法学部
K.G.
2025.11.04[ニュース]

法学研究科研究員の田中豊さんが日本思想史学会奨励賞を受賞

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19回日本思想史学会奨励賞の発表が10月にあり、日本政治思想史を専門とする法学研究科研究員の田中豊さんが書籍部門で受賞しました。日本思想史学会の授賞式が111日、京都大学で開催され、田中さんは賞状を受け取りました。

受賞した田中さんの著書は『儒学者 兆民「東洋のルソー」再考』(創元社、2024年)。本書で取り上げた明治の思想家・中江兆民(1847-1901)は、ルソーの『社会契約論』を『民約訳解』と題して翻訳したことによって「東洋のルソー」、つまりルソーの政治思想の紹介者としてこれまでみなされてきました。本書では『社会契約論』と『民約訳解』を比較することで、中江兆民が原典をあえて正確に翻訳していなかったことを指摘しました。そのうえで、兆民はルソーの思想を通して儒学思想の刷新を図った「儒学者」であったことを明らかにしました。さらに、中国における『社会契約論』の伝播の様子についても当時の史料を駆使して詳細に検証しています。

本賞の選考では「従来から膨大な先行研究が存在する中江兆民研究のなかで、思想形成期における儒学を重視する視点を一貫させて兆民のテクストを掘り下げ、『民約訳解』の新たな解釈を提示した点」「読み易い文体とともに、今後の研究の発展を期待させる点」が高く評価されました。

田中さんは「中江兆民の思想は多面性があり非常に複雑ですが、初期の兆民の著作から『儒学者』としての側面を抽出することを試みた拙著が、このような名誉ある賞をいただき大変光栄に存じます。まだまだ中江兆民については分からない点が多いので、今回の受賞を励みに引き続き研究に精進したく存じます」と話しています。