから、「記憶」研究という形で自身の研究を捉えるようになったので、自分の研究のすべてを「記憶」として説明しようとは考えていない。繰り返しになるが、「過去」がどのように「現在」の一部となっているか、ということを考えている。 今は、災害の記憶研究とともに、文化の資源化のプロセスについて、社会学の枠組みで理論化したいと考え、データをそろえている。とくに世界文化遺産など、過去が消費社会の中で「消費」されることで、新たな社会秩序が生成し続けている現代社会を実地調査なども踏まえ研究している。 大学院生の教育方針については、基本的には、自由にテーマを決めて活動してもらいたいと思っている。大学院生の研究実績や意欲に応じて、学会発表や研究会での発表を奨励している。 以前、社会学研究科の要職を務めたことがあるが、本学社会学研究科は、先端社会研究所との協力事業なども含めて、本当に研究教育環境が充実している。大学院生はその環境を生かしながら、恵まれた環境に甘んじることなく、社会学のディシプリンを身につけてもらいたいと思っている。 代表的な著書・論文等今井信雄2019(予定)、「観光と文化遺産」、油井清光・白鳥義彦・梅村 麦生(編)『大学生のための基礎科目シリーズ・社専門分野・キーワード⃝近代化⃝文化⃝集合的記憶教授
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