荻おぎ野の 昌まさ弘ひろen Angleterre au Japon à la veille du development du capitalismeでは、資本主義形成期において、いかなる変化が生じるのかについて、文学、絵画、思想を題材として研究し、その変化を「他者像の構成」に見出しました(業績1)。同様の問題意識で、博物館や文化遺産制度も、資本主義形成期に誕生したという観点から日仏の文化遺産制度の比較を、まず無形文化財に焦点を当てて行いました(業績2)。次にフランス人社会学者との共同研究の成果は、2002年『文化遺産の社会学』に刊行しました。これは、現在改訂版の刊行を準備中です(業績3)。一方、資本主義システムと同時に不可避的に生じる詐欺と暴力の問題について研究し、詐欺と贈与から社会を捉える視点を提示したり(業績4、5)、開発が進む場所で生じる社会変容が暴力を引き起こす点を示したりしています(業績6)。暴力に関しては、戦争が国民国家を形成するという研究をし、国民国家が民族概念を創出するという研究も進めました(業績7、8)。このほか、阪神・淡路大震災やフランスの過疎地域の調査研究をフランスで刊行しています(業績9、10)。 私は、フランスで大学、大学院生活を過ごしており、そのときの経験から、研究内容について、徹底的に批判することが研究成果をあげる唯一の道であると考えているので、日本でしばしば見られる「ぬるま湯的」環境には強い嫌悪感を感じており、研究に対する厳しさを強く求めます。指導した博士論文のテーマには、「神話と社会」「郡上踊り」「戦争とアニメ」「台湾の宗教団体」「暴力といじめ」「原爆ドームの保全」があります。博士論文を基にしている).Masahiro Ogino, 1995, “La logique d’actualisation. Le patrimoine et le Japon”, Ethnologie Française, XXV, 57-64(業績2).荻野昌弘(編),2002『文化遺産の社会学』新曜社(業績3).荻野昌弘,2005『零度の社会—詐欺と贈与の社会学』(業績4).Masahiro Ogino, 2006, Scams and Sweeteners. A Sociology of Fraud, TPP(業績5=業績4の翻訳).荻野昌弘,2002『開発空間の暴力』(業績6).12荻野昌弘,2013『叢書 戦争が生み出す社会I 戦後社会の変動と記憶』新曜社(業績7).荻野昌弘,2017『叢書 「排除と包摂」を超える社会理論1 中国雲南省から見える多元的世界—国家のはざまを生きる民』(業績8).Masahiro Ogino, 1998, Fissures, Ed. De la Villette(業績9).Masahiro Ogino, 2011, Un Japonais en Haute-Marne, Ed. Châtelet-Voltaire(業績10). 研究・教育内容 パリ第七大学に提出した博士論文La Représentation d’autrui 代表的な著書・論文等荻野昌弘, 1998『資本主義と他者』関西学院大学出版会(業績1=専門分野・キーワード⃝資本主義の社会学的分析⃝文化遺産の社会学⃝詐欺と贈与⃝開発と空間教授
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