水平社宣言及び綱領と決議
[ 編集者:人権教育研究室 2009年3月20日 更新 ]
宣言
全國に散在する吾が特殊部落民よ団結せよ。
長い間虐められて来た兄弟よ、過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々とによつてなされた吾等の為めの運動が、何等の有難い効果を齎らさなかつた事実は、夫等のすべてが吾々によつて、又他の人々によつて毎に人間を冒とくされてゐた罰であつたのだ。そしてこれ等の人間を勦るかの如き運動は、かへつて多くの兄弟を堕落させた事を想へば、此際吾等の中より人間を尊敬する事によつて自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然である。
兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇仰者であり、実行者であつた。陋劣なる階級政策の犠牲者であり男らしき産業的殉教者であつたのだ。ケモノの皮剥ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剥ぎ取られ、ケモノの心臓を裂く代価として、暖い人間の心臓を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の悪夢のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあつた。そうだ、そして吾々は、この血を享けて人間が神にかわらうとする時代にあうたのだ。犠牲者がその烙印を投げ返す時が来たのだ。殉教者が、その荊冠を祝福される時が来たのだ。
吾々がエタである事を誇り得る時が来たのだ。
吾々は、かならず卑屈なる言葉と怯懦なる行為によつて、祖先を辱しめ、人間を冒してはならぬ。そうして人の世の冷たさが、何んなに冷たいか、人間を勦はる事が何んであるかをよく知つてゐる吾々は、心から人生の熱と光を願求禮讃するものである。
水平社は、かくして生れた。
人の世に熱あれ、人間に光あれ。
大正十一年三月 水平社
綱 領
一、特殊部落民は部落民自身の行動に依つて絶対の解放を期す
一、吾々特殊部落民は絶対に経済の自由と職業の自由を社会に要求し以て獲得を期す
一、吾等は人間性の原理に覚醒し人類最高の完成に向つて突進す
決 議
一、吾々ニ對シ穢多及ヒ特殊部落民等ノ言行ニヨツテ侮辱ノ意思ヲ表示シタル時ハ徹底的糺彈ヲ為ス
一、全国水平社本部ニ於テ我等團結ノ統一ヲ圖ル為メ月刊雑誌『水平』ヲ発行ス
一、部落民ノ絶対多数ヲ門信徒トスル東西両本願寺ガ此際我々ノ運動ニ対シ抱蔵スル赤裸々ナル意見ヲ聴取シ、其ノ回答ニヨリ機宜ノ行動ヲトルコト
右決議ス
大正十一年三月
全國水平社大会