人権教育研究室
K.G.

新課題の把握と研究

2025年度指定研究テーマ

「SOGIEと人権」

  1. 研究の背景
    近年SOGIE(Sexual Orientation and Gender Identity&Expression)の多様性の尊重やLGBTQ+の人たちの人権についての関心が高まっている一方で、違憲判決の出ている同性婚について政府の消極的対応やネットを中心としたトランスヘイト発言の増加などSOGIEに関する課題は山積しており、本学も例外ではない。
  2. 研究目的
    本学におけるトランスヘイトやSOGIEの多様性尊重の実態の把握、およびキャンパスの改善のための具体的な活動の効果測定
  3. 当該分野におけるこの研究計画の特色・独創性
    本学はこれまでもSOGIEの多様性尊重に向けて他大学に比べて多様かつ独創的な取組を実施してきており、またそうした大学内の取組の効果を継続的に測定することは非常に意義のあることである。
  4. 国内外の関連研究と当該研究の位置づけ
    大学におけるSOGIEの多様性尊重の取組に関しては、いくつかの大学でアクションリサーチなどを活用した調査が実施され、またトランスヘイトに関する研究も少数であるが近年されつつあるが、両方を組み合わせるような取組はまだ行われていない。
  5. 共同研究として研究を行う必要性
    ④に書いた2つのテーマを包括する研究のため、それぞれを専門とする研究者の協働が不可欠である。

「人権教育科目のあり方に関する研究」

本研究の目的は、現在の本学人権教育科目運営上の諸課題に対応するため、科目再編や科目提供システムの改変または新規開発に資する理論と方法、具体案を提示することである。高等教育機関における人権教育の一般的実践論に留まらず、関西学院大学の教育理論と価値にねざした半世紀間の教育実践の伝統と成果に連続するカリキュラム設計を考案するとともに、国内外の人権教育の理論と実践、他大学における実践例などを広く情報収集し、本学人権教育の特色を生かした新しいカリキュラムをそれらに位置づけることを試みる。
さらに、現行の本学人権教育科目の現状を把握し、新カリキュラムでの再編のために必要な変更案を検討する。

2025年度公募研究テーマ

「ヒューマンライブラリーの持続可能性を支える「司書」の役割ー主催者の経験の分析を通してー」

本研究の目的は、「ヒューマンライブラリー」の継続的な開催のために必要な要件を、主催経験のある「司書」の視点から明らかにすることである。「ヒューマンライブラリー」とは、図書館に見立てられた会場で行われる対話型イベントであり、差別や偏見の低減を目的としている。障がいのある人、性的マイノリティ、海外にルーツを持つ人など、さまざまな背景を持つ人々が「本(語り手)」となり、「読者(聞き手)」と対話を行う。「読者」は、自分と異なる立場や価値観を持つ他者の語りを聞き、直接対話することで、ステレオタイプや先入観に気づき、相互理解を深めることが期待される。また、こうした対話を積み重ねることで、多様性に開かれたインクルーシブな地域社会の実現につながると考えられている。
このような対話の場を、誰もが安心安全に参加できるものとして構築し提供するのが、「司書」と呼ばれる運営者である。本研究では特に、ヒューマンライブラリーを主催する「司書」に着目し、彼らが開催・継続にあたってどのような経験を積み、どのように困難を乗り越えてきたのか、また現在直面している課題は何かを、インタビュー調査を通じて明らかにする。そのうえで、ヒューマンライブラリーの持続的な開催に向けた課題を検討・整理し、経験の浅い主催者が実践に活かせる知見を提供することを目指す。

「ケアと人権の視点から、未就学児を育てる親たちの日常的実践を聞き取るー大学生と地域の子育て世代の交流会活動を軸にー」

本研究の目的は、ケアと人権の視点から、ケアを担う当事者の経験を聞き取り、これを社会全体でともに取り組む活動へと変えていくための実践的知識を蓄積することにある。具体的には、関学のある兵庫県西宮市で、0歳から3歳までの子どものケアを担う親たちの、日々の子育てにおける葛藤や困難、またそれを乗り越えるための実践などを聞き取る。本研究のもう一つの目的は、大学の知を地域に還元することである。関学のスクール・モットーであるMastery for Serviceの理念のもと、日々の子育てゆえに学びや連帯から遠ざけられている子育て世代の親たちに、地域の他の親や大学生たちとともに、楽しみながら、みずからが担う活動の意味について考える機会を提供したい。