理学部
K.G.

田村 守 専任講師

計算光物理研究室

田村 守(たむら まもる) 専任講師

研究分野:ナノ光学、光物性、光マニピュレーション、計算物理学

私たちの身のまわりには、スマートフォンの画面や部屋の照明、太陽光など、さまざまな光があふれています。その光には、実は“物を押す力”があることをご存じでしょうか。人には感じられないほど小さな力ですが、ケプラーは、彗星の尾が太陽とは反対側に伸びることに注目し、太陽光が何らかの力を及ぼしているのではないかと考えていました。のちにマクスウェルは電磁気学の理論から、光が運動量を持ち物質に力を与えることを示し、この不思議な性質は科学として確立されていきました。光がものを押す、非常にロマン溢れる話だと思います。その魅力に、昔から多くの人が引き込まれてきました。たとえば夏目漱石の『三四郎』には、光の力を実験する研究者が登場します。光の神秘に魅せられた人々の想いは、時代や分野を越えて受け継がれてきました。現代では、光の力で微小な粒子をつかんで操作する「光ピンセット」が実現し、2018年にはこの研究にノーベル物理学賞が授与されました。

こうした光の働きは、ナノメートルスケールの極小世界ではいっそう多彩になります。光は電子や分子の動きを変え、物質の性質を左右します。さらにスケールが大きくなると、光はナノ粒子を集めて秩序をつくったり、液体を動かしたり、柔らかい材料の形を変えたりすることさえできます。同じ“光”でも、スケールによってまったく異なる表情を見せるのです。私は、光と物質の相互作用を、ミクロからマクロまで階層的に理解し、活用することを目指しています。
具体的には、
 ・分子と金属ナノ構造が光で強く結びつく現象の理論解析
 ・光によるナノ粒子の自己組織化や微粒子操作の仕組みの解明
 ・光が液体や材料を変形・流動させるプロセスのモデリング
といった研究に取り組んでいます。
理論とシミュレーションを中心に、量子スケールから流体力学に至るまで幅広いスケールで発現する光と物質の相互作用による物理現象を探究しています。このアプローチは、ナノフォトニクス、量子デバイス、光加工・光計測、ソフトマター科学など、幅広い分野につながります。
光が物質に働きかけ、新たな性質や機能を発現する。その仕組みを解き明かし、未来の材料・デバイス設計へと結びつけていきます。