読書科(関西学院事典)

[ 編集者:学院史編纂室 2014年9月28日 更新 ]
関西学院事典

読書科

 「読書」は関西学院高中一貫教育の重要な柱の一つである。
その核となる必修教科として「読書科」が設けられている。
中学部では1年生が週1時間、2・3年生が週2時間、高等部ではすべての学年が週1時間の授業となっている。

 読書科の授業は、1951年に中学部が現高中部本部棟に移転し、独立の図書館ができたときに新制中学部初代部長矢内正一が担当した「生活指導科」が始まりである。
中学部1年生週1回の授業であった。
この授業において、矢内は読書やこの図書館についての指導を行った。
62年3学期、「生活指導科」の授業は、矢内から図書館担当の川北信彦に委ねられ、63年より2・3学期に拡大した。
そして、65年4月より1年間通しての授業となった。
67年4月、第3代部長小林宏は、「生活指導科」を読書や図書館の指導に特化していた内実に合わせて「読書指導科」と改め、以来略して「読書科」と呼ばれるようになる。

 1976年、精神鍛錬のための読書を重んじる第11代院長久山康の方針により、中学部教育の柱の一つとして「読書」が数えられるようになった。
中学部の読書科を1年生週1回の授業から3年間週1回の授業に、そして高等部においても「読書科」を新設することが決まり、その担当者として宅間紘一が招聘された。
2012年4月、中学部の男女共学化、校舎(図書館)の改築に際し、読書科は各学年週1回の授業から、1年生週1回、2・3年生週2回の授業となった。

 読書科のねらいは、読書生活の形成と深化、自主的自立的学習の体得、そして高度情報化社会に対応する情報活用能力の育成の3点にまとめられる。
読書科のカリキュラムは、基礎から応用へ直線的に進むのではなく、いわば螺旋的に進むように体系的に組まれている。

 読書科のカリキュラムは次のとおりである。
中学部1年生では、「図書館の自由」・マナー、図書館の種別と特徴、図書館の分類・排架・目録、基本的なレポートのつくりかた、校外学習ポスターセッションなどを行う。
中学部2年生では、情報の獲得・整理・活用の技術について学び、それらの成果は校外学習新聞づくりとその発表で生かす。
中学部3年生では、これまでの学びを総合的に活用する「卒業レポート」を作成する。
レポートのテーマは修学旅行の行き先関連と定めているため、修学旅行でのフィールドワークを経て完成する。
最終的には発表会を行い、生徒一人ひとり新たな問いを得て高等部での学びに向かう。

 高等部1年生は、図書館利用法、メディア・リテラシーの習得(新聞・辞書・教科書などの比較読みを通して)、テーマ読書の入門となるブックトークに取り組む。
高等部2・3年生は、研究論文のテーマ設定、資料検索・リストの作成、情報記録カードの作成、アウトライン(論文の組み立て)の作成、推敲、論文の仕上げ、論文の要約作成のカリキュラムである。
高等部における論文指導の特徴は、論文執筆という「問いに対する答え」とともに、「自らテーマを発見する」という「問うことそのもの」にも重点を置いていることである。
毎年ユニークなテーマが生徒個々によって設定されている。
応用課題としてのレポートづくりは、中学部3年生の「卒業レポート」作成としても、高等部2・3年生の「論文」作成としても試みられている。

 読書科の授業は、すべて図書館で行われる。
6年間の読書科の授業を通じて、自然と図書館を基盤とした知的活動が身につくことになる。
図書館が読書科を支え、読書科の実践が図書館の質をさらに向上させている。
読書科ばかりでなく、図書館の充実は、他の教科などあらゆる学びへの可能性も拓いた。

 読書科は、近年の中等教育におけるキーワードである「総合的な学習」「探求型学習」「プロジェクト型学習」「情報活用教育」などの一つのモデルといえる。
読書科の存在意義は「答える力」偏重から「問う力」重視へ学力観を変えていく中軸の教科として働くことである。
生徒たちの学ぶ喜びを養う最も有力な方法となっている。

【参照】Ⅱ 476【文献】『関西学院高中部百年史』1989