
卒業生 ゼミ活動をきっかけに新聞記者に。一つ一つの出会いを大切にしたい。
神戸市出身。人に対して精神面、身体面などあらゆる側面からアプローチすることに関心があり、人間福祉学部人間科学科へ進学。「死生学」や「悲嘆学」の授業、坂口幸弘教授のゼミで手伝ったイベント「生命のメッセージ展in神戸」などを通じて4年間、自分自身と向き合った。その過程で新聞記者を志し、夢をかなえて5年目、一瞬一瞬、一つ一つの出会いを大切に取材を続けている。
「悲嘆学」などでの学びが記者としての基本姿勢になった。
もともと人に興味があり、「こころ」や「身体」などいろいろな側面からアプローチできる人間福祉学部人間科学科を選びました。授業では、3年生で履修した坂口幸弘教授の「悲嘆学」が印象に残っています。悲しみは人間の基本的な感情の一つであり、悲しみを抱えた人が、どのように気持ちを整理し立て直していくのかという心の変化に関心を持ち、そのような人を目の前にした時にどのような対応ができるのか知りたいと思ったのが受講理由です。授業では、喪失と悲嘆、死別に関する基礎的な知識を習得し、深い悲しみにある人への理解を深めました。悲嘆を抱えた人と接する上で大事なのは、話す内容にじっくりと耳を傾け、思いをしっかりと聞き取り尊重することだと学びました。同じく3年生で受けた藤井美和教授の「死生学」の授業は、死を学ぶことによりどう生きるかを考える内容で、生きることと死ぬことはつながっているのだと理解できました。
新聞記者になった今、授業での教えは阪神・淡路大震災やJR福知山線脱線事故をはじめとする多くの災害・事件事故等の被害者やご遺族の方への取材においてとても活かされています。最も重要なのは、自分から何か言うのではなく、対象者の話にひたすら耳を傾けること。そして、ふとこぼれた言葉を受け止め、裏にある思いに想像を巡らせて多角的に捉えていくこと。私の記者としての基本姿勢になっていると日々感じています。
生命のメッセージ展を機に発信し続ける大切さを感じた。
3年生から、坂口教授のゼミに所属しました。ゼミ生全員で「生命のメッセージ展in神戸」の企画・運営をお手伝いしたのが一番の思い出です。犯罪や交通事故などで亡くなった人たちの人型パネルや遺品を通じて命の大切さを伝えるイベントで、2019年11月30日に兵庫県では初めて開催されました。私自身、親戚が飲酒運転による交通事故の犠牲となったこともあり、同展には強い思いがありました。ご遺族に対して失礼な言動をしないように、靴などのご遺品を大切に扱うようにと、自分に何度も言い聞かせていた記憶があります。当日はわずか6時間の開催中に1万2,000人が来場し、「私自身も加害者にならぬよう生きていきたい」「命の大切さを感じる機会に出会えたことを嬉しく思います」などたくさんのコメントを頂きました。
私自身も改めて命と向き合い、就職活動を控える中で、これからどう生きていこうかと考える機会になりました。生命のメッセージ展のような活動を発信し続けていくことの大切さを感じると同時に、私自身が発信する立場になりたいと思うようになり、弊社の先輩記者が取材に来たことも大きな後押しとなって、新聞記者を目指しました。大学入学時には思ってもいなかった方向へと進路が定まっていきました。
挫折経験を基に回復への心の変化を探りたい。
中学、高校と陸上競技をしており、卒業論文は「思春期における陸上競技・女子中長距離選手の挫折と回復の過程」をテーマにしました。私は競技生活ではけがが多く、速くなってチームの役に立ちたいという気持ちがある一方、受験を考えると学業もおろそかにできないという思いもあって葛藤を繰り返す時期を過ごしました。練習を重ねるにつれ、けがも克服してタイムが出るようになっていったのですが、後から「あれは挫折だったのだ」と思いました。自分の経験も踏まえて挫折を悲嘆の一つと捉え、回復への心の変化を明らかにし、指導者や周りの人に求められるサポートなどを探ることを目指しました。
実際に、中学、高校で陸上競技を経験した20歳以上の女性5人にインタビューしたところ、挫折の背景には競技でのスランプと受験を見据えた学業との両立があり、それが体への負担となり貧血や喘息発作を起こしていたことが分かりました。治療やケアを経て自分と向き合う中でタイムが良くなると、他人からの承認につながり徐々に回復、そして過去を振り返った時に初めて、それが挫折だと認識したという結果が5人全員から得られました。このプロセスが明らかになったことは大きな成果だと思っています。優しく見守ってくださる坂口教授と、めちゃくちゃ明るくて元気なゼミ生に囲まれて、伸び伸びと研究に打ち込めました。
取材での一つ一つの出会いや言葉を大切にしたい。
新聞記者として5年目、入社後4年間は阪神総局で、昨春からは神戸本社で神戸北部・東部の警察署回りと広く町の話題の取材をしています。記者というのは、誰かの人生に関わったり、節目に立ち会ったりできる仕事で、それを強く感じたのが、まだ経験の浅い阪神総局時代に取材した、金婚式を終えたご夫婦との出会いです。50年を振り返る中で、ご家族が不慮の事故に遭われ、ある日突然、介護生活が始まったことを打ち明けてくださいました。いきなりの話に、どう声をかけるべきか戸惑いながらもインタビューを続け、記事を書き上げました。後日、職場に届いた手紙には、「これまでの介護生活が帳消しになるくらい記憶に残る、すてきな出会いでした」とありました。その達筆な文字を見た時、一瞬一瞬、一つ一つの出会いを大切にしたいという思いが改めてこみ上げてきました。お話の全てを文字にすることはできなくても、じっと耳を傾け続けてよかったと思った瞬間でもありました。私たちはたくさんの取材をしますが、受けてくださる方にとっては最初で最後の取材かもしれません。今この時の出会い、向き合っている方を、文字にならない言葉も含めて大切にしたいというのが私の記者としての姿勢です。
自分と向き合い自分を深く知ることができた。
人間科学科は人間のことを知る学科で、自分を知ること、他人を知ることにつながります。人は見た目の印象だけでは分かりません。どんな背景があるのか、どのような思いを持っているのか、「悲嘆学」や「死生学」をはじめとする授業を通じて、人を理解することを学びます。人は一人では生きていけない以上、学科での学びは、私たちが生きていく上で最も大切な、基本となることだと受け止めています。
私も自分と向き合い、自分という人間を深く知ることができ、また知り得なかった一面にも気づかされました。本当に充実した4年間で、大学の期間がなかったら、今の仕事には就いていなかっただろうと思います。どういった道を目指すのか、まだ人生の進路が決まっていない人にとっても有益な学科だと思います。