社会学研究科のススメ_電子書籍版
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立たて石いし 裕ゆう二じ・なぜ飛行機の事故はなくならないのか? ―「定常事故」論と逸脱の常態化・なぜ多くの人が反対しても原発は止まらないのか? ―テクノクラシーと技術の自己目的化・化学物質過敏症は「気にしすぎ」なのか? ―環境リスクの社会的構築と知識の存在拘束性・自動車の使いすぎはどうすれば防げるのか? ―科学技術による合理化とその不合理性・リサイクルは本当に意味があるのか? ―戦略的環境主義と環16境保護の儀礼化・地球の気温が上がると何が困るのか? ―リスクの不可視性と経路依存性 研究アプローチとしては、科学技術にかかわる専門家等へのインタビューと関連する資料の質的分析を中心にしつつ、質問紙調査、量的分析、理論研究なども用いてきました。自分の強みといえる手法をひとつ持った上で、研究対象に合わせて使えそうなものは貪欲に身につけていく、というのが理想的な研究のあり方だと考えています。できれば指導する大学院生にもそうした姿勢で研究に取り組んでほしいと思います。 大学院生の研究テーマは、科学・技術や環境とどこかで接点があれば何でも自由です。ただし、どんなテーマを研究するのであれ、そのテーマの「不思議さ」「面白さ」に対する自分なりの確信と、そのテーマに関して一番になるという気概は必須だと思っています。 大学院ゼミの運営については、以下の3つを柱として考えています。・参加者の研究報告とディスカッション。インタビュー記録や資料からの読み取り・分析の実習を含む。・参加者の関心に沿った文献(英語文献を含む)の発表とディスカッション。・科学技術社会学(あるいは環境社会学、リスクの社会学)や社会学全般の基本文献についての発表とディスカッション。 ゼミでの学びを通じて、参加者自身の研究を深めていくだけでなく、社会学の知識を系統的に身につけ、自分なりの社会学像を確立することや、論理的かつ批判的に文献を読み解く能力の向上、自分の考えをアウトプットする能力の向上も目指します。また、学内外のさまざまな場で自分の研究を発表する機会をできるだけ提供したいと思いますし、自らそういう機会を見つけて、積極的に飛び込んでいく姿勢をもつことを期待しています。ミネルヴァ書房,207-222.立石裕二,2015,「環境問題において不確実性をいかに議論するべきか―福島第一原子力発電所事故後の放射線被曝問題を事例として」『社会学評論』66(3): 412-428.立石裕二,2011,『環境問題の科学社会学』世界思想社.立石裕二,2008,「環境問題の捉えかたの世代間差異と子どものころの記憶」『環境社会学研究』14: 101-118. 研究・教育内容 私たちの身のまわりには、スマートフォンや自動運転車のように、最新の技術を駆使した製品があふれています。私たちが口にする食べ物も住む家も、100年前と今とではまったく様変わりしています。こうした科学・技術(テクノロジー)の発達は社会にどのような影響を与えるのか、あるいは逆に、社会のあり方によって科学・技術の進む方向はどのように左右されるのか、を研究することが科学技術社会学の課題です。その題材は、スマートフォン、インターネット、AI、自動車、スペースシャトル、地球温暖化、原子力、化学物質、遺伝子組み換え、iPS細胞など多岐にわたります。「科学」「技術」というと、社会学とは縁がうすいものに思えるかもしれませんが、社会の中でのさまざまな人(アクター)の営み、アクター間の差異、アクターどうしの関係(協力/対立)という点に注目すれば、どんな題材であれ「社会現象」として研究対象になります。 「科学・技術」という社会現象がもつ大きな特徴として、それによる変化が最終的にどこに行き着くのか事前に分からない、という「不確実性」を挙げることができます。推進するべきか、いったんストップするべきか、科学者・技術者の間でも意見が割れる「論争状態」にあることが少なくありません。また、「専門家」といわれる人は皆、その分野の利害関係者でもあります。彼らまかせにしても、社会全体にとって望ましい道が選ばれるとは限りません。 こうした中で現代社会では、自分のことは自分で判断し、その結果としてのリスクを自分で引き受けることが求められるようになっています(リスク社会)。しかし実はそれも無理のある要求であって、身の回りにあるモノ・コトの多種多様さと、それらが変化するスピードを考えれば、ひとりの人間がすべてをフォローすることは不可能です。私たち(の社会)は科学技術やその利用に伴うリスクに対してどのように向きあっていくべきでしょうか。 以下では、私が研究したり、授業で取り上げたりした話題の中から、いくつかの問いと関連するキーワードを例示しておきます。 代表的な著書・論文等立石裕二,2017,「環境と科学技術」盛山和夫ほか編『社会学入門』専門分野・キーワード⃝科学・技術の社会学⃝科学技術社会論(STS)⃝環境社会学⃝リスクの社会学教授

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