商学部主催 学術講演会

[ 編集者:商学部・商学研究科       2019年9月7日   更新 ]

商学部では、講義や演習を通して得た知識や学びが、ビジネスの現場でどのように活かされているのか、学生の皆さんに理解してもらいたく、ビジネスの第一線で活躍されている方々を招き、学術講演会を開催しています。

2019年6月21日開催「信用格付けの資本市場への貢献」

三宅 伊智朗 氏 (S&Pグローバル・ジャパン特別顧問)

1 信用格付けとは

 まず、最初にS&P Globalは何をやっている会社なのか。そこから話を始めていきます。S&Pが信用格付を行う会社と考えている方が多いです。しかしそれは実は1部門に過ぎません。世界の様々な企業情報をリサーチし、その結果を投資家にわかりやすく再構築して伝えることやインデックスといういくつかの株式をまとめた指標を作成することなども行なっています。その多様な業務の中でも、今日の本題でもある信用格付とはどのようなものであるか、お話ししていきます。

 格付とはいわゆるランク付けのことです。S&P社は独自にさまざまな角度から企業を調査して格付します。いわばS&Pの企業の信用力に関する意見であり、投資家はS&Pの格付を参考の1つにしています。信用格付の意味するところは「企業が、貸りたお金を約束の期日に全額耳を揃えて返す意思と能力」ということです。私たち人間は信頼をおける人にしか、お金を貸しません。債券投資家もそうです。債券投資家は将来投資したお金が自分のもとへ返ってくるのかどうかが大事なので、信用格付が高い企業の債券は相対的に利回りは低いけれど投資しやすいのです。また、海外で知名度が十分でない企業が、ドルでお金を調達したいとき、S&Pなどの格付会社の評価はとても大切です。知らない企業だとしても、信用格付けがあることで国を超えた投資をしやすくなるのです。

2. 信用格付けについての2つの大切な考え方

まず一つ目は、「信用格付が投資家の投資判断材料の一つであること」です。債券に投資しようとする時、その判断を助ける情報はたくさんあります。その中の一つとして格付け会社の「意見」も参考にして、最後は投資家自身がその債券に投資するか否かを決定します。「格付けがAだから投資した」ということでは投資家としての説明責任を果たせません。機械的・盲目的に信用格付に依存して投資決定をすることは正しい信用格付けの使い方ではありません。

 二つ目は、「信用格付けは企業の良し悪しに関する意見ではない事」です。企業の資金調達コストについてはこれから勉強するのかもしれませんが、Equity(株式発行)のコストとDebt(借入・債券発行)のコストの加重平均が教科書的説明です。企業の経営者は経営方針に基づき、株式による調達と借入・債券発行による調達のベストな組み合わせでバランスシートの負債の部を形成します。日本以外の市場では、高い信用格付けを保つのに必要な高コストの資本よりも、低い信用格付で高い金利を払ってでも資金調達する企業がたくさんあります。これは経営のステークホールダーへの説明責任と密接な関係があります。信用格付は「信用力の強さ」の分析ですが、「A格付の会社がBBの会社より優れている」とか「成長力がある」ということではありません。この辺は証券会社の株式アナリストの観点と異なります。

 他にも信用格付けは様々なところで利用されています。信用格付けの仕組みを知っていることが、皆さんが将来財務部に配属されたりCFOになったら必ず役に立つと思います。