[ 文学部 ]哲学倫理学専修PHILOSOPHY AND ETHICS

メッセージ

哲学って何を勉強するの?

オープンキャンパスなどでよく聞かれるのは「哲学って何ですか」、「何を勉強するのですか」ということです。ところが、この質問に答えるのはそれほど簡単ではありません。その理由の一つは、哲学があまりにいろいろな分野を含んでいるからということです。

哲学の歴史を見てみますと、数学や幾何学のようなことに没頭した人もいれば、「神様は実在するのか」という問題に取り組んだ人もいれば、「真の幸福を得るにはどうすべきか」と問うた人もいます。また専修の名称にもなっている倫理学は善や悪、正義や不正とは何かを問う学問です。このようにそれぞれに異なったさまざまな問題を扱う学問ですから、「哲学って何」と聞かれてもなかなか一言では答えにくいのです。

人間の内と外のあらゆることが哲学の領分ですが、他の学問のようにその問題に直接的に取り組むのではなく、むしろ一歩下がって問題自体を問い直すといえば、「哲学って何?」という問いの比較的正しい答えかも知れません。いろいろなことに好奇心を抱き、疑問をもち、その解決に努力するということは人間の最も基本的な要素の一つです。大学の4年間で、この人間の最も根源的な営みに耽溺するのも悪くはないと信じています。

教員紹介

現象学と近現代ドイツ哲学、存在と人間、近代日本哲学Research keywords

景山 洋平 教授

「存在とはなにか」や「人間とはなにか」という存在論と人間論の問いについて、現象学と近現代ドイツ哲学を手がかりとしながら研究しています。一見すると極めて抽象的な問いですが、思考し行為するその都度の当事者(皆さん)にとって、かならず前提とされ受け止められるものなので身近で具体的なものです。

その際、「当事者」の視点から哲学する手がかりを与えるのが現象学であり、その視点に広がりと多様性を与えてくれるのがドイツの哲学です。人間存在の根底にある他者との関わりについて、西洋哲学に直面した近代日本哲学の言説を中心として、理論的・政治的・文化的な観点から考察しています。

認識論、メタ倫理学、言語哲学Research keywords

久米 暁 教授

「どの科学理論が正しいか」、「何が道徳的に許されないことか」、「人はどう生きるべきか」と問われたとき、第一の問いには科学的探究によって客観的な答えを出すことができ、第二の問いには文化や時代に相対的にしか答えることができず、第三の問いについては、それぞれの主観的に決めればよい、あるいは、そもそも答えなどないと考えるのが、現代の一般的思潮だと思われます。

しかし、すべての問いに対して、多元的・主観的な答えしかありえないのかもしれませんし、逆に、ある程度に普遍的で堅固な解答が追究できるのかもしれません。科学・道徳・人生について、探究が可能か、客観的主張がありうるか、を考察することが私の主な研究課題です。

フランス哲学、自己と他者と自然、哲学史の再検討Research keywords

米虫 正巳 教授

フランス哲学を中心に研究を行っています。生ける個体的存在としての自己、他の個体的存在である他者を含めた他なるもの、それら自己と他なるものをそのようなものたらしめる過程であり、またそれらがそこに生起する場所でもある自然、これら三者(自己・他者・自然)の在り方を明らかにすることに取り組んでいます。

また、生ける存在による思考という観点から哲学という営みそのものをもう一度捉え直すこと、そしてそこからこれまでの哲学史を再検討しつつ、行為と認識、科学と技術、社会と歴史などの諸問題についての哲学的思考の新たな可能性を開くことが現在の課題です。

フランス科学認識論、物理数学の哲学、自然哲学Research keywords

原田 雅樹 教授

現代、人間活動における科学技術の役割は非常に大きくなっています。核エネルギーという巨大な力を手に入れた人間は、生命体の住める地球環境を破壊しまうことも。最近では、ゲノム編集というDNAを簡単に変化させる技術も手に入れ、デザイン・ベイビーなる可能性も生じてきました。さらに、人工知能により人間活動一般を社会の中で大きく変化させる可能性もあります。

このような時代にあって、自然や生命、知性の意味を哲学的に問い直し、人間としての善き生き方を倫理的にさがしていくことは急務となっています。これらのことを人間活動における数学や数理物理学とは何かということも含めて考えています。

授業紹介

倫理学概論
道徳に焦点を当て、倫理学の根本的な諸問題について概説する授業です。特に道徳は知りうるのか、道徳は実在するのか、道徳の基準は何か、意志の自由はあるのか、道徳的であるべきなのかといった問題を思考します。

萩平 真以 4年生 (撮影当時)

高校生の頃の哲学・倫理学のイメージは「お堅い学問」でした。が、入ってみると「日常の疑問を解いていく学問」に変わりました。卒業論文の研究では、自閉スペクトラム症の人が他人の心をどのように理解しているかを考えています。ボランティア活動で出会った方からの話や教職課程での学びにヒントを得て研究しています。同じゼミの仲間も「本当の幸せとは」「死とは何か」「絶対に正しい道徳はあるのか」など日常で感じる少しの疑問に対する自分なりの答えを、哲学や倫理学の力をかりて、見つけようとしています。