障害者の権利宣言

[ 編集者:人権教育研究室       2009年3月20日 更新 ]

一九七五(昭五〇)・一二・九第三〇回国際連合総会で採択

 総会は、
加盟国が、一層高い生活水準、完全雇用並びに、経済的及び社会的な進歩及び発展の条件を促進するため、この機構と協力して共同及び個別の行動をとることにつき国際連合憲章のもとにおいて行った誓約に留意し、
国際連合憲章において宣言された人権及び基本的自由並びに平和、人間の尊厳と価値及び社会正義に関する諸原則に対する信念を再確認し、
世界人権宣言、国際人権規約、児童の権利宣言及び精神薄弱者の権利宣言の諸原則並びに国際労働機関、国連教育科学文化機関、世界保健機関、国連児童基金及び他の関係諸機関の設立文書、条約、勧告及び決議において社会発展を目的として既に定められた標準を想起し、
更に、障害防止及び障害者のリハビリテーションに関する一九七五年五月六日の経済社会理事会決議一九二一(LVIII)をも想起し、社会的進歩及び発展に関する宣言が心身障害者の権利を保護し、それらの福祉及びリハビリテーションを確保する必要性を宣言したことを強調し、
身体的及び精神的障害を防止し、障害者が最大限に多様な活動分野においてその能力を発揮し得るよう援助し、また可能な限り彼らの通常の生活への統合(integration )を促進する必要性に留意し、
若干の国は、その現在の発展段階においては、この目的のために限られた努力しか払い得ないことを認識し、
この障害者の権利に関する宣言を宣言し、かつこれらの権利の保護のための共通の基礎及び見解としてこれが使用されることを確保するため国内的及び国際的行動を要請する。
1 「障害者」という言葉は、先天的か否かにかかわらず、身体的又は精神的能力の不全の結果として、通常の個人的及び(又は)社会的生活の必要を自分自身で確保することが完全に又は部分的にできない人のことを意味する。
2 障害者は、この宣言において掲げられるすべての権利を享受する。これらの権利は、いかなる例外もなく、かつ、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的その他の意見、民族的若しくは社会的出身、貧富、出生又は障害者自身若しくはその家族の置かれている状況に基づく区別又は差別もなく、すべての障害者に認められる。
3 障害者は、その人間の尊厳の尊重を受ける固有の権利を有している。障害者は、そのハンディキャップ及び障害の原因、性質及び重さにかかわらず、同年齢の市民と同等の基本的権利を有する。このことは、まず第一に、可能な限り通常かつ充全な人たるに値する生活(a decent life)を享受する権利を意味する。
4 障害者は、他の人々と同等の市民権及び政治的権利を有する。「精神薄弱者の権利宣言」の第七項は、精神障害者のこのような諸権利のいかなる制限又は抑圧にも適用される。
(註) 精神薄弱者の権利宣言第七項 精神薄弱者がそのハンディキャップの重さのため有意義にそのすべての権利を行使することができないか、又は、これらの権利のうちのあるもの若しくはすべてを制限若しくは否定することが必要となる場合には常に、この権利の制限又は否定のために用いられる手続は、あらゆる形態の乱用防止の適正な法的保障を含まなければならない。この手続は、有資格専門家による精神薄弱者の社会的能力の評価に基礎を置かなければならず、また、定期的再検討及び上級機関への上訴権を条件としなければならない。
5 障害者は、可能な限り自立を可能ならしめるよう意図された施策を受ける権利がある。
6 障害者は、補装具を含む医学的、心理学的及び機能的治療、並びに医学的及び社会的リハビリテーション、教育、職業訓練及びリハビリテーション、介助、カウンセリング、職業あっ旋その他障害者の能力と技能を最大限に開発でき、また障害者の社会統合又は再統合の過程を促進するようなサービスを受ける権利を有する。
7 障害者は、経済的及び社会的保障を受け、人たるに値する生活水準を保つ権利を有する。障害者は、その能力に従い、雇用を確保し保持するか又は有益で生産的かつ報酬を受ける職業に従事し、及び労働組合に参加する権利を有する。
8 障害者は、経済社会計画のすべての段階において、その特別のニーズを考慮させる権利がある。
9 障害者は、その家族又は養親とともに生活し、すべての社会的活動、創造的活動又はレクリエーション活動に参加する権利を有する。障害者は、その居住に関する限り、その状態のため必要であるか又はその状態に由来して改善するため必要である場合の外、差別的取扱いを受けない。障害者の専門施設への入所が不可欠である場合には、そこでの環境及び生活条件は、同年齢の人の通常の生活のそれに可能な限り似通ったものとするものとする。
10 障害者は、差別的、侮辱的又は品位をおとしめる性質をもつ、あらゆる搾取、あらゆる規則及びあらゆる取扱いから保護されるものとする。
11 障害者は、その人身及び財産の保護のために資格ある法的援助が不可欠であることが明らかとなるときは、それらを利用し得るものとされなければならない。障害者に対して訴訟が提起される場合には、適用される法的手続きは、障害者の身体的及び精神的状態を十分に考慮するものとする。
12 障害者団体は、障害者の権利に関するすべての事項について助けになる協議を受けることができる。
13 障害者、その家族及び地域社会は、この宣言に含まれる権利について、あらゆる適切な手段により十分に知らされなければならない。