社会学研究科のススメ_電子書籍版
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難なん波ば 功こう士じ24現れたら再開するつもりです。参考までに、ここ5年ほどの間に指導を担当した修士論文の研究テーマ・対象としては「穿越小説」「雑誌『知日』」「網紅ブーム」「90后の結婚観」「名古屋の戦後都市計画」、博士学位論文では「「コミックス」のメディア史」などがありました。 研究・教育内容 大学時代、日本近世史を専攻していました。1980年代の話なので、経済史中心のマルクス主義歴史学から社会史や民衆思想史へとトレンドは移っていた頃でしたが、南河内の農村文書を地道に読みながら、近世後期から幕末・維新期にかけての村方騒動の変遷を追いつつ、わりとオーソドックスに階級闘争史的な研究をしていました。ただしその際注目したのは、闘争する側が自らをどのように呼称していたかの変化です。身分制の枠内にいた百姓たちの間で階級分化が進み、零細農民や小作・日雇層を中心とした勢力が台頭する中で、自らをどのように定義し、いかに名乗り、その自称をどのように文書に記して(記されて)いったのか。大学生の頃は、そんなことに興味を持っていました。 大学卒業の時点では、研究者を目ざすのは非常にしんどい(とくに経済的に)と思い、広告代理店に入社しました。ですが、それもどうにも性にあわず、29歳から31歳にかけてマス・コミュニケーション研究を中心とした研究科に社会人入学し、修士課程を過ごしました。その頃からポツポツと広告史などに関する研究をはじめ、貯金が底をついたためいったん会社には戻りましたが、34歳の年に専任の職を得て大学教員へと転身できました。当時の問題意識は、それまでの広告史研究が、何が「広告」であるかを自明視してきたのに対し、その時々に人々は何を指して「広告」と呼んだかも含めて広告史の記述はされるべきでは、というものです。広い意味での現象学的社会学や構築主義の影響をどこかで受けていたのかもしれません。また、大学時代にマルキシズムの洗礼を受けていたので、カルチュラル・スタディーズの流れも、比較的受け容れやすかったと思います。 そこからメディア史全般、さらにはメディアと文化の関わりといった問題群に関心を広げ、戦後日本の若者文化史をおっかけたりもしました。2018年現在の興味は、①あいかわらずの広告史・メディア史全般に加え、②広告マンないし広告業界の社会的イメージの変遷、③戦後の若者文化とアメリカナイゼーション(ないしはグローバリゼーション)、④ファンダム(ファン集団)研究、⑤関西のメディアと文化、といったあたりです。 大学院のゼミについては、修士課程の人にとっては修士論文を書き上げていくプロセスの、修士論文を提出してさらにその先を考えている人には、博士論文等作成のサポートの場と考え、運営してきました。院生の研究領域や対象に関連する文献を講読したこともありますが、基本的には各自の研究の中間報告、論文の構想発表を中心においてきました。現時点では指導担当の院生がいないので、大学院ゼミは休業状態にありますが、また誰か受講するという人が 代表的な著書・論文等難波功士 2018 『広告で社会学』弘文堂竹内幸絵・難波功士編 2017 『広告の夜明け:大阪・萬年社コレクション研究』思文閣出版盛山和夫・金明秀・佐藤哲彦・難波功士編 2017 『社会学入門』ミネルヴァ書房難波功士 2017 「在日コリアンの表象」山泰幸編『在日コリアンの離散と生の諸相』明石書店難波功士 2015 「広告と社会学」水野由多加・妹尾俊之・伊吹勇亮編『広告コミュニケーション研究ハンドブック』有斐閣難波功士 2014 『「就活」の社会史』祥伝社新書難波功士編 2014 『米軍基地文化』新曜社難波功士 2013 『社会学ウシジマくん』人文書院難波功士 2012 『人はなぜ〈上京〉するのか』日本経済新聞出版金明秀・島村恭則・難波功士・山口覚・三宅正弘 2012 『関西私鉄文化を考える』関西学院大学出版会難波功士 2012 「関西発文化について」小谷敏・芳賀学・浅野智彦・土井隆義編『若者の現在2:文化』日本図書センター難波功士 2011 『メディア論』人文書院難波功士 2010 『広告のクロノロジー:マスメディアの世紀を超えて』世界思想社高野光平・難波功士編 2010 『テレビ・コマーシャルの考古学:昭和30年代のメディアと文化』世界思想社難波功士 2010 「「ビジネスモデル」としての広告系文化人」南後由和・加島卓編『文化人とは何か?』東京書籍難波功士 2010 「広報・広告の公共性」北田暁大編『自由への問い第4巻<コミュニケーション>:自由な情報空間とは何か』岩波書店難波功士 2009 『創刊の社会史』ちくま新書難波功士 2009 『ヤンキー進化論』光文社新書福間良明・谷本奈穂・難波功士編 2009 『博覧の世紀:消費/ナショナリティ/メディア』梓出版社難波功士 2007 『族の系譜学:ユース・サブカルチャーズの戦後史』青弓社専門分野・キーワード⃝広告史・広告論⃝メディア史⃝ポピュラー・カルチャー論教授

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