2019.04.01.
【栗田ゼミ】2018夏 フィールド調査 in セネガル(事前準備)

Preparation:

事前準備は海外でスムーズに調査を行うにあたって決定的に重要なことです。そのため、私たちはこの準備に多くの時間と労力を費やしました。2年生の冬から開発経済学や計量経済学を学習し、3年生の春から夏にかけて各班100本以上の論文を読み込みました。調査で使用する質問票・実験内容・スケジュールは何度も修正を行いながら約1か月かけて作成をしました。さらに現地では通訳と英語を使いコミュニケーションをとるため、2年生の秋から英語の学習も同時に行いました。事前準備の時間はチームのメンバーと話し合いを重ねながら調査の成功を左右する重要な時間でした。

阿部 優志

 セネガルを訪れるまでの6ヶ月間の準備の日々の目まぐるしさは、相当なものでした。多岐の分野にわたる論文の精読から、実験介入の手法のデザイン、時には、違う学部(心理学)の教授に師事を仰ぐこともありました。そんな中でも特に時間を費やしたのが、自分たちの論文の軸ともなるリサーチクエスチョンの確立でした。
 私は、最終的には、ジェンダーに関する研究に取り組んでいました。ただ、初めてのゼミ内の発表では、「“水”に関しての研究がしたい。」と宣言し、その方向性で1ヶ月ほど進んでいました。実験の簡単な内容は、汚れた水を簡単に濾過できる“ライフストロー”を用いて、浄水の子供の健康状態への影響を調べよう!と言うものでした。ただある日、先生からの「良いものを使えば、良い結果は出る。ただそれは、開発経済学的ではない。」との言葉で、私たちの研究は振り出しに戻ります。開発経済学の基本でもある「いかに持続可能性のある支援を行えるか。」と言う面への思考が欠けていました。そして、発表の度に、私たちがしたいことの発表内容は変わり、本当に研究テーマが”七変化”していました。出発まで1ヶ月を切った頃、4班存在していた論文班が、取り壊しになり1つの班に統合されるかもしれない。と言う危機が起きました。そんな時、私たちのほとんどのメンバーが「自分たちの班の解体は止むを得ない」と、自分たちの研究に対して自信を持てていませんでした。あの時期は、今振り返っても、かなりきつかった時期でした。「君たちの班は、何がしたいのか本音で話し合えていないんじゃないか。綺麗にやろうとしすぎだ。」と言われた時、はっ!っとしたのを鮮明に覚えています。そこから、もう一度改めて、「本当に自分たちは何を研究したいのか。」と言う一番の原点に立ち返り、もう一度、自分たちの班の再起動を試みました。実のところ、実験のデザインなどが確立したのは、出発10日前で、本当にギリギリでした。他班にも、とても迷惑をかけたと思います。
 本当に肉体、精神的にもキツかった準備期間でした。しかし、その期間を通して、本当に他者のために何かしたいのならば、そこまでしなければ真の意味で価値あるものを提供できない。と言うことを、身を持って実感しました。なにせ、あそこまで出会ったこともない人たちのために、没頭したのは初めての経験だったのですから。この準備期間がなければ、セネガルの地の彼らと胸を張って向かい合うことはできなかったと思います。
 最後に、学部、企業の方々などサポートしてくださった方々、を含め、訪ねれば当たり前のように手助けをしてくれた栗田先生、K6、そして、魚谷班のみんなに感謝を伝えたいと思います。

1. セネガル(事前準備①)阿部優志

金澤 昂季

セネガルに行くにあたって事前準備として、都市部の小規模工場のリクルーティングについての研究であったり、それに関する調査票の作成にとても苦労しました。渡航前の春学期の半年弱は先行研究を100本以上読み込み、リサーチクエスチョンを立て、どのような研究が、従業員が5人程度しかいなく、屋根すらないこともざらにあるセネガルの小規模工場の人達の生活を改善することができるのかという難題に向き合ってきました。しかし、中でも一番難しかった事は、実際に訪れたこともなく、Google Mapにも載っていない地域の事を、そこに住む人たちの事を考えながら研究を進めていかなければいけない事でした。私たちの調査は都市部における産業集積地において多くの工場から聞き取りを行うものだったのですが、そもそもどんな規模の工場で、どんな労働環境で、セネガルの第3の都市サンルイにどのくらい工場が存在しているのかも全く分かりませんでした。そのため、目に見えない彼らのために何ができるのか、何が彼らの経済的成長を阻害しているのか、それらを理解する手段が論文やWorld Bankのデータくらいでした。このような暗中模索の徹夜の日々が数ヵ月間も続き、ついに研究の大まかな方向性や実験のプロセス、分析したい内容も決まり、6月下旬からは最後の大仕事「調査票の作成」に取り掛かりました。ここでも大きな困難がありました。それは、私たちが研究の都合上、聞きたい質問項目が多すぎて、セネガルの人々を助けるどころか、逆に彼らの仕事の邪魔をしてしまい、その日暮らしの生活に支障をきたしかねないような状態でした。しかし、この準備期間の中で私が学んだことは、「自分たちが研究したい」ためにセネガルで調査をするのではなく、「未だ目に見えない貧困なセネガル人の」ためにというマインドを持つことで、より良いものを作れるし、それが学部生として開発経済学という学問を学ぶ上で何よりも大切なことであることを知ることができました。そしてついに調査票も完成し、初めてのアフリカ渡航にわくわくの日々でした。

1. セネガル(事前準備②)金澤昂季

中島 聡哉

セネガルへ行くための事前準備として困難だったことは、主に2つあります。まずは、行動経済学の要素を含んだ実験内容の計画です。私たちがいくセネガルでは調査の実績がなく、新規的な論文を書くためには実験を盛り込む必要がありました。またこの実験が論文の出来を左右するものであるため、その分かけている時間は一番長かったです。まずは先行研究として100を本超える論文を読み、実験内容を計画して行きました。私たちの班はSHEPと呼ばれる日本のODAを例に、支援の違いが農民にどのような影響を与えるのかを明らかにするための実験を考えました。そのため、日本的な「人づくり」に強みを持つ支援をどのように再現するのかが特に難しかった点です。また滞在期間が1ヶ月という時間的制約も考慮に入れなければなりませんでした。班員と何度も案を出し合い、納得がいくまで実験内容を計画しました。2つ目はフィールド調査で用いる調査票の準備です。最終的に30ページを超える基本的なデータを取るメインの調査票と実験の前後に用いるビフォー&アフターの調査票の2種類を作成しました。メインの調査票は名前や年齢など基本的な情報から、研究で用いる健康や農業、教育、幸福、ジェンダーに関する質問で構成されています。ビフォー&アフターの調査票は実験を行うことで影響を受ける変数に関する質問で構成されています。セネガルについて研究するにあたって、テーマ設定を行い、リサーチクエスチョンを作成し、実験内容・分析に使用する変数を決定しなければなりませんでした。私たちは農業をテーマに研究をしていましたが、1ヶ月というスパンで収穫高は変化しません。そこで、どのような変数なら変化が起きそうなのかを予測し、質問を作成して行きました。また1世帯に3回の調査をしなければならないため、質問は必要最低限に抑えました。このようにセネガルに行く前に大変な準備がありました。

1. セネガル(事前準備③)中島聡哉