社会学研究科のススメ_電子書籍版
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阿あ部べ 潔きよしル・スタディーズのメディア文化研究などの勉強に取り組んでいました。その後も、いわゆる批判的研究の立場から現代社会におけるメディアとコミュニケーションに関わるテーマについて一貫して研究してきました。一方で文化と権力の関係をめぐる思想・理論的な研究動向をフォローしながら、他方でそれらの概念・理論を応用して現代社会の具体的な諸現象を批判的に分析する作業に取り組めることが、知的実践としてのカルチュラル・スタディーズの最大の魅力だと感じています。 そうした観点から最近では、2020年東京オリンピックをとりまく政治・社会・文化的な諸現象について研究を積み重ねています。単なるスポーツの祭典にとどまらず、さまざまな利害が絡み合った極めて現代的なメガイベント=スペクタクルと化した現代のオリンピックは、社会学的研究の対象として大変に興味深いものだと考えます。現代のオリンピックを批判的に分析することで、今の社会の特徴を浮かび上がらせることができると考え、さまざまな角度からの研究に取り組んでいるところです。 大学院の演習では、参加者の研究テーマを踏まえながら「批判的に社会的事象を捉えるとはどのようなことなのか」について考える/議論することを目標に据えています。具体的には、各人の関心に照らして興味深いと思われる文献や論文を選定して、輪読形式で授業を進めています。単に社会学の知識や技法を勉強するだけでなく、それを用いて自分なりに現実社会を分析していく知恵と技を身につけることが、大学院での学びにおいて何よりも大切だと考えています。な地平』ミネルヴァ書房阿部潔(2001)『彷徨えるナショナリズム オリエンタリズム/ジャパン/グローバリゼーション』世界思想社阿部潔・成実弘至(編著)(2006)『空間管理社会 監視と自由のパラドックス』新曜社阿部潔(2008)『スポーツの魅惑とメディアの誘惑 国家/身体のカルチュラル・スタディーズ』世界思想社阿部潔(2014)『監視デフォルト社会 映画テクストで考える』青弓社K. Abe(2018), ‘Japanese youth and SNS use: peer surveillanceand the conditions governing tomodachi’ in F.Darling-Wolf (ed.) Routledge Handbook of Japanese Media, Milton Park: Routledge, 275-291.23 研究・教育内容 大学院時代にはフランクフルト学派の批判理論や英国カルチュラ 代表的な著書・論文等阿部潔(1998)『公共圏とコミュニケーション 批判的研究の新た専門分野・キーワード⃝カルチュラル・スタディーズ⃝メディア/コミュニケーション論⃝公共圏の社会学教授

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