染色体DNAの複製に重要なMCM複合体の機能の新たな制御機構を発見 米国生化学分子生物学会誌に掲載

[ 編集者:広報室  2013年5月21日 更新  ]

 関西学院大学理工学部・田中克典教授およびそのグループは、染色体DNAの複製に重要なMCM複合体の機能の新たな制御機構を発見し、3月8日の米国生化学分子生物学会誌に掲載されました。

 細胞は細胞周期のDNA合成期に染色体DNAを正確に倍加し、分裂期にそれらを娘細胞に分配することで自己複製を行います。染色体を正確に倍加するということは、同一の染色体をもう一組つくるということであり、この過程はDNAの複製と呼ばれています。ヒトや酵母などの真核生物では、染色体DNAの複製はDNA合成期に一度だけ起こるように厳密に制御されています。もしこの制御に破綻が生じると、細胞あたりのDNA量が変化したり、一部の染色体DNA領域が増幅することによって、細胞は正常な増殖に支障をきたし、癌化の原因ともなります。MCM複合体は、真核生物の染色体DNAの複製においてDNAの巻き戻し酵素としてはたらくと同時に、複製をDNA合成期に一度だけ起こるように厳密に制御する許可因子としての機能を持っています。よって、細胞周期でのMCM複合体の活性化と不活性化の制御は、正常な染色体の複製に極めて重要であります。
 
 本研究では、MCM複合体に結合するMCM-BP(MCM-Binding Protein)タンパク質の機能解明を通して、MCM複合体の機能の新たな制御機構を明らかにしました。モデル生物として分裂酵母を用い、MCM-BPの機能について詳細な遺伝学的解析を実施しました。その結果、細胞核内でのMCM複合体構成タンパク質間の機能的な会合とその維持にMCM-BPが重要な役割を果たすという新たなモデルを提唱することに成功しました。この発見は、分裂酵母のみならず真核生物全般にあてはまる普遍的なものである可能性が高く、MCM複合体の機能制御の実体解明に大きく貢献することが期待できます。MCMタンパク質は種々の癌で高発現が認められ、腫瘍の増殖程度や予後判定などに腫瘍マーカーとして利用され始めています。また、種々の癌で高発現するMCM複合体の活性の阻害剤は癌の化学療法薬としても研究されています。よって、MCM複合体の機能を制御するMCM-BPに対しても、新たな抗癌剤開発の対象や新たな腫瘍マーカーとしての期待が高まります。



【論文タイトル】
原題::The Fission Yeast Minichromosome Maintenance (MCM)-binding Protein (MCM-BP), Mcb1, Regulates MCM Function during Prereplicative Complex Formation in DNA Replication
タイトル和訳:分裂酵母MCM結合タンパク質(MCM-BP)であるMcb1は、DNA複製における複製前複合体形成過程でのMCM機能を制御する
【著者名】Venny Santosa, Sabrina Martha, Noriaki Hirose, Katsunori Tanaka

【用語解説】
・MCM複合体:MCM複合体はMCM2、3、4、5、6、7から成るヘテロ6量体で、真核生物の染色体DNA複製の過程でDNAヘリカーゼ(DNA巻き戻しタンパク質)として機能する。
・分裂酵母:分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)は、アフリカで古くから作られていたポンベ酒から分離された酵母である。分裂酵母は、真核生物のモデル生物として大変優れた微生物であり、均等分裂による増殖をするため細胞周期の研究によく用いられている。

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