2026.05.28[ニュース]
法学研究科研究員の田中豊さんが日本儒教学会賞を受賞
日本儒教学会が主催する第3回日本儒教学会賞の発表が5月にあり、日本政治思想史を専門とする法学研究科研究員の田中豊さんが受賞しました。授賞式が5月23日、早稲田大学で開催され、田中さんは賞状と副賞を受け取りました。
受賞した田中さんの論文は、『日本儒教学会報 9号』(2025年2月)に載る「清末中国におけるルソーの受容と黄宗羲―「中国のルソー」再考―」です。清末中国に、ルソーの『社会契約論』が流入したことによって、明末清初の儒学者・黄宗羲が「中国のルソー」として賛称され、その思想の意義がルソーの『社会契約論』に比肩されるかたちで再評価されました。
田中さんは、黄宗羲に対する顕彰が、『社会契約論』の中国語訳、特に楊廷棟(漢訳)『路索(ルソー)民約論』(1902年)に起因していたことを指摘しました。そもそも『路索民約論』は、フランス語原典からではなく明治日本で刊行された間違いの多い原田潜『民約論覆義』(1883年)を底本としていたために、自ずと原典からの乖離を免れることができませんでした。結果的に、『路索民約論』で説かれた「民約」(社会契約)観念が時の中国知識人によって無批判に受容され、「ルソーの思想」と黄宗羲の思想が類似するとみなされるに至ったことを本論文では明らかにしました。
本賞の選考では「清末中国における西洋思想の受容をルソーの場合を取り上げ精緻に実証している点、および黄宗羲の研究に関しても学界に大きく寄与した点」が高く評価されました。
田中さんは「長年にわたり、儒学の文脈に応じた西洋思想の「翻訳」の問題を扱ってきた者として、「儒教」の名を冠する賞に与ることができ大変光栄に存じております。この度の受賞を励みに、今後とも研究に精進してまいります」と話しています。