心理科学実践センター
K.G.

公開講座
『健康的で豊かな夫婦/カップル関係のためのヒント』

開催日時・場所

2026年1月14日(水)~3月22日(日)  オンデマンド配信

講師
  • 三田村 仰 先生(立命館大学 教授)
  • 谷 千聖 先生(立命館大学 特任助教)
概要

 今回、関西学院大学心理科学実践センターで行われた公開講座では、「健康的で豊かな夫婦/カップル関係のためのヒント」というテーマでご講演いただきました。講師は、立命館大学総合心理学部所属で、文脈的カップルセラピーの研究チームに所属されている谷千里先生、三田村先生のお二人でした。本講座では、カップル関係が心身の健康に及ぼす影響や、より良い関係性を築くためのコミュニケーションについて、心理学的観点からお話しいただきました。
 講義の前半では、カップル関係が私たちのウェルビーイングや精神的健康に与える影響についてお話しいただきました。カップル関係とは、恋人や夫婦関係に限らず、年齢や性別、婚姻の有無などを超えた「自ら選択した親密な二者関係」であることをご説明いただきました。良好なカップル関係は、精神的支えとなり、ウェルビーイングや身体的健康にも良い影響を与える一方で、不和や葛藤は、うつや不安、自殺リスクなど多くの問題と関連していることを教えていただきました。また、子どもがいる家庭では、親同士の不和が子どもの心理面にも影響を及ぼす可能性があることについてもお話しいただきました。
 続いて、良好な関係性を維持するために重要な「気づいて答える相互作用」についてご説明いただきました。これは、一方が相手に向けて発する「つながりを求めるシグナル」に対し、もう一方が気づき、応じることで成り立つ相互作用であると教えていただきました。たとえば、日常的な会話や悩みの共有などに対して、「それ面白いね」「大変だったね」と応じてもらうことで、「わかってもらえた」という感覚が生じ、関係性の満足感や親密さが高まることを学びました。一方で、無視されたり、応じてもらえなかった場合には、「すれ違い」が生じることについてもお話しいただきました。 
 講義の後半では、関係性が悪化するときにみられる「追求―撤退パターン」についてお話しいただきました。これは、一方が相手に対して批判や要求を強めるほど、もう一方が距離を取ったり無反応になったりするパターンであり、その結果、さらに関係が悪化していくことを教えていただきました。また、「批判」「自己弁護」「軽蔑」「石像化(無反応)」といったコミュニケーションの特徴が、離婚を予測する指標として研究されていることもご紹介いただきました。その背景には、「見捨てられたくない」「理解してほしい」といった本来的な感情が存在していることや、怒りや回避といった反応は、その感情を守るための二次的な反応であることを学びました。 
 以上、今回の公開講座では、カップル関係におけるコミュニケーションの重要性や、関係性の中で生じるすれ違いをどのように捉えるかについて、心理学的視点からご講義いただきました。カップル関係においては、すれ違い自体を問題視するのではなく、それをきっかけとして相手を理解し直し、応じ合う関係を築いていくことが大切であることを学びました。また、日常の小さなやり取りを丁寧に積み重ねることが、関係性の健康寿命を延ばすことにつながるという点が印象的でした。


(文責:関西学院大学大学院文学研究科博士課程前期課程 秋山いずみ)