2020.03.18.
教育学研究科委員長より 学位記授与式メッセージ

教育学研究科委員長 今津屋直子

 教育学研究科では4名が修士学位を、2名が博士学位を授与されました。学位授与された6名の皆さん、支えてこられたご家族や関係者の方々に、教職員一同心よりお祝い申し上げます。

 今年度の学位記授与式は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、中止となりました。世界に蔓延してしまったこの感染症の影響によって停滞する経済や生活活動に対する各界のリーダーたちは様々な決断に迫られています。こんな時、昨年お亡くなりになった緒方貞子さんだったら、どんなリーダーシップを発揮するだろうか、と思いを馳せました。緒方さんは40歳を過ぎて、国連へと活動の場を広げ、63歳で国連難民高等弁務官に就任した1991年当時は、民族や宗教の対立による紛争の激化から難民が急増し、人道危機が多発した時代でした。難民の話に耳を傾け、難民に至った理由を明らかにしようとし、紛争当事者とも交渉しました。緒方さんのそのような現場主義に基づく迅速な決断と行動力、そして困難を抱えた人々への思いやりは、UNHCRのリーダーとして、多くの人々の信頼を得ていきます。

 その緒方さんですが、聖心女子大学を卒業後、1951年にアメリカのジョージタウン大学大学院に留学しています。大学院で国際関係論を専攻し、「日本はなぜ戦争に突き進んだのか」と疑問を抱くようになり、研究を始めます。その成果は博士論文「満州事変と政策の形成過程」(政治学博士、カリフォルニア大学バークレー校)に結実しました。貴重な資料が公開されていないなか、女性がこのような研究から疎外されがちだった時代に、戦争関連史料を収集し、軍や政府など関係者から聞き取り調査するなど、事実を究明していくことは大変なことだったそうです。緒方さんの現場主義を支える行動力は大学院時代の学究生活においても大いに発揮されていたようです。

 教育学研究科は、現代の複雑な課題を抱えた社会を見据えた教育に関する研究の発展に努め、その成果を社会に還元することを使命としています。皆さんが論文にまとめられた成果はここで終わったと思わずに、さらに発展させてください。皆さんには各々の置かれた場所でその使命を担っていただき、高度な専門性を有する教育者として、研究者として、教育界でリーダーシップを発揮されていくことを期待しております。

2020年3月18日

教育学研究科委員長 今津屋 直子